本日の愛媛新聞を見ていると、「サ高住」に関する記事がトップだった。
「サ高住」とは、『サービス付き高齢者住宅』のことで、高齢者が生活支援サービスを受けられる賃貸住宅。国の整備推進を受け、全国で15万5879戸あるという。
1戸あたりにつき建築費最大100万円が補助金として支給される。(例えばサ高住1棟に30戸あれば、最大3,000万円など)加えて、入居した高齢者に対して、事業者(=賃貸住宅建築者)は介護サービスを提供する。この介護サービス料は、9割が介護保険から、高齢者の自己負担は1割だ。つまり、介護サービスを提供することで得られる報酬のほとんどは、税金から支払われる。
こうした理由と、特別養護老人ホームや有料老人ホーム不足という事情が重なり、他業種からの参入が相次いでいるという。
売上を最大化させたい事業者は、高齢者に対して、介護保険の月間限度額いっぱいまで、介護サービスを受けさせる。結果として、介護保険の財源を無駄に使い、国民負担が膨らむ。厚生労働省は、介護報酬の見直しや、登録基準の厳格化を検討している。
話は変わって太陽光発電。電力会社が新規買取を中止して、太陽光パネル制作や設置の事業者を巻き込み、問題となっている。すでにパネル建設に着手している事業者などの損害は甚大だ。こちらは経済産業省が旗振り役となって、再生可能エネルギーの拡大を進めてきた。
少し考えてみると、「サ高住」の場合も、「太陽光パネル」の場合も、同じパターンが見えてくる。
新たな産業サービス⇒行政の旗振り⇒補助金など参入条件が魅力的⇒他業種を含む事業者の参入増加⇒市場原理と離れたサービス価格が出てくる(不要サービスや高い買取価格など)⇒税金の無駄使い批判⇒行政が基準を引き締め⇒参入事業者が制度変更に戸惑い、事業継続が難しくなる
もちろん、計画的に自社の強みを活かして、こうした事業に取り組む事業者も多い。それなら、制度変更があっても事業継続は可能だろう。一方、制度のうまみ、補助金に魅力を感じて、参入してしまうと、制度変更が起こったとき、「こんなはずでは。」ということになる。
補助金があろうとなかろうと、事業展開できるだけの「顧客ニーズ」や「事業の将来性」があるかどうかを、参入当初によく考えることは、大切だと思う。例え参入当初に多くの利益がもたらされる事業でも、補助事業は、「もうけすぎ批判」から、予算枠の削減が発生することを頭に入れておくべきだ。
加えて、事業者側が気をつけておきたいのは、補助事業は採算管理が甘くなる傾向があるということ。「補助金はもらったお金だ」という気の緩みも出てしまう。自分が稼いだお金だと、こうはならない。
「サ高住」や「太陽光パネル」に関する事例に触れて、補助金に頼り切る事業展開の危うさを感じるのだ。