在庫をもつ業種に属している企業は多い。
小売業、卸売業、製造業、建設業・・・。その他多くの業界で在庫は発生する。
小売業であれば店頭や倉庫にあるまだ売れていない商品、製造業であれば製造途中の製品、建設業であれば未完成工事の工事原価、などだ。
在庫は、決算書の貸借対照表の流動資産の部、『棚卸資産』に記載されている。また損益計算書で、期末に残った在庫は、売上原価からマイナスカウントされる。
だから、在庫評価のやり方で、決算書の数値は変動する。在庫を多く見積もれば利益が増加し、厳しめに評価すれば、利益は減少する。
小売業であれば、入ってきた価格(仕入れ値)で在庫計上していることが多いと思う。
例えば、A商品@10,000円のケース。
期の途中で入荷し、店頭において売れなければ、決算には、貸借対照表 棚卸資産10,000円。損益計算書は、期末棚卸高10,000円で売上原価からマイナスカウントされる。
次の年度。1年前に仕入れたこの商品、販売できずに前期と同じ処理。そうこうしているうちに、A商品の新たなモデルが販売され、この商品は塩づけになってしまった。
中小企業の場合、このような場合でも、在庫金額を10,000円で据え置いて、決算書に残していることが多い。
例えば、実際はこのA商品。市場価値で1/2になっていたら、1/3になっていたら。そもそも摩耗し、商品として売れなくなっていたら(評価はゼロ)。
こういう在庫処理が長年に渡り積み重なると、資産性のない棚卸資産が決算書に記載され、どんどん増加していくことになる。資産として計上されているから、利益は水増しされ、表面上は損失が発生しない。損失は発生しないが、資金化せず塩漬けになっているので、どんどん資金繰りは厳しくなる。
そして、売れない商品で、倉庫は一杯になる。保管経費は掛かるし、本来の会社の姿も見えづらくなる。
これを防ぐためには、「会社内で在庫処分のルールを決めておくこと」が対策として考えられる。何年経過すると損失処理するとか、破棄するとか、オークションで損切りするとか。社内でルール化しておくのだ。
在庫処分は、確かにつらい。決算数値もおいても、棚卸資産と期末棚卸高の減少を引き起こすため、利益は悪化する。
それでも本来の姿をしっかり確認していくことが、経営には必要だ。最低でも毎年一回は、在庫を時価で確認し、実勢価格として把握しておいた方が良い。
《記事のまとめ》
・在庫は、評価の仕方によって、利益を多くしたりすくなくしたりする。
・在庫評価を長年放置することで、実勢価格とかい離した評価額が決算書に残されているケースがある。
・在庫を適正に評価しないと、正しい経営判断ができなくなることがある。
・社内で在庫処分のルールを決め、最低1年に1回は時価額を把握しておきたい。
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