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マイナス金利解除で金利ある世界が始まる~銀行との金利交渉に備え、社長がしておくこと~

(令和6年3月19日 日銀のマイナス金利解除発表後、以前の記事を加筆修正しました)

 

【この記事で分かること】

・融資金利は何を基準に決まるのか

・利上げ局面で想定されること

・銀行との金利交渉に臨むうえで社長が準備しておくこと

 

日銀が「マイナス金利」解除を発表しました。

17年ぶりに利上げに舵を切ったようです。

 

今後、「金利ある世界」への移行が予想されます。

 身近なところで、住宅ローンの新規実行金利も上がり傾向です。
 
では、法人向けの融資金利は、今後どうなるのでしょう?
 
銀行はどう動き、社長はどう備えておくべきでしょう?
 
予測してみます。
eyecatch

 

融資金利は調達金利で決まっている

今あなたの会社の融資金利は、何を基準に決まっているのでしょう

複数要因があるのですが、その中でも大きな基準は、調達金利です

会社で言うところの「仕入」です。

銀行は、あなたの会社に融資する資金を仕入れています。

仕入先は、一つは銀行間市場で、もう一つは法人や個人から(預金)です。

銀行間市場で取引される、東京の銀行間取引金利のことをTIBOR(タイボー)と言います。

令和6年3月18日現在、3か月物で0.19091%(全銀協㏋より)、とても低いです。

 

仕入先の違いで金利基準は2つある

ざっくり、仕入先の違いで基準金利は2種類あります(実際はもう少し多いのですが、今日は2つに絞りお話しします)。

①市場間取引から仕入れ=TIBOR(タイボー)

②法人個人預金から仕入れ=短期プライムレート

短期プライムレート(以下短プラ)とは、銀行が業績や財務状態の良好な会社に1年以内の短期融資に対して適用する最優遇金利のこです。

現在地方銀行の短プラは、1.475%~1.725%です。銀行ごとに少し金利差があります。

TIBOR3か月0.07%、短プラ1.475%~1.725%

銀行は融資提案において、TIBORと短プラの2種類を状況に応じて使い分けています

 

銀行の儲けは調達金利との差額

あなたの会社が受けている融資の金利には、銀行の儲けが乗せられています。

銀行は、調達金利+スプレッド(利ざや)で、あなたの会社に融資します。

例えば、あなたの会社が年利2.475%で融資を受けていて、調達が預金(0.1%)なら、銀行の利ざやは、2.375%(2.475%-0.1%)です。

仮に1億円の融資を受けていれば、会社の支払利息は2,475千円(1億円×2.475%)、銀行の儲けは2,375千円(1億円×2.375%)となります。

利ざやから、銀行員の人件費や店舗コスト、貸し倒れ引当金、広告宣伝費など、費用を捻出しているのです。

 

低い金利はTIBORを基準としているから

自分の会社は、短プラ以下の金利で融資を受けられている。

そう感じたかもしれません。1%を切っているぞ、、、。

コロナ融資等、制度融資などの場合を除いて、あなたの会社の金利が短プラ以下なのは、銀行がTIBORを基準に融資金利を適用しているからです。

TIBORに銀行の利潤0.5%を乗せ、0.57%(TIBOR+0.5%)など。

大企業や、銀行が融資をしたい財務内容の良い会社には、TIBOR基準を提案します。

とはいえ、通常地方銀行は、短プラ基準で融資金利を適用しています。

例えば、

(1年以内の短期融資)当座貸越、手形貸付⇒1.475%(短プラ+0.0%)

(1年以上の長期融資)証書貸付⇒1.475%+1.00%(期間スプレッド)=2.475%(短プラ+1.00%)

 

基準金利が上がれば、融資金利が上がる

最初に戻りますが、現在国債利回りが上昇傾向です。

海外との金利差を要因とする円安も進んでいます。

日本も急激ではないとはいえ、ゼロ金利政策を修正していく時期が近づいています。

ゼロ金利政策が解除されると、銀行融資の調達金利が上がり、基準金利である、TIBORや短プラも見直す必要が出てきます。

そうなると、今後融資金利が上がっていく可能性があります。

 

利上げ交渉の経験がない銀行員たち

バブル崩壊以降、利下げ局面が続いたため、銀行員には利上げ交渉の経験がほとんどありません。

「ほとんど」というのは、私が銀行員時代、15年以上前ですが、2度ほど利上げ交渉をした経験があるからです。

会社からの抵抗感は強く、利上げ交渉が難航したのを記憶しています。

今の若い現場銀行員は、利上げ局面がなかったので、利上げ交渉の経験がありません。

おっかなびっくりで利上げ交渉に臨むはずです。

会社側にも、最近は銀行から利上げを要請された経験がほとんどありません。

お互い経験がないので、利上げ現場では混乱が予想されます。

会社側には、人件費高や原材料・燃料高など、利上げを受け入れられる財務的な余裕もないです。

 

どんな融資の金利が上がるか

では、どのような融資の金利が上がるのか。

上がらないのは、制度融資など固定金利が適用されている融資です

あがるのは、TIBORや短プラを基準にしている融資です。

短期融資は、融資の更新時期(書換など)もしくは、融資期間中にも利上げ要請の可能性はあります。

このあたりは、商取引の値上げ交渉と同じです。

長期融資は、契約書の金利見直し時期に上がるでしょう。融資契約書に短プラ+1.0%などの記載があれば、短プラが上がれば自然に上がります。

 

利上げしやすい会社、難しい会社は存在する

とはいえ、銀行も一律に利上げ交渉をするとは思えません。

利上げしやすい会社、難しい会社があるのです。

利上げしやすい会社は、

✔ メインバンクだけと一行取引している会社(他の銀行と比較対象がない)

✔ 銀行融資の依存度が高い(利上げされても一括返済できない)

✔ 財務内容が悪い会社

✔ 社長が財務に弱い会社

一方利上げが難しい会社は、

✔ 複数銀行とバランスよく取引している会社(利上げすると融資シェアを落とされる危惧を感じる)

✔ 銀行融資依存度が低い会社(預金や資産で一括返済されると警戒する)

✔ 財務内容が良い会社

✔ 社長が財務に強い会社

 

意外に感じるかもしれませんが、銀行はメインバンクとして一行取引をしている取引先から、利上げ交渉に入るでしょう。

融資量が大きく、長年の信頼関係があり、かつ競合がいないため、「利上げ要請を比較的しやすい」と考えられるからです。

利上げ交渉が成立した場合のインパクトが大きく、費用対効果(利上げ交渉の営業コストに対して)があります。

 

銀行員との金利交渉にどう備えるか

様々な商品・サービスの価格が上がり、人件費が上がり、そうした状況で、今後ある程度の利上げはやむを得ないかもしれません。

ただ、社長として銀行のなすがまま、流れに身を任せておくだけでは、心もとないことです。

以下の様な準備が必要と考えます。

✔ 自社の銀行取引を点検する(銀行取引数、融資金額、返済体系、金利、担保力、預金等の取引)

✔ 自社の財務内容を点検する(財務バランス、融資返済能力、資金調達余力)

✔ 財務健全化を図るための現状分析と対策立案

 

以上金利ある世界への移行において、銀行の動向予想と会社の対応策についてお話ししました。

 

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