複数回渡り、お話してきた「事業の失敗に関する話」。最終回の今回は、失敗のリスクを下げる方法についてお話したい。
ご存じの通り、事業には失敗が付きものだ。どんなに注意しても失敗の可能性はある。運もタイミングも関係して、もう少しタイミングが良ければということも確かにある。
しかしこれからお話することを気をつければ、失敗するリスクは減少するだろう。頭の片隅にとどめておくだけでも違うと思う。
失敗には大きな失敗と、小さな失敗がある。
小さな失敗とは、やってしまっても事業の継続までには影響しない失敗だ。小さな失敗は、例えやってしまったとしてもオッケーだ。というか、避けられない。失敗をしながら改善して、商品やサービスを改良していけばよい。
問題なのは大きな失敗だ。大きな失敗とは事業継続が困難になる失敗だ。前回お話したよくあるケースとしての失敗、例えば過大投資、多額の固定費負担などだ。加えて、仕入れを間違ったことによる過大な不良在庫、飲食店などは不衛生による食中毒なども大きな失敗といえるだろう。
大きな失敗をして、今後の人生が狂うような事は避けたい。ではどうすれば、その後の人生が狂うような大きな失敗の可能性を減らせるのか。以下のような方法がある。
①少ない投資で始めて、需要が大きくなったら徐々に追加投資
飲食なら初期投資がかからない屋台から始めてもよい。小売業なら実店舗を持たず、ネット販売から始める方法もある。販売したい商品やサービスにニーズがあり、軌道にのる感覚がでてきた時点で、追加投資を行う。また業歴が長い企業でも、本業の収益を生まない設備投資は慎重に行いたい。例えば本社の立替や高級車の購入など。事業が軌道に乗ってきた時点で、周りの勧めや本人の希望で、キャッシュを生まない本社を豪華に立替し、その後経営が傾くケースも多い。
②試しに商品やサービスを提供してみて、実際の顧客反応を見て軌道修正する
まだ商品ニーズが定かにならないうちから、設備投資をしたり、商品パッケージやパンフレットに多額の資金をかけるケースを目にする。テストマーケティングをして、顧客ニーズを確かめてからでも遅くない。出店費用が安い行政機関や金融機関主催の展示会、地元商店街のお祭りでも良い、資金をかけないマーケティング方法で顧客の反応をみる。ニーズに合わなければ別の方法を試せばよい。
③プランを複数作っておく
前回失敗の要因として、「心が折れる」ことについてお話した。最初に希望観測的な見通しの甘い計画を作っているから、その通りにならないし、またダメージが大きい。楽観プラン、普通プラン、悲観プランの3種類の計画を立てておきたい。特に大切なのは、悲観プラン。そのケースになったときにどんな手を打つか。事業開始前に決めておく。
④撤退ルールを最初に決めておく
どんな準備をして、万全を期しても、事業は失敗することもある。その時はいったん撤退し、態勢を整えることも大切だ。勝負事でも事業でもそうだが、途中で撤退するのは難しい。もう少し頑張れば何とかなるかもしれない、今まで時間も資金も投資してきたんだから、と冷静な判断力を失う。損失がどんどん膨らんでしまい、悲惨な結果になってしまうこともある。
それを防ぐためには、最初に撤退ラインを決めていくことが必要ではないか。例えば基準は、売上高、利益、顧客数、現金残高などで良い。ここまでになれば一旦引くということを決めておく。そうすれば復活のチャンスも出てくるかもしれない。ちなみに私の場合は、起業して1年しても生活できる売上が上がらなければ、会社員に戻ると決めていた。(運よくそうならず事業を続けている)。
このように失敗を小さな段階でとどめ、顧客や市場の状況を見ながら改善し、少しづつ成長軌道に乗せていくことが、事業を続けるために必要だと感じる。そのために、過大投資を避け、当初の固定費負担を抑え、心身を健康な状態に保つことが大切だと思う。
成功事例は確かに華やかだ。自分もそうなりたい。しかし、いままで見てきたように、成功事例をそのまま真似しても、同じように成功できる可能性は少ない。それよりはどうすれば、失敗を最小限で食い止められるかを考えて、事業をしていく中で色々な試みを行い、改善していく方が、結果的に成功に近づくのではないか。そう考えている次第である。