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減価償却と設備投資計画の作り方:アクションプランと数値計画|経営危機を乗り越える!経営再建計画の作り方|⑨

経営再建計画書の策定において、「アクションプランと数値計画」は再生への具体的な道筋を示す心臓部です。その中でも、将来の損益(PL)やキャッシュフロー(CF)に大きな影響を与える「減価償却費」と「設備投資計画」は、数値計画全体の基礎となる重要な要素です。

この記事では、経営再建計画書におけるアクションプランと数値計画の一部として、「減価償却費と設備投資計画」をどのように策定していくのか、その具体的な手順とポイントを、経営者、従業員、そして金融機関関係者など、幅広い読者に向けて解説します。

減価償却と設備投資

なぜ最初に減価償却・設備投資計画から着手するのか?

数値計画の作成は多岐にわたり、どこから手をつけるべきか迷うかもしれません。多くの場合、まず「減価償却費と設備投資計画」から着手することが推奨されます。その理由は以下の通りです。

・数値計画全体の基礎となる: 減価償却費はPL計画の重要なコスト要素であり、設備投資はCF計画やBS計画に直接影響します。これらの数値を早期に固めることで、他の計画策定がスムーズに進みます。

・将来の損益(PL)とキャッシュフロー(CF)への影響が大きい: 減価償却費は固定費の主要項目の一つであり、設備投資は多額の資金流出を伴うため、将来の収益性や資金繰りを大きく左右します。

・事業デューデリとの連携: 事業デューデリで特定された経営課題(例:設備の老朽化、生産性の低さ)に対する具体的な解決策としての設備投資を計画に落とし込む最初のステップとなります。

計画策定の準備:必要な情報とフォーマット例

計画策定にあたっては、まず必要な情報を揃え、計画を整理するためのフォーマットを用意します。

準備するもの:直近の決算書等
・直近の決算報告書: 特に固定資産の状況がわかる書類が必要です。
・固定資産台帳: 個別の資産情報(取得価額、耐用年数、期首簿価など)が記載されています。
・法人税申告書別表十六(一)、(二)「減価償却資産の償却額に関する明細書」: 当期の償却限度額や期末簿価などが記載されており、検証に役立ちます。
・事業デューデリの結果: 設備投資の必要性に関する分析・検討結果。

フォーマット例:「減価償却明細と設備投資計画」表の構造解説

下図で示されているような一覧表形式のフォーマットを活用すると、計画の整理と計算が効率的に進みます。以下にその基本的な構造を説明します(図表をご参照ください:クリックで拡大します。印刷して手元に置くと、より分かりやすいです)。

減価償却明細と設備投資計画

・行(縦軸): 個別の減価償却資産(既存資産:建物、機械、車両など)および計画期間中に新規に投資予定の資産をリストアップします。
・列(横軸):
・資産の基本情報(取得価額、耐用年数など ※参考情報として)
・直近実績期(前期)の期首簿価
・平均償却率(後述)
・計画0年目(当期): 期首簿価、当期償却額(計算)、期末簿価(計算)
・計画1年目~計画X年目(例:5ヵ年計画なら1~5年目): 各年度の期首簿価、当期償却額(計算)、期末簿価(計算)
・設備投資計画欄: 各年度に予定している新規投資額を記載します。

このようなフォーマットを用いることで、既存資産の減価償却費の推移と、新規投資による資産増減および償却費の発生を一覧で管理できます。

ステップ別解説:減価償却費の計算手順

フォーマットに沿って、計画期間中の減価償却費を計算していきます。

ステップ1:平均償却率の算出(実績ベース)

まず、既存資産全体のおおよその償却ペースを把握するために「平均償却率」を計算します。(フォーマット例①の部分)
平均償却率 = 直近実績期の償却限度額 ÷ 直近実績期の期首簿価合計
※償却限度額は、決算書(別表十六など)から把握します。
※これはあくまで簡便的な計算方法であり、より正確には個別資産ごとに償却計算を行います。

ステップ2:計画期間中の既存資産の減価償却費と期末簿価の計算

次に、計画期間の各年度について、既存資産の減価償却費と期末簿価を計算します。
・計画0年目(当期)の計算:
・0年目償却額(フォーマット例③) = 0年目期首簿価 × 平均償却率(または個別償却率)
・1年目期首簿価(=0年目期末簿価、フォーマット例④) = 0年目期首簿価 – 0年目償却額
※「0年目」は計画策定中の当期を指し、「実績」は前期を指します。当期の数値はまだ確定していないため、このように計算で見込み額を出します。

・計画1年目以降の計算:
・N年目償却額 = N年目期首簿価 × 平均償却率(または個別償却率)
・(N+1)年目期首簿価(=N年目期末簿価) = N年目期首簿価 – N年目償却額
これを計画最終年度まで繰り返します。

ステップ3:計画期間全体の減価償却費合計の算出(PL計画への連携)

各年度の償却額(既存資産分+新規投資資産分(後述))を合計します。(フォーマット例⑤の部分)

