【この記事で分かること】
・ 現預金が増加する理由
・ 現預金が減少する理由
・ 経営者が自社現預金の動きを見るときのポイント
【目次】
経営者の皆さん、
自社の決算書が出来上がったら、どこを確認していますか?
売上、最終利益などは、しっかりチェックしていると思います。
前年度の数値と比較して、昨対比良かった、悪かったと、確認しているのではないでしょうか?期初に立てた数値計画との差異を確認しているかもしれません。
支払法人税額も気になりますよね。
今日はまた違った観点から、決算書の見方を説明します。
「現預金の増減から会社の現状を把握する」という方法です。
中小企業の場合は特に、業績が悪ければ現預金がほぼゼロに近づくなど、現預金残高が業績と深くかかわっていることが多々あります。
現預金とは、貸借対照表の左上にある、現金と預金の合計額のことです。
もし会社で資金繰り表を作成しているなら、期末の翌月繰越金と決算書の現預金額は、同額であるはずです。
現預金には、現金、普通預金、当座預金、定期預金、積立預金、などがあります。
現預金勘定がマイナスになっていることがありますが、これは当座預金に貸越をセットする「当座貸越」を使用していることで、合計がマイナスになっているためです。
【参考記事】現預金とは。~決算書にあるのに、手元にお金がないわけ~
現預金勘定の見方のポイントは、時系列でみることです。
試しに、過去5ヵ年の自社決算書の現預金残高を並べてみてください(その際に、特に現金は本当にその金額存在したのか確認する。なかったなら正しい金額に補正してください)。
どうなっています?増加傾向ですか?減少傾向ですか?ほとんど同額推移ですか?
そしてその金額の下に、その期に起こった主な出来事を記載してみてください。
例えば、今期の現預金残高が2,000万円だとして、3年前の残高が4,000万円だったら、3年間で2,000万円減少していることになります。
そこで、先ほど記載した会社の主な出来事と見比べてみます。
取引先の減少、主力商品の販売不振、気候や外部環境の変化、競合店舗の近隣への進出、業界での法令の変更、幹部社員の退職など、、、。
過去3年間で、何か現預金の減少につながるマイナスの出来事がなかったでしょうか?
逆に、業績は好調(毎年黒字計上)なのに現預金が減少しているのは、売上の急増で運転資金が増加した、成長のための設備投資に自己資金を投入した、利益額以上に銀行借入金を返済し有利子負債を圧縮した、などの原因があります。(ちなみに、利益が出ているのに、現預金が横這いで増えないのは、原因の一つとして、現預金が銀行借入金の元金返済に回っているからです)。
ただし、気を付けたいのは、決算書の表面上黒字になっていても、在庫が膨らんだり、大口の売掛金の回収が遅れていたり、、、。すると、現預金は減少することです。
このように、現預金減少には、良いタイプ(成長の設備投資、負債圧縮、売上増加)と、悪いタイプ(不良資産の増加、本業の業績悪化)があります。
例えば、今期の現預金残高が2,000万円だとして、3年前の残高が500万円だったら、3年間で1,500万円増加していることになります。
そこで、先ほど記載した会社の主な出来事と見比べてみます。
取引先の増加、主力商品の販売好調、気候による特需や外部環境の変化、ライバルの廃業、マスコミで大々的に取り上げられた、、、。
過去3年間で、何か現預金の増加につながるプラスな出来事があったはずです。
逆に、業績は横ばいもしくは下降気味なのに、現預金が増加しているのは、役員が会社に私財を投入した、会社の資産を売却して現金を捻出した、銀行から借入を行った、などの原因があります。
このように、現預金増加には、良いタイプ(本業が好調で増加)と、悪いタイプ(私財の投入や借入増加)があります。
【関連記事】赤字なのにお金が増えた?不思議な現象の原因は、こちらの記事でチェック☟
赤字なのにお金が増えた?~そのとき会社に何が起こっているか~
現金の話をします。
