「担当している融資先の業績が悪化しているが、どう支援すれば…」
「経営改善計画の策定支援が必要だが、銀行側の負担が大きい…」
「405事業という制度があるのは知っているが、銀行にとって具体的にどんなメリットがある?」
融資先である中小企業の経営改善支援は、銀行にとって重要な役割ですが、その実行には多大な労力と時間を要します。特に、本格的な経営改善計画の策定とその後のモニタリングは、現場の銀行担当者にとって大きな負担となりがちです。
そこで活用したいのが、405事業(正式名称:経営改善計画策定支援事業)です。この制度は、経営改善に取り組む中小企業だけでなく、支援する側の銀行にとっても大きなメリット(「405事業 銀行メリット」)をもたらす可能性を秘めています。
しかし、そのメリットや活用上の注意点を十分に理解している銀行員の方は、まだ多くないかもしれません。この記事では、中小企業支援の専門家として、405事業の概要を振り返りつつ、特に銀行側の視点から見た具体的なメリット、そして制度を有効活用し、融資先の格付け改善(「405事業 融資 ランクアップ」)や自行の収益貢献に繋げるための注意点と対策について解説します。
【目次】
まず、405事業の基本的な仕組みを簡単に確認しましょう。
目的と仕組み:専門家・企業・銀行の三者連携
405事業は、財務上の課題を抱える中小企業が、国から認定された専門家(認定経営革新等支援機関、以下「認定支援機関」)のサポートを受け、銀行などの金融機関との合意形成を図りながら、実現可能性の高い経営改善計画を策定・実行することを支援する制度です。
特徴は、事業者・金融機関(主にメインバンク)・認定支援機関の三者が連携して申請・実行する点、そして専門家費用の最大2/3が補助される点、計画策定後の3年間のモニタリングが原則セットになっている点です。
[参照リンク:中小企業庁 経営改善計画策定支援事業ページ]
この405事業、実は支援を受ける企業だけでなく、銀行にとっても以下のような実利的なメリット(405事業 銀行メリット)があります。
① 経営改善計画策定・モニタリング負担の軽減
通常、銀行が主導して経営改善計画策定を支援する場合、現状分析から計画作成、関係機関調整、モニタリングまで、担当者には多大な時間と労力がかかります。405事業を活用すれば、計画策定とモニタリングの主たる役割を認定支援機関(外部専門家)が担うため、銀行担当者の実務負担を大幅に軽減できます。専門家からの客観的なモニタリング報告書は、融資先の状況把握にも役立ちます。
② 融資判断・方針決定の円滑化
認定支援機関が関与し、客観的な分析に基づいて策定された経営改善計画は、その実現可能性や信頼性が高まります。 これにより、銀行内部(本部審査部や再生支援担当部署など)での融資判断(リスケジュールや新規融資の可否)や、当該企業に対する支援方針の決定がスムーズに進みやすくなります。
③ 融資先の格付け改善(ランクアップ)と引当金メリット (405事業 融資 ランクアップ)
これが銀行にとって最も直接的な財務メリットと言えるかもしれません。405事業を通じて経営改善計画が策定され、金融支援が行われ、実際に企業の業績が回復に向かえば、当該企業の債務者区分(信用格付け)が改善(ランクアップ)します。
債務者区分のランクアップは、銀行がその企業に対して積む必要のある貸倒引当金の額を減少させます。これにより、引当金の戻し入れ益が発生し、銀行の収益向上に直接貢献するのです。「405事業 融資 ランクアップ」は、銀行の収益改善にも繋がる可能性があります。
④ 金融庁方針への適合(コンサルティング機能発揮)
金融庁は、銀行に対して単なる資金供給者としてだけでなく、取引先の経営課題解決に貢献する**「コンサルティング機能」の発揮**(リレーションシップバンキングの深化)を求めています。405事業の活用は、まさにこの方針に合致する具体的な取り組みであり、銀行の社会的役割を示すことにも繋がります。
⑤ 取引先満足度の向上とリレーション強化
苦しい状況にある融資先企業に対し、405事業のような具体的な改善支援スキームを提案し、専門家と連携して再生をサポートすることは、企業からの深い感謝と信頼に繋がります。経営改善が成功すれば、その企業との長期的で強固なリレーションシップを築くことができます。
⑥ 通年利用可能で柔軟な活用
多くの補助金と異なり、405事業は基本的に年間を通じて申請可能です。そのため、融資先の状況やタイミングに合わせて、柔軟に活用を検討できる点もメリットです。
