前回は、ビジネスとは異質化しながら、例外的な成功という出口を探していくものだ。その出口を見つけるためには、自社のビジネスの本質を明確化し、そこに徹底してこだわる必要がある。という話をした。
今回は、私が銀行員およびコンサルの約20年間に、見聞してきたよくある失敗事例についてお話してみたい。
①過大投資による失敗
多いのが、過大投資による事業の失敗だ。例えば、起業する際初めから立派な店舗を構えたり、最新設備を導入したり、身の丈以上の投資をしてしまうことがある。店舗を出すということになると、色々な関連の業者さんがアドバイスをくれる。心しておきたいのは、業者さんも商売だということだ。少ない投資を提案してくれることは少なく、過大投資の提案になりがちだ。そして起業者自身も「どうせ事業を開始するのだから。いいものを。」となってしまう。双方の想いが合致し、過大投資になってしまうのだ。
過大投資の結果待っているのは、借入金の多大な返済元金や利息支払、多額の維持管理費・・・。そして支払いができなくなり、事業がとん挫する。これが一つ目の失敗要因だ。最低でも2~3社の相見積を取り、値段の比較をするとともに、投資額が適正化どうか、しっかり事前調査をしたい。
②固定費負担が大きすぎ、支払いができなくなる
起業でも、新規事業でも、事前に経営計画は立てる。しかし残念ながら、希望観測的な甘い見通しになっていることが多い。これから事業を開始するケースでは、ほとんどの人が失敗するとは思っていない。自分は経験がある、商品やサービスだって魅力的だ。成功するはずだ。もちろん自信がないと事業を始めることはできない。その自信を背景にした希望的観測の事業計画書ができあがるのだ。
甘い売り上げ見通し。利益計画。起業した人はほとんどが経験しているが、見通し売り上げ目標が達成することは少ない。思った以上に、商品やサービスが認知され、売上として上がってくるのに時間がかかる。なのに一方で経費は、あそこがまずい、ここと追加しないと、など計画以上にかかることが多い。
そして、売上が軌道に乗るまで一番大変なのは固定費支払だ。固定費とは、売上が高くても低くても同じようにかかる経費だ。例えば人件費、家賃、リース料、などだ。雇いすぎた従業員、高すぎる家賃、過大設備のリース料。それらが、開業時の一番苦しい時にのしかかってくる。これが二つ目の失敗要因だ。
③心が折れる
これが最終段階だ。起業当初思い描いていた夢・・・。開店祝いで親戚や知人もお祝いで駆けつける。何かやっていけそうな気がする。しかししばらくすると、その開店時の忙しさも落ち着いてくる。ここからが本当の勝負だ。
飲食店などは、近隣の店の客の入りが嫌でも目に入る。よその店は行列なのに、なぜうちの店は・・・。それは当然だ。他店には歴史があり、固定客もついている。業歴が違うからだ。気持ちが塞ぐ。
①や②の要因で資金繰りも厳しい。やっていけるんだろうか。当社とは打って変わって、不安感に苛まれる。そして心が折れる。特に甘い事業見通しで始めたケースでは、「こんなはずでは。」とギャップに苦しむ事が多い。
続けていれば(一定の商品・サービスの品質を持っていた場合)、もしかしたら固定客も少しづつ増え、展望が開けるかもしれない。まずは3年の壁を超えることが、一つのハードルだか、そこまで持たない。これが三つ目の失敗要因だ。
このように私が見てきた失敗事例で多いケースをお話した。当たり前だと思うかもしれないが、案外自分のことになるとこうした失敗をしてしまう。人間は、自分は人より優秀だと思う傾向があり、「自分に限って失敗はしないだろう」と思っている。そして、その思考の癖が落とし穴になってしまう。特に会社員として実績を上げてきた人は要注意だ。会社員としての成功と、起業家としての成功は別物だ。
次回は、『ではどうすればこうした失敗の可能性を下げることができるのか』、についてお話したい。