決算のとき、手元に現金がないのに、数字上は現金が多額である、、、。
不思議な現象ですが、よくあるケースです。
理由は、この記事に譲りますが、一言でいうと、「過去の赤字が、現金(架空)に姿を変えている」ということです。
このままではまずいので、あなたは減らす方法を探します。
決算で現金を減らす方法。今日は2種類お話しします。
【例】決算数値と現金有高に差異が300万円ある(現金が300万円足りない)
①役員借入金と相殺する
役員借入金は、あなたが会社に貸しているお金です。役員借入金の300万円と現金の300万円を相殺します。
(仕訳)
(借方) (貸方)
役員借入金300万円(負債の減少) 現金300万円(資産の減少)
これで実際の現金残高と現金数値が合致します。
ただし、会社に貸していた300万円はなくなるため、あなたに返ってきません。
②役員が会社にお金を貸して運転資金として使う
結果的には①と同じですが、この場合は、実際にお金を個人的に300万円用意します。役員借入金が300万円増えます。次に現金勘定を役員貸付金勘定(役員借入金ではないことに注意!)に振り替えます。そして役員貸付金と役員借入金を相殺します。以下の通り、一連の流れで、現金が300万円減ります。
(仕訳)
【ステップ1】現金を役員貸付金に振り替える
(借方) (貸方)
役員貸付金300万円(資産の増加) 現金300万円(資産の減少)
☟
【ステップ2】個人預金を会社に投入する
(借方) (貸方)
普通預金300万円(資産の増加) 役員借入金300万円(負債の増加)
☟
【ステップ3】役員借入金で役員貸付金を相殺する
(借方) (貸方)
役員借入金300万円(負債の減少) 役員貸付金300万円(資産の減少)
☟
【ステップ4】口座に入ったお金(個人預金)を買掛金の支払いに充てる
(借方) (貸方)
買掛金支払300万円(負債の減少) 普通預金300万円(資産の減少)
別にすぐ使う必要はないのですが、いずれ口座から使用されるでしょう。
このような2つの方法により、現金が減ることで、決算数値と現金有高が合致し、つじつまが合います。
※お断り これは一例ですので、実際の財務処理は顧問税理士と相談のうえ、ご対応ください。※
あと、これは個人的な考えですが、業績好調な企業でかつ銀行からの有利子負債(銀行借入金)が少ない企業は、あまり節税意識を持つ必要がない、と思います。
仮に有利子負債が多額であれば、税金によるキャッシュアウトを防ぎながら、できるだけ借入元本返済に充当させ、財務の安全性を高めるのは大切なことです。
一方で、有利子負債が少なく業績も好調な企業が、法人税を減少させるため、決算期末に、不要な保険加入やリース契約、損金で落とすための過度な設備投資をすることがあります。
これらはほとんど、現預金の減少を引き起こし、将来的な資金繰りを窮屈にします。
それよりも、儲けさせてもらった社会に、利益の一部分(利益額の30%程度)を法人税として納めて還元します。利益の70%は手元資金として残ります(銀行借入がなければ)し、結果、財務の健全性も高まり、資金繰りも安定化していきます。
以上見てきたように、現預金残高を時系列で見ていくことで、自社の本来の姿・実力が見えてきます。
表面上は利益が出ていても、本当の業績は悪化している可能性だってあります。現預金の推移を見て気づくことができます。
なぜ、現預金は減ったのか、増えたのか、、、。それは会社にとって良いことなのか、悪いことなのか、、、。確認して、考えて、理解する習慣が大切です。
経営者の皆さん、今後決算書が出来上がったら、現預金を確認してください。そして自社の現預金の動きを、時系列でチェックしてみてください。
自社の決算内容は客観的にどうなのか、どこを改善すれば良いのか、分からないことがあれば、下記メール連絡フォームからご連絡ください。
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