顧客から見たメインバンクの認識と銀行が持っているメインバンクの認識の違いについて、お話したいと思います。
もう15年ほど前の話になります。私が若手で得意先担当だった時の話です。ある日取引先のメイン企業(以後A社とします)の口座に大口の振込がありました。入金については気づいていましたが、経験も浅かったので、「預金が増えてラッキー」ぐらいに考えていました。
それから数日してA社の経理担当の奥さんが電話してきました。「借入金全額返済します。」大騒ぎになりました。他銀行がA社に対して低金利で融資金の肩代わりの提案を行い、私が在籍していた銀行の長期借入金を借り換えしたのでした。
急いでA社に訪問した私は、長年のメイン取引先であるA社に対して、なんとか返済を撤回していただくようにお願いしましたが、後の祭りでした。
その時奥さんがおっしゃった言葉は、今でも耳に残っています。「取引を解消するわけではないから。当座預金も御行の口座も動かすし、引き続きメインバンクと考えていますよ。」ギャップに驚きました。
今でもそうだと思いますが、銀行からみると融資が多い企業がメインバンクという認識です。融資が第1、決済機能が第2で、役職員取引が第3のような位置づけです。しかしA社からみるとまだメインバンクだという。さらに「返済するのだから、銀行は助かるのではないですか。」という認識。これには参りました。苦い思い出です。
銀行員にとって一番残念なことは、取引先が倒産し、融資金が回収不能になることです。その次に残念というか、これは屈辱というべきなのが、他銀行に取引先の融資金を肩代わりされることなのです。メイン取引先なら尚更のこと、上司から大目玉です。
で、取引先企業はというと、「あの企業は金利で動く企業だ。」とその銀行からは認識されます。履歴として残ってしまいます。長年いい時も悪いときも一緒に築き上げた信頼関係が、消滅してしまいます。新しい銀行とは1からのスタートになります。担当者や支店長が変われば、方針が変更するかもしれません。
だから他行から提案があれば、まずはメインバンクに相談してみてはどうでしょうか。金利面など相談に乗ってくれるのではないでしょうか。
ということで今日は、メインバンクについての顧客と銀行の認識の違いについてお話しました。
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