前回は、現状分析についてお話ししました。
現状分析が終わると、ようやく「数値計画と具体的実施策」に入ります。
この数値計画と具体的実施策を指して、一般的に「経営改善計画書」と言っています。
そのため、ここから着手してしまいますが、今まで説明してきた通り、大切なのはその前の部分の現状分析です。
正確な現状分析ができてはじめて、実現性の高い「経営改善計画書」が出来上がります。
【目次】
まず最初に支援先経営者と実施するのは、課題に対しての具体的実施策のディスカッションです。
前回お話しした現状分析(事業調査・財務調査)で、支援先企業の経営課題が把握できているはずですから、その課題に対して、経営者として何をしていくか、案を出してもらいます。
出てきた案に対して、意見交換を重ねていきます。
我々支援者の役割は、まずは経営課題を的確にまとめることです。経営者が感じている漠然とした課題を文章化したり、支援者が感じた経営課題を客観的視点をもって提言します。
ここは、支援者のプロとしての力量が問われるところです。
経営課題が的を得ていたら、後はそれに対して、企業が保有する経営資源を使って、どんな具体的実施策をぶつけていくか考えるだけです。
具体的実施策は必ず企業側に案を出してもらいます。支援者の押し付けでは実行が伴わず、「机上の空論」になる可能性が高いからです。
具体的実施策を考えてもらっている間に、同時並行で、今後の数値計画のたたき台数値を検討します。
数値計画とは、将来(5~10年)の損益計画、貸借計画、キャッシュフロー計画、製造原価計画、販売管理費計画、純資産の推移計画、金融機関借入金の返済額と残高推移、減価償却費計画などです。
これらの数値が、具体的実施策と一致していなければなりません。
本当は、経営者に考えてもらえればベストなのですが、残念ながら中小企業経営者に、詳細な数値計画を策定できる時間と経験はありません。
プロとして、支援者がたたき台数値を作成し提案する必要があります。
繰り返しますが、支援者が整合性のある数値計画を作るためのは、現状分析に時間をかけ、企業の内容を熟知していないと難しいです。
こうして、以下のような内容で、「数値計画と具体的実施策」が出来上がります。
①表紙
②経営者挨拶
③目次
④経営改善計画の概要
⑤ビジネスモデル俯瞰図
⑥関係者相関図
⑦計画数値の概要と具体的実施策
⑧具体的実施策スケジュール(改善行動の優先順位付け)
⑨数値計画詳細(将来5~10年程度)
PL計画、BS計画、CF計画、製造原価計画、販売管理費計画、タックスプラン、金融機関借入金残高推移、純資産計画など
(タックスプランは、繰越欠損金の有効期限はいつまでか別表で確認して、利益との兼ね合いで税金のキャッシュアウトはどうなるかに注意)
⑩事業部門別、取引先別、商品カテゴリー別、店舗別などの収支計画(企業の状況に応じて選定)
⑪人員計画
(今後人員をどう配置していくか、人件費はいくら予算取りするか)
⑫設備投資計画
(事業継続のため、必要な設備投資は何か)
⑬コスト削減策、営業強化策、収益改善策、人材育成策、不良資産・在庫削減計画など、企業の状況に応じた改善策
⑮資金繰り計画
(計画を実施することで、今後資金繰りはどうなるか)
⑯金融支援計画
(計画を実行することで、取引金融機関からどのような金融支援が必要となるか、金融機関借入金残高・返済金額はどう推移していくか)
(金融機関ごとの返済額を決めるためには、根拠あるキャッシュフロー金額予測と、基準日の融資残高シェアが必要です)
⑰減価償却費明細
(過去の償却率と将来の投資計画をもとに、各資産別の将来の償却額を予測)
⑱金融機関別保全状況
こんな感じで金融機関ごとの保全(担保)を確認します。記事のリンク貼りますので参考にしてください。
【参考記事】銀行融資と担保、バランスの見方
上記工程を得て出来上がった経営改善計画書のイメージを添付しますね。ご確認ください。
☟
【経営改善計画書出来上がりイメージ】計画書サンプル;出所;中小企業庁
