【この記事で分かること】
・3期連続赤字なのに会社が続けられている理由
・3期連続赤字になると、銀行、取引先、従業員、利害関係者の態度はどう変わるか
・3期連続赤字が出た場合、経営者はどうすれば良いか 具体的方法
顧問税理士事務所から社長のあなたに決算書が届いた。
中を見てみると、今年も赤字。これで3期連続赤字になりました。
財務に疎い経営者でも、「これはさすがにまずい。このまま会社はどうなるのか」不安になります。
そこで今日は、3期連続赤字が会社に何を引き起こすのか、今後具体的にどのような手を打てばよいのかについて、お話しします。
【目次】
通常の感覚で言えば、1期赤字で黄色信号、2期連続赤字で赤点滅信号、3期連続赤字が出れば赤信号で事業から退場です。
通常なら赤字は、顧客から支持されていない、取り扱う商品・サービスが市場のニーズに合致していない、と考えられます。
それなのに、会社が続けられているということは、資金ショートしていないからです。
資金ショートしていないのは、主な要因として、
①社長が役員報酬や個人の預金など、個人資産を会社に投入している
②銀行借入金で赤字部分を補てんした
③政府からのコロナ給付金で当面の資金が手配できた
④定期預金や生命保険など、もともとあった会社の資産を取り崩して使用した
⑤仕入代金、社会保険、税金などの支払いを待ってもらっている
などが考えられます。
しかし、この状態はいつまでもは続きません。
【参考記事】赤字でもお金が増えることがあります。そこには落とし穴があります。会社を守るため、知っておきませんか?
こちら☟
赤字なのにお金が増えた?~そのとき会社に何が起こっているか~
令和6年12月時点では、コロナも落ち着き、銀行は平時対応に融資姿勢を切り替えています。
コロナ禍では、銀行はゼロゼロ融資により、中小企業の資金繰りを支えました。
そのため十分金融支援をしてきた、と考えています。
これからは会社自身の立ち直っていく自助努力の姿勢を、厳しく見てきます。
つまり、融資姿勢は厳しくなります。
令和6年に入り、中小企業の倒産件数は増加傾向にあります。銀行が支える会社、支えない会社の選別に入った影響があるでしょう。
以下の記事で「銀行が救う会社、見捨てる会社の基準」について説明しています。
【参考記事】銀行が救う会社、見捨てる会社 ~融資先選別時代に備える~
赤字が連続すると、借入金の返済財源が出ません。貸したお金がいつまでも減らないことになります。
いつまでも支えることが難しくなるのです。そのため、銀行の融資態度は厳しくなり、追加融資のハードルが上がります。
【参考記事】銀行の決算書を見る目が一気に厳しくなります。どこを指摘されるのか?知っておきませんか?
こちら☟
2期連続赤字が続くと、銀行員にチェックされる決算書3つの項目
令和6年4月から、3期連続赤字の会社に関係ある政策変更が行われます。
令和6年3月8日に経済産業省、金融庁、財務省が連名で公表しました。
注目したのは、4.民間金融機関による支援の強化「実現性の高い抜本的な経営再建計画」等の策定を促進、のところ。
コロナ禍では、再生計画なしでのリスケジュールが認められていました。緊急事態として再生計画がなくとも、不良債権認定は回避できていました。
今後は、再生計画なしのリスケジュールは、不良債権に認定される可能性があるということです。
大きな政策変更と言えそうです。
令和6年4月からメインバンク主導で、経営不振企業の再生計画策定が進んでいくことが予想されます。
(令和6年12月時点で予想した通りの動きとなっています)
経営再建計画を作るための国の補助事業の詳しい説明記事はこちら
赤字が続くと、利益に対してかかる法人税は発生しません。
法人事業税や固定資産税は同じようにかかります。
問題になるのは、消費税です。
消費税は顧客からの預り金です。売上と仕入れの差額に対してかかります。
売り上げ規模にもよりますが、中小企業でも数百万円かかることは多いものです。
消費税は、理想をいえば定期積金をしたり預金通帳を分けたりして別管理しておくと、支払い時に助かります。
ただ3期連続赤字会社の多くは、運転資金として使用してしまいます。
そのため、納税時期に資金が手元になくなります。
税務署に申請して、消費税を分納したり、延納したりすることになります。
赤字が続くと、預金口座から資金がどんどん出ていきます。
売上が下がっても、固定費は同じようにかかります。
固定費とは、売上の上下に関わらず同じようにかかる費用で、従業員給与、家賃、支払利息、リース料などがあります。
入ってくるのは少なく、出ていくのは同じ額。資金がどんどん減っていく。恐怖の状態になります。
そしてその結果、資金がショートします。資金がショートすると、事業継続ができません。
この状態を防ぐために、素早く手を打つ必要があります。即効性が高いのは、コストカットです。
具体的方法を下記の記事に記載しています。ご参照ください。
【参考記事】;黒字化に向けてのコストカット具体策を「コスト実績確認シート」、「コスト目標策定シート付」で説明しています。チェックしませんか?