この年度別減価償却費合計額が、後ほど作成する**PL計画(損益計算書計画)**の販売費及び一般管理費、または製造原価の計算根拠となります。

ステップ別解説:設備投資計画の策定と反映

減価償却費と並行して、将来の設備投資計画を策定し、フォーマットに反映させます。

事業デューデリの結果を反映:必要な投資を特定

設備投資計画は、単なる願望ではなく、事業デューデリで明らかになった経営課題の解決や、将来の成長戦略に基づいて策定されるべきです。

・老朽化設備の更新: 生産効率の低下や故障リスクに対応するための投資。

・生産性向上投資: 新技術導入によるコスト削減や品質向上、リードタイム短縮を目指す投資。

・新規事業・新商品開発投資: 新たな収益源確保のための投資。

・省力化・自動化投資: 人手不足対策や労務コスト削減のための投資。

・環境対応・規制対応投資: 法規制遵守やCSR(企業の社会的責任)の観点からの投資。

これらの必要性を事業デューデリの結果を踏まえて判断し、投資の優先順位をつけます。

投資内容・時期・金額の決定とフォーマットへの記載

特定された必要な投資について、具体的な内容(何の設備か)、投資を実行する時期(計画何年目か)、そして必要な金額を決定し、フォーマットの該当年度の設備投資計画欄に記載します。(フォーマット例⑦の部分)

新規投資資産の減価償却費計算と反映

設備投資計画に基づき、新たに取得する資産についても、取得年度の翌年度以降、減価償却費が発生します。取得価額、耐用年数、償却方法に基づき、新規資産の減価償却費を計算し、ステップ3で算出した年度別減価償却費合計に加算します。

作成した計画の活用:他の数値計画への連携

この「減価償却明細と設備投資計画」で作成された数値は、経営再建計画書の他の重要な数値計画に以下のように連携していきます。

・年度別減価償却費合計 → PL計画(損益計算書計画)へ: 販売費及び一般管理費、または製造業の場合は製造原価に計上されます。

・年度別期末簿価合計 → BS計画(貸借対照表計画)へ: 固定資産(有形・無形)の部の計算根拠となります。

・年度別設備投資額 → CF計画(キャッシュフロー計算書計画)へ: 投資活動によるキャッシュフローのマイナス要因として計上されます。

・設備投資に伴う借入 → 金融支援計画・BS計画・CF計画へ: 投資資金を借入で賄う場合、借入金の増加(BS)、元利金返済(CF、金融支援計画)、支払利息(PL)として各計画に反映されます。

このように、この計画は数値計画全体の起点となる非常に重要なパートです。

計画策定上の留意点と支援制度の活用

計画策定にあたっては、以下の点に留意が必要です。

過剰投資のリスクと実態バランスシートへの影響

経営再建局面においては、資金繰りが厳しいことが多く、過剰な設備投資は財務状況をさらに悪化させるリスクがあります。過去の投資が実態バランスシート上の過大な有利子負債や資産の含み損に繋がっていないかを確認し、新規投資は費用対効果を慎重に見極める必要があります。

金融機関への説明責任(経営再建計画書 金融機関)

特に多額の設備投資を計画に盛り込む場合、金融機関はその必要性、投資効果、資金調達方法(自己資金、借入)について詳細な説明を求めます。経営再建計画書において、なぜその投資が必要で、それによって収益性がどう改善するのかを合理的かつ具体的に説明できなければ、金融機関の理解や支援を得ることは困難です。

中小企業活性化協議会や経営改善計画策定支援事業(405事業)の活用

自社だけで精緻な投資計画や資金繰り計画を策定するのが難しい場合、中小企業活性化協議会に相談することで、専門家によるアドバイスや計画策定支援を受けられる場合があります。また、**経営改善計画策定支援事業(405事業)**を活用すれば、専門家への計画策定費用の一部補助を受けることも可能です。これらの支援機関を活用する場合でも、実現可能な根拠のある投資計画を示すことが求められます。

[関連情報:中小企業活性化協議会とは?]
[関連情報:経営改善計画策定支援事業(405事業)の概要]

経営再建計画書 書き方における位置づけ

「減価償却費と設備投資計画」は、経営再建計画書全体の書き方の中でも、数値計画の根幹をなす部分です。インターネット上で見つかるサンプルやテンプレートを参考にすることは有効ですが、必ず自社の実態(保有資産、デューデリ結果、投資ニーズ)に合わせてカスタマイズし、具体的で根拠のある計画を作成することが不可欠です。

まとめ:着実な計画で将来の財務基盤を築く

「減価償却費と設備投資計画」の策定は、経営再建計画における数値計画作成の第一歩であり、計画全体の信頼性と実現可能性を左右する重要なプロセスです。

・事業デューデリの結果に基づき、必要な設備投資を計画に落とし込む。

・正確な減価償却費計算を行い、将来の損益への影響を把握する。

・他の数値計画(PL・BS・CF)との連動を意識する。

・金融機関等への説明責任を果たせる、根拠のある計画を作成する。

この計画を着実に作成することで、経営再建後の安定した財務基盤を築くための礎となります。

次回は、アクションプランと数値計画の次のステップ、「リース支払計画」について解説していきます。

 

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