上記の中で、特に金融機関など債権者が気になるのが、⑨数値計画詳細と⑯金融支援計画です。金融機関は、この計画を実行することで、融資金がきちんと返済されるかどうかが、一番の関心ごとだからです。
【参考記事】→「銀行が提出した経営改善計画を認めない3つの理由」
そして、金融機関から認められる数値計画を作成するためには、人件費、借入金利息、減価償却費、社会保険料、棚卸資産残高、売掛金残高、買掛金残高など、細部にわたるまで、きちんと数値算出の根拠を示すことが大切です。
例えば、金融機関から借入金利息金額の算出根拠を聞かれた場合、支援者が「今まで実績でこれぐらいだったから、将来もこれぐらいです」と曖昧な回答をするようでは、経営改善計画書の信ぴょう性を疑われます。
各金融機関、各借入ごとの金利はいくらで、保証料がいくらで、年度ごとの借入金残高がこの金額推移になりますので、掛け合わせて(2期の残高平均×利息・保証料)この支払利息になります、と図表を使い、説明する必要があります(借入金利息計算シートを添付します)。
特に信用保証協会付融資については、保証料と保証割合(金融機関と信用保証協会とのリスク負担割合)をデューデリの際、経営者からヒアリングしておきます。保証料は利息計算の際に必要になりますし、保証割合は金融機関ごとの保全(担保や保証でカバーできている割合)表を作るときに必要になります。
なぜここまで細かく調べるかというと、金融機関にとって支払利息(信用保証協会にとっては保証料)は、自分たちに深く関係する勘定科目だからです。あらかじめ説明できる資料を作って計画書に添付しておけば、質問されることはありません。
このように、ポイントになる数値において、計算の根拠を説明できるようにしておきます。
数値計画を説明するために、今まで時間をかけて現状分析をして、ロジックを積み上げてきました。この計画実施が「金融機関にとってもメリットである」ことを、理解してもらいます。
一方、会社にとって大切なのは、⑦具体的実施策⑧行動スケジュール⑬各種改善策です。
なぜなら、数値は行動を起こすことによる結果だからです。結果を出すための過程(改善策を実施すること)が最も重要になります。
このように、経営改善計画の行動計画と数値計画を作成するためには、様々な面からノウハウや配慮が必要です。やっつけ仕事では、利害関係者の満足のいくものができず、時間とコストが無駄になります。
債権者である金融機関に認められる「経営改善計画書」であり、そしてそれがイコール、支援先企業の将来を照らしていく指針(具体的実施策、数値計画、金融支援計画がリンクして、この計画を実行することで企業が再建する)になっている必要があります。
この記事で説明したような経営改善計画に関するご相談は、以下のボタンをクリックしてお問い合わせください(405事業を使えば、事業計画書作成支援の金額の1/3の金額が自己負担、ただし以後3年間のモニタリング費用は別料金。詳細は下記メールフォームからコメントか、電話でお問い合わせください)。
以上、経営改善計画の「数値計画と具体的実施策」の作成についてお話ししました。次回は、計画策定後のモニタリングについてお話しします。
【この記事書いた人】プロフィール
【支援実績】今まで支援した内容
【お手伝いの際の考え方】【代表挨拶】お手伝いの際の考え方
【サービス料金メニュー】こちら
(405事業を使えば、事業計画書作成支援の金額の1/3の金額が自己負担、ただし以後3年間のモニタリング費用は別料金。詳細は下記メールフォームからコメントか、電話でお問い合わせください)
【ご契約までの流れはこちら】ご契約までの流れ
【この記事の問題を解決するための支援メニュー】事業計画書作成
【関連記事】
会社を再建する!経営改善計画書の作り方⑤~計画完成後のモニタリング~
会社を再建する!経営改善計画書の作り方⑥~番外編=私の仕事の進め方~
405事業(経営改善計画策定支援事業)を使って会社を立て直す!その注意点
経営改善計画策定に関するご相談・お問い合わせは、下記からどうぞ(24時間コメント受付、返答は翌営業日以降になることがあります。暗号化対応をしているため、メッセージやメールアドレスが外部に漏れることはありません)。☟