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経営再建計画の作り方と流れ:アクションプランと数値計画|経営危機を乗り越える!経営再建計画の作り方|⑧

経営再建計画書は、会社の未来を描き、再生への道筋を示す重要な文書です。一般的に、この計画書は大きく二つのパートから構成されます。前半が現状分析と課題特定を行う**「事業デューデリジェンス(事業DD)」、そして後半が具体的な再生へのステップを示す「アクションプランと数値計画」**です。

これまでの記事で事業デューデリの詳細について解説してきましたが、今回からは計画書の後半部分であり、経営再建の実行段階における設計図となる「アクションプランと数値計画」の作成プロセスに焦点を当てます。まずは、その全体的な流れと各要素の概要について、経営者、従業員、そして金融機関関係者など、すべてのステークホルダーに向けて分かりやすく解説します。

経営再建計画の全体像:「事業デューデリ」から「計画実行」へ

経営再建計画書作成のプロセスは、以下の流れで進むのが一般的です。

1. 事業デューデリ(前半):
・内部環境分析(収支分析など)
・外部環境分析(市場・競合分析など)
・SWOT分析
・実態バランスシートの作成(真の財産状態の把握)
・経営課題の抽出
・窮境原因の分析
・(損益イメージ図の作成)

2. アクションプランと数値計画(後半):
・具体的な改善策(アクションプラン)の策定
・各種数値計画の策定
・計画全体のとりまとめ

事業デューデリで徹底的に自社の現状と課題を掘り下げることが、後半の「アクションプランと数値計画」の質を決定づけると言っても過言ではありません。

[関連情報:実態バランスシートとは? なぜ経営再建で重要か?]

アクションプランとは?:課題解決を具体化する行動計画

アクションプランとは、事業デューデリを通じて明らかになった**経営課題を解決するための「具体的な改善策」と「実行スケジュール」**を定めたものです。

事業デューデリで見えた「方向性」を「実行策」へ

事業デューデリの段階で、「収益性を改善すべき」「生産性を向上させるべき」といった**「改善の方向性」は見えています。アクションプランの策定では、この方向性をさらに一歩進め、「誰が、いつまでに、何を、どのように実行するのか」**を明確にします。

具体例:値上げ交渉、設備投資

・経営課題: 主力商品の利益率が低い
・改善の方向性: 価格交渉による利益率改善
・アクションプラン:
【誰が】営業部長
【何を】主要顧客A社、B社に対し
【いつまでに】X月X日までに
【どのように】〇%の値上げ交渉を実施し、合意を取り付ける。

経営課題: 製造ラインの生産性が低い(老朽化による)
改善の方向性: 最新設備への更新
アクションプラン:
【誰が】製造部長
【何を】〇〇製造装置(型番XXX)を
【いつまでに】Y年Z月までに導入・稼働させる
【どのように】投資額〇〇円を見込み、必要な承認プロセスを経て発注する。

質の高い事業デューデリがアクションプランの精度を決める

繰り返しになりますが、事業デューデリの精度が低いと、経営課題の特定が甘くなり、結果としてピントのずれたアクションプランを策定してしまうリスクがあります。これは経営再建の失敗に直結しかねません。正確な現状認識に基づく課題特定こそが、実効性のあるアクションプランの前提となります。

[関連情報:経営課題を正確に抽出するためのポイント]

数値計画とは?:再建への道筋を数字で示す羅針盤

数値計画とは、策定したアクションプランを実行した結果、会社の財務数値(損益、資産・負債、キャッシュフロー)が将来どのように変化していくのかを具体的に示すものです。いわば、経営再建という航海における計器盤や海図の役割を果たします。

金融機関が最も注視するパート:合理性と実現可能性が鍵

経営再建計画書は、多くの場合、融資を受けている金融機関に提出され、返済条件の変更(リスケジュール)や追加支援の同意を得るために用いられます。金融機関が最も関心を持つのは、「貸したお金が、将来きちんと返済されるのか?」という点です。

そのため、**数値計画には、その算出根拠となるアクションプランとの整合性、そして計画全体の合理性・実現可能性が強く求められます。**根拠が曖昧であったり、達成困難な楽観的すぎる数値が並んでいたりする計画では、金融機関の同意を得ることは極めて困難です。「経営再建計画書 金融機関」という視点では、この数値計画の信頼性が承認の可否を決めると言っても過言ではありません。

数値計画を構成する主要な要素リスト

数値計画は、多くの個別計画から構成され、それらが相互に連動しています。元記事で挙げられている主要な計画要素を以下に示します。(個々の計画の詳細は今後の記事で解説予定)

1. 減価償却と投資計画: 設備投資とその償却費の見込み。
2. リース支払計画: リース物件の支払いスケジュール。
3. 人件費計画: 人員計画に基づく総額人件費の見込み。
4. 計画0年目の着地見込み: 計画開始直前の年度の最終的な損益予測。
5. 事業部門別業績計画: 部門ごとの売上・利益計画。
6. 販売先別売上計画: 主要な販売先ごとの売上計画。
7. 一般費及び販売管理費計画: 人件費以外の販管費の詳細計画。
8. 製造原価計画: 製造業の場合の原価計算に基づく計画。
9. PL計画(損益計算書計画): 将来の損益状況の予測。
10. 金融支援計画: 金融機関からの借入金の返済計画や追加融資の要請など。
11. タックス(税金)計画: 法人税等の納税額の見込み。
12. BS計画(貸借対照表計画): 将来の資産・負債・純資産の状態予測。
13. 不良資産回収計画: 不良債権や遊休資産の処分・回収計画。
14. CF計画(キャッシュフロー計算書計画): 将来の現金の増減予測。

