現在は数十年に一度の緊急時と言えます。緊急時には、平時と違った金融対応が必要になります。
コロナ禍において、特に政府系金融機関には申し込みが殺到し、融資審査にも時間がかかっているようです。
どんな金融対応が必要か、一緒に考えてみましょう。
【目次】
平時においては、メインバンクから順番に融資を申し込みます。複数行に同時申込をすることを「てんびんにかける」と言います。金融機関が嫌がる対応で、平時にはご法度です。
しかし、緊急時には逆の対応が求められます。
政府系金融機関の場合は、現在特に審査に時間がかかっています。審査で待たされた挙句、否決された時は必要時期に間に合わなくなります。
場合によっては、日本政策金融公庫と商工中金、民間のメインバンクに同時並行で融資申込するような対応が必要です。ただし、原則的には、特に民間金融機関は、てんびん申込を嫌がりますので、自社の置かれた環境に応じた方法を選択してください。
民間金融機関に同時に複数申し込む(メインとサブなど)のは、やめておいたほうが良いです。なぜなら、結局どの銀行も、信用保証協会のセーフティネット保証に駆け込むことになるため、同時並行していることがバレバレになり(事前に複数申し込みを説明してなければ)心証が悪くなるからです。
また、メインバンクには、政府系金融機関に申し込むことを、電話で一言、事前説明しておくほうが無難かもしれません(政府系金融機関の資金が出るまでのつなぎ融資が発生する可能性や、政府系が否決になった場合支援してもらう必要があるため)。そこはケースバイケース、経営者の判断です。
金融機関との信頼関係にヒビが入らないようにすること、かつ必要資金を必要時期に調達すること、を両立させるため、デリケートな交渉力が求められます。
平時においては、必要額以上の融資は望ましくありません。いたずらに負債額を増やすことになるからです。
現在は、「少し多いのではないか」ぐらい借りておくと良いでしょう。現金を手元に置いておくことが大切な時期です。可能なら月商の3か月程度は申し込んでおきましょう。
コロナが収束し、資金繰りが落ち着いてくれば、圧縮していけば良いのです。
平時においては、メインバンクなど、民間金融機関を頼ることが多いと思います。
しかし現在頼りになるのは(審査に時間がかかっているとしても)、政府系金融機関です。日本政策金融公庫、商工中金、信用保証協会を頼りましょう。政府が補正予算もつけているので、使命感を持って相談に乗ってくれるはずです。
ただし、当然融資審査はあります。
私が集めている情報では、コロナ前から連続赤字など赤字体質の企業、リスケ実施中の企業は、審査のハードルが高くなっているようです。
逆に今までは黒字体質であったけれど、コロナ禍において赤字に転落した企業などは、積極的に応援してくれているようです。
審査基準の一つは、コロナ収束後の事業継続性、返済可能性、だと感じています。
平時においては、例えば運転資金は1年以内の短期借入金を活用するなど、返済期間を適正に設定することが大切です。
現在は、返済期間をできるだけ長めに設定しましょう。政府系金融機関は、コロナ対策融資として運転資金を最長15年に設定しています。15年で交渉をしましょう。
また返済開始までの据置期間も依頼します。5年据置にすれば当面の資金繰りは安定します。
今必要な資金は、コロナで消失した売上の部分です。赤字資金と言えます。赤字資金は現状では、返済原資がありません。
収束後に事業を立て直して初めて、返済が可能になります。時間がかかります。ですから、返済期間を長く設定して、据え置き期間をつけることで、当面は資本金的な使い方をします(もちろん将来は返済していきます)。
平時においては、融資を受ける際、事業計画はセットになります。
現在はコロナで直近の業績予測が立てづらくなっています。上場企業でも50%以上が、来期の業績予測の発表を見送っています。今無理して業績予測を立てる必要はありません。先行きが不透明な中、数値計画を策定しても、実現性が低いものになってしまいます。
100%の業績回復は難しくとも、コロナが収束し、ある程度まで業績が回復してきた時点で、今後の見通し、事業計画を取引金融機関に提出します。
新規融資が難しく現在の借入金元金支払いを止める方向で検討する場合。
平時においては、各取引銀行を経営者が1行づつ訪問し、リスケジュール(返済元金据置)を申請します。
現在は、金融庁から民間金融機関にお達しが出ており、特別な場合でない限り、リスケは認められます。
ただ、心理的な負担も大きく、融資取引が複数行あれば、時間もかかります。
そこで、政府は「新型コロナ特例リスケジュール」という制度を作りました。
相談窓口は、公的機関で、各都道府県に設置されている中小企業再生支援協議会です。
平時は、融資先企業が中小企業再生支援協議会に直接相談に飛び込むことを、取引金融機関は嫌がることがあります。まずは自分たちに相談してほしいからです。
しかし、現在は特例リスケが制度化されたため、融資先が再生支援協議会に直接相談に行くことに対して、取引金融機関の心理的抵抗も少なくなるでしょう。
特例リスケ制度では、再生支援協議会が、①金融機関とのリスケ交渉をサポート②資金繰り作成をサポートし、資金繰りを定期的にチェック③特例リスケ後、本格的な再生計画を希望する支援者の計画策定を支援、の流れで、事業改善まで一貫してフォローしてくれます。
特例リスケ制度を使うことで、ただ単にリスケをするのではなく、出口まで見据えた取り組みが可能になります。
以上、緊急時における融資の申し込み、事業計画策定、リスケ対応についてお話ししました。
平時とは逆の対応が多く、戸惑うことがあるかもしれません。
しかし、こうした危機時にこそ、経営者は主体性を持って素早く実行に移すことが大切です。
参考にしていただけますと幸いです。
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