「追加融資を申し込んだら、銀行から直近の試算表を求められた」
「毎年、決算書を提出しているのに、なぜ試算表まで必要なのか」
「銀行員は試算表のどこを見て、融資できるかどうかを判断しているのか」
このような疑問を持つ中小企業経営者は少なくありません。
最初にお伝えしたいのは、銀行員は「試算表を提出できない融資先」を嫌がるということです。
ここでいう「嫌がる」とは、単に書類の準備が遅いことへ不満を持つという意味ではありません。
試算表をすぐ提出できない会社に対して、銀行員は「経営者が足元の業績を把握できているのか」「経理や資金管理の体制に問題がないか」「融資後も状況を適切に報告できるか」と不安を抱きます。
試算表は、融資審査のためだけに作る書類ではありません。最新の経営状況を把握し、銀行へ説明するための重要な資料です。
この記事では、銀行が試算表を求める理由、確認している数字、銀行が嫌がる試算表、そして求められたときに提出できる体制の整え方を解説します。

試算表とは、年に一度作成する決算書へ至るまでの途中経過を示す財務資料です。
日々の取引を仕訳し、勘定科目ごとに集計した結果が月次試算表となります。その積み重ねに決算整理を加えて作られるのが、貸借対照表や損益計算書などの決算書です。
決算書が示すのは、あくまで決算日時点の財務状況と、その事業年度の経営成績です。
前回の決算から時間が経過していれば、決算後に売上が減少しているかもしれません。反対に、受注が増え、利益が改善している可能性もあります。
銀行が試算表を求める最大の理由は、融資判断をする時点に近い、最新の経営状況を確認したいからです。
例えば、決算から6か月が経過した時点で次の実績が出ているとします。
● 6か月間の売上高6,000万円
通期予測:1億2,000万円(6,000万円×2)
● 6か月間の利益300万円
通期予測:600万円(300万円×2)
実際の業績が単純に2倍になるとは限りませんが、銀行は試算表の実績、前期との比較、季節変動などを踏まえ、今期の着地を予測します。
試算表の内容が良いか悪いか以前に、求められた試算表を提出できないことが問題になります。
銀行から見ると、融資先が自社の現在地を把握できているかは、返済可能性を考えるうえで重要です。月次の業績が分からなければ、経営悪化への対応も遅れているのではないかと考えます。
試算表が遅れている理由を聞かれたとき、「経理担当者に任せているので分からない」「税理士へお願いしている」と回答する経営者もいます。
しかし、銀行員が融資判断をする相手は、経理担当者や税理士ではなく会社です。
経理実務を担当者や税理士へ任せることに問題はありません。ただし、経営者には、試算表がいつ完成するのか、売上や利益がどう推移しているのかを把握する責任があります。
銀行が見ているのは試算表の数字だけではありません。
求められた資料を速やかに準備し、その内容を経営者が説明できる管理体制も見ています。
提出の遅れが一度あっただけで、直ちに融資を断られるとは限りません。しかし、理由を説明できず、いつ完成するかも分からない状態は、融資審査を進めにくくします。
銀行は、試算表の一つの数字だけを見て判断するわけではありません。
前回の決算時と比べて何が変わったのか、その変化は一時的なものか、今後の返済へ影響するものかを確認します。
売上高が増えていても、粗利益率が低下して営業利益が減少していれば、銀行はその原因を確認します。
反対に、売上高が減っていても、不採算取引の見直しなどによって利益が改善しているなら、その内容を説明することが大切です。
銀行は、前回の決算時から借入金残高が増えているか、減っているかも確認します。
借入金が増えている場合は、どの銀行から、何のために融資を受けたのかを尋ねられることがあります。取引銀行は、他行からの借入状況も含め、会社全体の返済負担を把握しようとするためです。
支払利息の状況も確認対象です。特に変動金利の借入が多い場合は、金利負担が今後の利益や資金繰りへ与える影響にも注意が必要です。
銀行が知りたいのは、「前回の決算後に、経営状況を大きく変える出来事が起きていないか」という点です。
銀行へ試算表を提出すれば、それだけで説明が終わるわけではありません。
試算表の数字が大きく変動していれば、その理由を説明できるようにしておく必要があります。
同じ数字の増減でも、背景によって銀行の受け止め方は変わります。
悪化した数字を隠そうとするのではなく、原因、現在の対応、今後の見通しを整理して伝えるほうが、銀行との対話を進めやすくなります。
試算表を期限内に提出できても、会社の実態が読み取れない内容では、銀行が融資審査を進めにくくなります。
建設業や一部の製造業などでは、工事やプロジェクトの完成時に売上を一括計上する「完成基準」を採用している場合があります。
完成まで売上が計上されず、材料費や人件費などの経費だけが先行すると、工事が順調に進んでいても、期中の試算表は大幅な赤字に見えることがあります。
数字だけを見れば、銀行員は「今期は赤字なのか」と考えます。実態と試算表の見え方が異なる場合は、何も説明せずに提出してはいけません。
進行基準への変更を検討できない場合は、進行中の工事一覧、進捗状況、受注残高などの補足資料を用意し、試算表に表れていない実態を説明します。
経理担当者や顧問税理士の変更を機に、勘定科目の分類方法や部門別会計の処理方法が変わることがあります。
しかし、前期まで細かく分類していた項目を急に一括計上すると、銀行は業績の推移を正確に比較できません。場合によっては、都合の悪い情報を見えにくくしたのではないかと疑われる可能性もあります。
会計処理を変更する場合は、継続性を意識し、変更した理由と数字への影響を説明できるようにします。担当者や税理士が変わるときも、従来の処理方法を正確に引き継ぐことが重要です。
【関連記事】【銀行が嫌がる決算書とは?】融資が遠のく5つの特徴と改善策(2025年版)
銀行から試算表を求められても、すぐに提出できない場合は、社内の経理や事務フローに問題がないかを確認する必要があります。
試算表の作成が遅い状態は、銀行対策だけの問題ではありません。経営者自身が売上減少、利益率低下、在庫増加などに気づくのも遅くなります。
特別なテクニックよりも、必要書類の提出期限、担当者、確認手順を決め、毎月同じ流れで実行することが大切です。
11か月目までの試算表では黒字だったのに、最終的な決算書では赤字になることがあります。
主な理由は、決算時に「決算整理仕訳」が行われるためです。
月次試算表を経営判断へ活用するなら、決算時にまとめて処理している項目の影響も把握しておく必要があります。
毎期大きな決算整理が発生し、試算表と決算書が大きくズレる場合は、可能な範囲で月次処理へ反映させると、期中の利益を判断しやすくなります。
【関連記事】【試算表黒字 決算赤字】なぜ?決算処理で利益が消える3つの原因と対策(2025年版)
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銀行が試算表を求めるのは、前回の決算後に起きた変化を確認し、融資時点に近い経営状況を把握するためです。
銀行員は、売上高や利益だけでなく、借入金、支払利息、在庫、未払金、役員貸付金などの動きも確認します。大きな変化があるときは、数字だけでなく、その理由と今後の見通しを説明することが重要です。
銀行員が嫌がるのは、単に業績の悪い試算表ではありません。試算表を提出できず、現在の経営状況を説明できない会社です。正確な試算表を早く作る体制は、融資対策であると同時に、自社の変化へ早く気づくための経営基盤です。
試算表を銀行へ提出するためだけの書類にせず、経営者自身が毎月の変化を確認する資料として活用してください。
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