銀行と経営者の考え方のギャップ。今回は、「銀行を天秤(てんびん)にかけること」についてお話ししたい。
「銀行は天秤にかけられることを嫌がります」。という話をセミナーですると、受講者である経営者の皆さんは、「なんで??」という顔をする。実際に聞かれたこともある。
「我々事業者は、入札や競争で仕事を受注している。天秤なんて当たり前で、それを企業努力で乗り越えている」。全くもってその通りで、これから銀行がどのような天秤を嫌がるか説明したい。
例えば経営者が、設備投資を検討する。投資予算額は3,000万円としよう。会社にとっては、今後の命運を握るプロジェクトで、設備会社から数社見積もりをとり、営業マンを呼んで話を聞く。導入する会社をある程度決めると同時に、資金調達(借入)の準備をする。
この時、取引がある銀行数行に同時に声がけすることがある。経営者としては、借り入れができなかったら困るし、資金は早く支払いし、設備を導入したい。で、数行同時に声がけをする。
地元のメインバンク、県外が本店のサブバンク、念のため政府系金融機関にも声がけしていこう。
こういう対応をもしした際、多くの経営者は、数行への同時融資申込であることを銀行に告げない。どの銀行も前向きな設備投資に関しての融資なので、喜んで対応の準備をしてくれるだろう。
会社から財務資料や見積り、投資計画などを預かり、支店内での説明資料や、本店審査部向けの稟議書を作成する。
そこには、融資申込にいたった経緯、現在の会社の業況、設備投資をすることによる会社の業績予想、その他色々な説明資料が担当者の手で作成され、銀行内部で回覧される。
何事もトップダウンで決めている経営者は、こういう銀行組織の融資までの流れが、あまり把握できていない。
さて、担当者が苦労して融資稟議を通して、「社長融資決定しました」。と報告にくる。3銀行ともに融資決定が降りたみたいだ。
経営者は、一番条件や対応の良い銀行で融資を受けることを決め、他の銀行に断りを入れる。
断りを入れた銀行がメインバンクの場合、この銀行の担当者は「社長、それは困ります」。と主張するだろう。メインバンクの場合は、当然自分の銀行で融資できる物として、話を進めている。この社長の決定をひっくり返そうとあらゆる手段を講じてくるだろう。
サブや政府系にお断りを入れる場合は、メインバンクに比べると抵抗は少ないかもしれない。しかし、心情は複雑だろう。口には出さないが、「条件をよくするための当て馬に使われた。こんな不誠実な経営者ならば、次回からは相談には乗りたくない」と、考えているかもしれない。
このように経営者が商売していく上で、当たり前に行っていることも、銀行にとっては顔をしかめるケースの場合がある。
ここに、銀行と経営者の間の意識ギャップが存在するのだ。意識ギャップによる行き違いを防ぐためには、事前に事情をよく説明しておくことが必要だろう。
次回は最終回、ギャップにどう向き合うか、についてお話ししたい。
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