最近、金融情報を収集する中で、私が気になっているのは、みずほ銀行が始めた法人向けオンライン融資「みずほスマートビジネスローン」です。
8年前にコンサルを始めて、一番もどかしかったのは、今(もしくは将来にむけて)調子が良い企業でも、過去の決算データが悪ければ銀行は新規融資を受け付けない、ということでした。
私も17年間銀行員だったので、分かってはいたことですが、逆の立場(融資を審査する側から、申し込みを支援する側に)になってみて、これは予想以上でした。
過去の決算データに、債務超過があったり、資産勘定の中に貸付金や未収金など不透明なものがあったり、不良在庫を抱えていたり、、、
このような決算書だと、いくら事業内容や将来性を説明しても、入り口でシャットダウンされることが多かったのです。
理由はよく分かります。支店融資担当者は、上司や本部に企業の将来性や事業価値を説明できないから、です。
融資返済の証明書類は、過去の決算書のみ、でした。
しかしこの動きが、人口減少・地域衰退により融資先が少なくなってきたこと、銀行間での過当競争により金利収入が目減りしてきたこと、他業種からの攻勢で融資先を奪われそうになっていること、などを背景にして、今、大きく変化しようとしています。
その中の一つの具体例が、今日ご紹介する、みずほ銀行の法人向け融資「みずほスマートビジネスローン」です。(私の事務所の近くに、みずほ銀行の松山支店がありますが、私個人的にはみずほ銀行とは一切付き合いがなく、利害関係も全くないため、第三者的な見解です)。
特徴は、以下です。
①申し込みから融資実行までオンラインで完結し、銀行店舗を訪問する必要がない
②決算書の提出が不要の無担保融資で、預金口座の入出金や連携データなど、オンラインデータを活用し融資審査をする
③金額は1000万円以内で融資期間は1年、審査期間は2~5日の小口・短期間・スピード融資
この特徴により、『将来的に成長余地がありながらも、過去の決算データが悪かったために今まで門前払いされていた企業』が、口座入出金などオンラインデータの分析結果により、融資審査の土俵にあがる可能性が出てきました。
みずほ銀行に法人預金口座を持ち、かつ今までみずほ銀行に関連会社を含めて融資残高がない法人が対象です。
ただし、みずほ銀行から案内(登録の招待状が届く??)がないと、申込できないようです。
詳細は、みずほ銀行ホームページの案内書類をリンクしておくので、こちらからご確認ください(みずほ銀行ホームページへのリンク)。⇒https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/finance/others/msbl/pdf/msbl.pdf
ではどのようにすれば、みずほ銀行から招待状が届くのでしょうか?ここからは私の個人的な予測です。
【招待状が届くための対策】個人的な予測
①みずほ銀行の預金口座を売上代金の入金、支払いの決済口座(仕入れ代金、公共料金、税金、社会保険料等)に指定して、口座を動かす
②クラウド会計ソフト活用を開始する(会計ソフトFREE(フリー)、やよい会計など)
③ECサイトでのネット通販を活発化させる
一朝一夕では難しく、準備期間が必要です。
一方で、考えられるデメリットは以下です。
①そもそも招待されないと、申込すらできない
②金利が現段階では、通常融資より高め(年利1%~14%の間)
③上限金額が1000万円でかつ、短期(1年以内)に返済する必要があり、選択肢が少ない
上記デメリットも、実績が積み上がり、改善を重ねる中で、使い勝手が向上していくかもしれません。あと、事業者側が気になるのは、「自分の会社は、現時点でどれだけの金額融資を受けられるのか」、だと思うので、事前に自社の融資可能金額の提示があると良い、と思います。
こうした動き、みずほ銀行を始め、今後銀行業界に広まっていくと予測しています。なぜでしょう?私は理由を以下のように考えます。
①オンライン融資は、従来審査方法と比較して、コスト(審査と営業にかかる人件費)が少なく済む
②銀行が対応しなければ、アマゾン、楽天、クラウド会計ソフト会社、将来はおそらくFacebook、など他業態の攻勢にあい、顧客を奪われる
③今まで開拓できなかった小口層など新規顧客の開拓につながる
④データが蓄積されれば、現段階でのタイムリーな入出金や連携データをもとに、確度の高い審査ができる
銀行は今まで、同業者を見て営業してきました。これからはGAFA(ガーファ)や楽天、コンビニ系など、他業態や外国の大手資本との競争が激化していきます。
小売やサービス業は、金融業界進出の際、顧客満足向上に対して、従来の銀行の発想にはない様々なノウハウをぶつけてきます。
銀行は、オンライン融資を強化しコスト削減を図りながら顧客利便性を高めていくか、または顧客との密着度合い(対面コンサルティング)を今以上に高めていくか、これら他業態との競争に打ち勝つための対策が必要になってきているのです。
以上金融業界の新たな流れ、オンライン融資について説明してきました。
金融情勢の変化が激しくなっていくことが予想される中、経営者として「どのように自社の成長資金を調達していくのか」、日頃から戦略や検討が必要だと私は感じるのです。
【この書いたのはこんな人】プロフィール
【過去の企業支援実績はこちら】企業支援実績
【関連記事】
従来の銀行常識を打ち破る、新しい法人融資サービスが始まっています。
地方銀行が顧客に提案できる差別化サービス
銀行融資とAI
お問合わせはこちらから ↓