(上記リストは、計画策定時のチェックリストとしても活用できます)

特に重要な計画:PL計画・BS計画・CF計画

会社経営の観点からは、上記リストの中でも特に ⑨PL計画、⑫BS計画、⑭CF計画 が中心となります。これらは「財務三表」と呼ばれ、会社の収益性、安全性、資金繰りの状況を総合的に示すため、経営判断の根幹となる計画です。他の①~⑧、⑩、⑪、⑬は、これら主要計画を作成するための重要な構成要素(材料)となります。

金融機関にとっての最重要項目:金融支援計画

一方、金融機関の立場から最も重要視されるのは ⑩金融支援計画 です。ここには、既存借入金の返済スケジュール変更(リスケジュール)の内容や、必要に応じた新規融資の依頼などが具体的に記載されます。この計画の妥当性が、金融支援を得られるかどうかを大きく左右します。

計画期間について(短期・中期・長期)

経営再建計画の期間は、会社の状況や再建に必要な期間に応じて設定されます。一般的には、3年程度の短期計画、5年程度の中期計画、場合によっては10年程度の長期計画が策定されます。

 

アクションプランと数値計画、どちらから着手すべきか?

アクションプラン(行動)があって、その結果として数値計画(結果)がある、と考えると、アクションプランを先に作るのが自然に思えます。しかし、多くの経営再建支援の経験からは、逆のアプローチが有効であることが分かっています。

結論:数値計画先行が効果的な理由

結論から言うと、まず詳細な数値計画(特にPL・BS・CF計画)を作り込むことから始める方が、最終的に精度の高い、実行可能な経営再建計画書を作成しやすい傾向があります。

数値目標から具体的な行動(アクションプラン)を導き出す

なぜなら、「将来、これだけの利益を出し、これだけのキャッシュフローを生み出し、財務体質をここまで改善する」という具体的な数値目標を設定し、それを達成するためには「何をすべきか」を逆算して考えることで、アクションプランがより具体的かつ現実的なものになるからです。数値計画を作り込む過程で、「この目標を達成するには、あのコストをこれだけ削減する必要がある」「この売上目標には、あの新規事業の立ち上げが不可欠だ」といった、必要なアクションが明確に浮かび上がってくるのです。

「良い」アクションプランと数値計画の条件とは?

優れたアクションプランと数値計画は、関係者の立場によって評価のポイントが異なりますが、共通して求められるのは**「信頼性」と「実行可能性」**です。

経営者にとって:希望と実行意欲が湧く計画

・会社の将来に展望が持て、経営再建へのモチベーションが高まる内容であること。
・実現可能な目標設定と、それを達成するための具体的な道筋が示されていること。

金融機関にとって:根拠があり、信頼できる計画

・数値計画の算出根拠が明確で、アクションプランと整合性が取れていること。
・計画全体が合理的であり、過度な楽観論に陥っていないこと。
・融資回収(返済)の道筋が具体的に示されており、実現可能性が高いと判断できること。

支援専門家(中小企業活性化協議会など)にとって:関係者が納得し、実行可能な計画

・経営者が「腹落ち」し、主体的に取り組む意欲を持っていること。
・金融機関が計画の合理性・実現可能性を納得できる内容であること。
・中小企業活性化協議会などの公的支援機関が関与する場合、その要件を満たし、関係者の合意形成が可能な計画であること。

計画策定のサポートと情報収集

自社だけで精緻なアクションプランと数値計画を作成するのが難しい場合、外部の専門家や公的支援制度を活用することも有効な手段です。

・中小企業活性化協議会: 全国に設置されており、経営再建計画書の策定支援や金融機関との目線合わせなどをサポートしてくれます。
・経営改善計画策定支援事業(通称:405事業): 専門家への計画策定費用の補助を受けられる制度です。経営改善計画の第一歩として活用できます。

また、「経営再建計画書 書き方」で検索したり、サンプルやテンプレートを探したりすることも参考になりますが、それらはあくまで雛形です。自社の実態に基づいた、オーダーメイドの計画を作成することが最も重要である点に留意が必要です。

[関連情報:中小企業活性化協議会への相談メリットとプロセス]
[関連情報:405事業(経営改善計画策定支援)の概要と活用法]

まとめ:実行可能な計画で経営再建を軌道に乗せる

経営再建計画書の後半部分を構成する「アクションプランと数値計画」は、事業デューデリで明らかになった課題に対する具体的な処方箋であり、再生への道筋を示す設計図です。

・アクションプラン: 課題解決のための具体的な行動とスケジュール
・数値計画: アクションプラン実行後の財務的成果を示す予測

質の高い事業デューデリを前提に、実現可能な数値目標を設定し、それを達成するための具体的なアクションプランに落とし込むこと。そして、その計画が金融機関を含むすべての関係者にとって合理的で信頼できるものであること。これらが、経営再建を成功に導く計画書作成の鍵となります。

次回からは、数値計画の各論(減価償却と投資計画など)について、さらに詳しく解説していきます。

 

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