【この記事で分かること】
・ 銀行員が嫌がっている社長の態度
・ 悪気が無くても、実はマイナスになっている行動
・ 経営者はどう改善すれば良いか
地方銀行員として17年働き、その後、中小企業の財務支援、経営力向上をメインとしたコンサルで独立して、13年が経過しました。
銀行員、コンサル両方の立場で、30年以上中小企業経営者に接してきました。
そこで感じるのは、銀行とその融資先中小企業の経営者の意識ギャップ。
経営者にも言い分はあると思いますが、今日は銀行の観点から見て、「銀行が嫌う経営者」について、考えてみたいと思います。
こうした銀行の考え方を知っていれば、融資対応で失敗を少なくできます。
また銀行の意見は、会社を向上させるケースも多いので、あなたの会社の経営力アップに活用いただけますと幸いです。
【目次】
約束を反故にする経営者を、銀行は嫌います。
例えば、約束した融資金の使途(つかいみち)を守らない。
設備資金として融資したのに、運転資金に回したり、
商品仕入資金として融資したのに、会社の外に資金を持ち出したり、
などが該当します。
また、融資条件を履行しない。
返済が遅れることはもちろん、約束したコストカットによる黒字化が達成できない、などの場合です。
ごまかしの代表的なものは、決算書のごまかし、粉飾決算です。
粉飾にも色々悪質加減があるのですが、特に、
✔ 売上の水増し
✔ 原価の未計上、または意図的に来期へ計上をずらす
✔ 簿外債務(借入金を決算書に載せない)
✔ 有価証券、預金などを架空計上
これらは悪質とみなされ、一発アウトです。
新規融資の停止はもちろん、場合によっては、既存の融資について一括返済を求められます。
好ましくはありませんが、改善策を説明して理解を得る可能性がある粉飾は以下です。
✔ 減価償却費の未計上
✔ 不良棚卸資産(不良在庫)を貸借対照表に残している
✔ 回収不能な売掛金を損金処理せず、貸借対照表に残している
✔ 事務ミス、勘違いによる経費の計上漏れ
決算書のごまかしをする経営者を、銀行は嫌います。
決算書を信じて融資をしたのに、粉飾されていると融資が返済されない可能性が高くなるからです。
財務のことを経営者に聞いても、以下の様な答えが返ってくると、銀行員は不安になります。
✔ 決算書のことは○○に任せているから、よく分からない
→ 経営者が数字のことも分からない会社に、融資しても大丈夫か?
✔ 試算表や資金繰り表は、いつもは作っていない
→ 融資のときだけ資料を作って、普段の財務管理はどうなっているのか?
✔ 主要顧客の動向は営業担当に任せているから、すぐには答えられない
✔ ○○のせいで。○○が動き出したら良くなるだろう。
→ 外部環境のせいにしてばかりで、自分で改善策を考える気がないのか?
✔ (リスクを指摘したとき)そのときは、そのときよ。
→ リスク管理に関する意識は大丈夫か?
以上のように、財務に関して意識が薄かったり、業績不振の理由を環境のせいばかりにする、他人任せな経営者に対して、銀行は不信感を持ちます。
「社長が事前相談なく勝手に始めたんです。多額の投資を決定した後、事後報告で」
「事前相談があったら、もう少し慎重に進めることを助言したのですが」
新規事業進出に失敗した会社の事業再建現場で、デューデリジェンスをする際、メインバンクからよく漏れてくる不満です。
銀行(特にメインバンク)は、新規事業進出、設備投資、資金調達、などについて、事前に相談を受けたいと感じています。
メイン先のそうした重要な動向を営業担当者が知らずに、実行された後知らされると、、、。営業担当者は上司から大目玉を食らいます。
上司は、本部や役員から大目玉を食らいます。
だから、新規事業進出などの会社の将来に大きく影響することは、事前に相談してほしいのです。
たとえ、慎重意見を出されたとしても、会社にとってはリスク点検になります。
現在の支店長や担当者を飛び越え、転勤した以前懇意にしていた支店長や本部の役員に相談を持って行く経営者がいます。
経営者からすると、付き合い・つながりを大切にしているつもりですが、この行動は銀行から嫌がられます。
役員や以前の支店長から、情報が回ってくるほど、今の支店長にとって屈辱はありません。
銀行とは、「経営者⇔銀行員」個人間の付き合いではなく、会社と銀行組織の付き合いと考えたほうが良いでしょう。
懇意にしていた支店長もいずれ転勤しますし、ウマが合わない支店長とも付き合っていかねばなりません。
【参考記事】経営者のその言動、銀行員は嫌がっているかも?②~経営者が意識せずに言ってしまう、銀行支店長への禁句~
金利を判断基準として、メインバンクをよく変える経営者がいます。
何回かは成功しても、金利重視の考え方で銀行を選定していると、いずれ痛い目にあいます。
銀行を変えられるのは、業績が良いからです。
しかし、業績は悪化する時もあります。
メインバンクを頻繁に変えてきた会社は、銀行との歴史が浅くなります。
あわてて以前の取引銀行に駆け込んでも、相手にしてくれないでしょう。
景気が良かった時の行動を変えられない経営者がいます。
今は業績が悪化していてもです。
業績が悪化しても以前の生活を続けていると、借金が増えます。
ある時点までは、銀行も融資してくれます。
しかし銀行は観察しています。
例えば、連続赤字を計上した時点で融資態度を一気に硬化させます。
追加融資を申し出ると、「まずはコストカットしてください」と言われます。
役員報酬、接待交際費、旅費交通費、役員保険、高級車リースなどです。
銀行の態度変化に、経営者はポカンとします。
銀行は現状認識を正しくできず、業績悪化に関わらず危機感を持たない経営者に、厳しく当たるのです。
【参考記事】銀行から見て首をひねりたくなる決算書⑤~赤字なのに役員報酬、接待交際費が多額~
銀行に媚びる必要はありませんが、銀行に嫌われると以後の事業活動に影響が出ることは事実です。
色々お話ししてきました。
約束を守らない、ごまかす、他人任せ、勝手に新規事業、飛び越え相談、金利で動く、業績悪化の認識不足、、、。
ただこうして振り返ると、いずれも会社経営にマイナスのことばかりです。
耳の痛い話かもしれません。
今までは業績が良かったため、表面化しなかっただけです。
しかし、経営者はまず自身の言動を振り返り、出来ることから改善していかねばなりません。
約束を守り、ごまかさず正直に、経営者自身が事業や財務に深くかかわり、会社の重要事項は事前相談をして、業績が悪化した場合には現状を正しくつかみ的確な改善策を素早く打つ、、、。
もちろん客観的視点で助言はできますが、どうすれば良いかを考え実行していくのは、最終的には経営者自身なのです。
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