多くのメリットがある405事業ですが、銀行として活用を推進する際には、以下の点に注意しないと、かえって手間が増えたり、期待した効果が得られなかったりする可能性があります。
注意点①:対象企業の選定(再生可能性の見極め)【最重要】
これが最も重要です。 405事業は、あくまで「改善計画」を策定する支援です。そもそも事業の存続可能性(商品・サービスの競争力、市場、経営者の資質など)が著しく低い企業に対して適用しても、計画が絵に描いた餅となり、時間とコスト(補助金含む)が無駄になります。 銀行としては、**405事業の提案前に、当該企業の再生可能性を冷静に見極める「目利き」**が不可欠です。「とりあえず計画を作らせる」という姿勢は避けるべきです。
[関連記事:銀行目線|事業再生支援を受ける企業の条件]
注意点②:事業者の費用負担とコミットメント確認
事業者には費用の1/3負担が発生します。経営不振の企業にとっては小さくない負担です。費用負担への理解はもちろんのこと、それ以上に、計画策定とその後の実行に対する経営者自身の強い意志(コミットメント)があるかを、事前に確認することが重要です。「銀行に言われたから仕方なくやる」という姿勢では、成功はおぼつきません。
注意点③:認定支援機関(専門家)の選定・能力確認【最重要】
405事業の成否は、連携する認定支援機関の力量に大きく左右されます。 ここが最大の落とし穴となり得ます。
・経験不足の専門家: 事業者が懇意にしているという理由だけで、銀行向けの経営改善計画策定や金融機関交渉の経験が乏しい専門家(例:税務専門の税理士など)を選んでしまうと、銀行が求める水準の計画が出てこない可能性があります。
・客観性の欠如: 特に顧問税理士の場合、過去の決算内容を客観的に否定しにくい(自己否定につながる)側面があり、財務デューデリジェンス(資産査定等)が甘くなるリスクがあります。
・結果: 計画の作り直しや専門家の変更が必要となり、大幅な時間ロスと関係者の不信感に繋がります。
銀行としては、安易に事業者が連れてきた専門家を受け入れるのではなく、その専門家が本当に銀行向けの経営改善計画を策定できる能力と経験を持っているか、事前にしっかりと見極める(面談、実績確認など)ことが極めて重要です。
[関連記事:【405事業徹底解説】デメリットと失敗しない活用法]
[関連記事:粉飾決算と税理士。責任と注意点を解説]
上記の注意点を踏まえ、銀行として405事業を成功に導くためには、以下の対策が考えられます。
1. 事前の目利きと事業者への動機づけ: 再生可能性を慎重に評価し、対象企業を選定する。事業者自身に計画策定・実行の必要性とメリットを理解させ、主体的な取り組みを促す。
2. 認定支援機関との事前連携・情報共有: 事業者が希望する認定支援機関、あるいは銀行が推奨する認定支援機関と、申請前に面談し、計画策定方針、進め方、実績などを確認し、目線合わせを行う。
3. 必要であれば専門家の変更助言も: 事前確認の結果、能力や経験に不安がある場合は、事業者に対して他の適切な専門家を探すよう、あるいは銀行として推奨できる専門家をリストアップするなどの助言を行う。初期段階での適切な専門家選びが、後のトラブルを防ぎます。
4. 行内連携の強化(本部・支店): 計画策定支援からその後の金融支援に至るまで、支店と本部(審査部、企業支援部署など)が連携し、一貫した方針で臨む体制を構築する。
5. 日頃からの専門家ネットワーク構築: 地域で活躍する、経営改善計画策定や銀行交渉に長けた認定支援機関とのネットワークを日頃から構築しておく。
405事業は、単に経営不振企業の計画策定費用を補助する制度ではありません。銀行にとっては、
・担当者の負担軽減
・融資判断の精度向上
・融資先の格付け改善(ランクアップ)による引当金メリット
・金融庁方針への適合
・顧客満足度向上とリレーション強化
といった、多くの戦略的なメリット(405事業 銀行メリット)をもたらす可能性のあるツールです。
ただし、その効果を最大限に引き出すためには、対象企業の慎重な選定と、連携する認定支援機関の能力を厳格に見極めるという、銀行自身の主体的な関与が不可欠です。
ぜひ、405事業のメリットと注意点を正しく理解し、融資先支援、そして自行の健全性向上に戦略的に活用していくことをご検討ください。
当事務所では、405事業の活用に関する金融機関様、事業者様双方からのご相談(無料事前相談)も承っております。お気軽にお問い合わせください。
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