こちら☟
【コスト削減確認シート付】「営業利益がマイナス。具体的なコストカット方法」(和田経営相談事務所オフィシャルホームページ)
取引先のうち、特に仕入先の話になります。
仕入先は、納品状況や代金支払いの状態を知っています。あなたの会社の経営状態をよく把握しています。
そのため、仕入先メーカーが大手なら、保証金の積み増しを要求してきたり、支払条件を厳しく(支払サイトを短くする)したりしてくるかもしれません。
こうなると、必要なタイミングで必要な量、仕入が難しくなります。
3期連続赤字ながら、幸運にも今こうした状態になくとも、今後は分かりません。
資金繰りが厳しくなれば、最終的には給与支払遅延になるかもしれません。この段階までくれば、残念ながら会社再生は困難と言えます。こうならないように早めに手を打つ必要があります。
経営者は伏せているつもりでも、従業員には会社の経営状況が分かってしまいます。
来店客の動向や商品の動きなど、最前線で働いている従業員が一番わかっているからです。
パートやアルバイト社員から、「あの会社、もうやばいよ!」と噂が流れるかもしれません。
SNS全盛の今、人の口を塞ぐのは難しくなっています。
人手不足の昨今、資格取得していたり、顧客から人気があったりする優秀な社員は、他社でも引く手数多なので、離職していきます。
(人件費が適正かどうかの基準は、この記事に詳しく書いています。計算シートもつけていますので、参考にしてください)。
【参考記事】【人件費計算シート付】あなたの会社の人件費は適正なのか ~どのように調べ、どう経営に活かすか~
(和田経営相談事務所オフィシャルホームページブログ)
以上、分野別に厳しいケースを想定してお話しを進めてきました。
今あなたの会社は、このような状態まで進んでいないかもしれません。
しかし、時間の問題かもしれません。
対策は、余裕のあるうちに廃業したり、М&Aにより売却したり、事業を辞める方向性が一つ。
もう一つは、覚悟を持って会社を改革して黒字体質に戻す方法。
ただ熱意や覚悟があっても、再建が難しいケースもあります。誰でも自分のことは客観視できないものです。
事業が継続できるかどうかについて、メインバンクや専門家など、外部の視点が必要かもしれません。
☑ 商品やサービスを支えてくれる顧客がどれぐらい存在しているか
☑ 競合他社と比較して事業継続できるだけの、会社としての強みは有しているか
☑ 商品やサービスを革新できる、将来への種は存在しているか
☑ コストカットできる余地は残されているか
☑ 経営者や従業員など人的資源の質はどうか
最後にこの記事の内容について、下記表にまとめます(画面クリックで表は拡大します)。
以上、3期連続赤字が出た時の利害関係者の態度変化と、経営者の対策をお話ししました。参考にしていただけますと幸いです。
【関連記事】
2期連続赤字で、銀行の融資態度はどうなるか。~銀行の対応、あなたがとるべき対策~
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