創業セミナーの講師をする機会があり、そこで「失敗についての話」をした。
起業に失敗の話?縁起でもないと思われるかもしれないが、失敗について理解しておくことは、大切だと思う。
世間一般、起業ステージでの成功物語はあふれている。本を読んでも、セミナーにでても、「私はこうして成功しました」と、成功者の体験が語られる。確かに起業をして、成功した人の話は夢がある。自分も「よし頑張って成功するぞ。」と気持ちが昂ったり、「そうすれば成功できるのか」と参考になることも多い。
逆に起業の失敗談が語られることは、それに比べて少ない。創業セミナーに起業の失敗者を呼んで、講演をしてもらうこともあまりないだろう。
ちまたにあふれる成功事例について、常日頃から違和感を感じていた。その事例が本当に成功かどうかも分からないし、もし本当に成功しているとしても、その事例が、起業者に当てはまるのだろうか?
そんな時出会ったのが、「経営の失敗学」(日本経済新聞出版社)という本。今まで「起業、成功、失敗」に関して悶々としていたものが、「そうだったのか。」また「やはりそういうことだったのか。」と腹にストンと落ちてきた。
成功事例は自社で取り入れることが難しい。なぜなら、表面に出ている華やかな部分より、隠れている部分の影響が大きく、それらを模倣することは難しいからだ。隠されている部分とは、「会社の組織文化や歴史背景、経営者の意思決定の方法や従業員の質」など。これら同じ条件を揃えることは困難で、表面だけ真似しても失敗する可能性が高い。
そして、「同質化」「異質化」というキーワードを挙げて、事業とは失敗と隣り合わせと説く。
顧客ニーズの高い魅力的な商品やサービスを見つけその分野に参入する。競合が追随し、価格競争になり利益がとれない。他社と同じことをするので「同質化」と呼び、失敗する。
次に、他社がまねできない分野に参入する。慣れていない分野でノウハウもなく、顧客に認知もされていないので、結果失敗する。これを「異質化」よる失敗と呼ぶ。
つまり、「同質化」「異質化」どちらの手法をとっても結局失敗につながるのだ。ビジネスとは、いかに「異質化」しながら、例外的な『成功という出口』をみつけるか、ということらしい。次回は、「異質化しながら成功していくための方法」について考えてみたい。