企業から依頼を受け、事業計画書を作ることがある。経営改善計画と成長戦略(中期経営計画)の2種類だ。
業績が厳しくなった時に、今後の改善策を作成する「経営改善計画書」。これを作る際には、取引金融機関との連携が大切になる。債権者である取引金融機関抜きに計画を作成しても、独りよがりになり、実現性が低くなる。
新事業展開や、今後の事業の方向性を検討したいときに作成する中期経営計画。今後3年~5年の計画を作ることが多いが、当事務所では成長戦略作成業務と呼んでいる。計画策定の過程に、できるだけ多くの社内の関係者を巻き込むことがポイントだ。計画策定の過程に関わることで、当事者意識を持ってもらうことになり、計画の実行率が高くなる。このプロジェクトに、後継者や幹部候補生を参加させると、絶好の人材育成の機会となる。
以上のように、事業計画書の作成には、大雑把に言うと、①「経営改善計画」②「成長戦略作成」この二通りあると思う。いずれにおいても私が重視していることは、現状把握だ。現状把握のために、まずは徹底的にヒアリングを行う。
経営改善計画の場合は、今の厳しい状況に至った原因(これを窮境要因(キュウキョウヨウイン)という)を把握できないと、的確な改善提案などできない。経営者は、漠然とした窮境要因は掴んでいるが、日常業務に忙殺され、真の窮境要因にたどり着いていないケースが多い。
私の役目は、経営者と一緒に真の窮境要因を探すことだ。これを探し当てることができれば、どう克服するか、または克服できないなら撤退を含めどうするか、改善策の検討に進むことができる。逆にこの現状分析が不十分であれば、的確な改善策の検討にはたどりつけないだろう。
成長戦略策定の場合は、現状把握で自社の強みや、今後の事業機会などをヒアリングする。支援企業内のプロジェクトチームのメンバーと共に、ポストイットを使って、SWOT分析をしたりもする。
現状把握として、窮境要因を探す場合も、自社の強みや事業機会を探る場合も、私が取る方法は、過去の実績をさかのばってみることだ。理想は過去10年間。3年や5年では少ない。
決算書を過去10年分提出いただき、時系列に確認していく。損益計算書や貸借対照表の計数をエクセルシートで10年分並べてみる。そうすると疑問が湧いてくる。この年はなぜこんなに業績が良かったのか。逆に落ち込んでいる年は何が原因だったのか。
前述したように経営者は、日常の業務に追われ、過去を振り返る機会を持つことが難しい。過去の実績の中に、ヒントが隠されているケースが多い。当社が現在まで事業を継続できているのは、顧客にどのように支持されてきたからか、とか、この時期から業績が悪化しているのは、このような外部環境の変化があったからだとか。過去の決算書を経営者と一緒に確認し、実績数字の原因を解明していく。
過去を10年さかのぼると、会社の組織文化や、経営者の意思決定のくせ、などがよく分かる。
過去実績を客観的に分析し、経営者に気付きを提供し、今後の事業展開に活かしてもらうことが、コンサルタントの役目の一つだと思う。その役割を達成するために、決算書を使った10年分の過去分析は、有効な手段だと思う。