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【決算書 赤字の見方】どこを見る?損益計算書4つの赤字の意味と深刻度(2025年版)

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「決算書が赤字だった…これはまずい状況なのだろうか?」

「一口に赤字と言っても種類があるらしいけど、どう違うの?」

「決算書の赤字について、どこを見れば深刻度がわかる?」

年に一度、会社の健康診断書とも言える決算書。その中でも損益計算書を見て、「赤字」という結果にショックを受ける経営者の方は少なくありません。しかし、決算書に記載される赤字にはいくつかの種類があり、それぞれ意味合いや深刻度が異なります。

この記事では、中小企業支援の現場に立つ経営コンサルタントとして、「決算書 赤字 見方」の基本、特に損益計算書に登場する4種類の赤字について、「決算書 赤字 どこを見る」べきか、それぞれの意味、深刻度、そして銀行がどのように見ているのかを分かりやすく解説します。

赤字とは何かを示すイメージ

損益計算書とは?4つの利益(赤字)を理解する準備

まず、赤字の種類を理解するために、損益計算書(P/L)の基本的な構造をおさらいしましょう。損益計算書は、会社の「儲け」が段階的に計算される構造になっています。

(図表イメージ:損益計算書の簡易構造図)

売上高
– 売上原価
——————
売上総利益(粗利) ← ①
– 販売費及び一般管理費 (販管費)
——————
営業利益 ← ② 本業の儲け
+ 営業外収益
– 営業外費用 (支払利息など)
——————
経常利益 ← ③ 会社全体の経常的な儲け
+ 特別利益
– 特別損失
——————
税引前当期純利益 ← ④
– 法人税等
——————
当期純利益 ← 最終的な儲け

この①~④(場合によっては最終的な当期純利益も)がマイナスになる状態が、それぞれ「赤字」です。番号が小さいほど、事業の根幹に近い部分での赤字であり、深刻度が高いと言えます。

① 売上総利益の赤字:最も深刻な「原価割れ」状態

・定義と計算式: 売上総利益 = 売上高 – 売上原価
‣ 売上原価とは、売れた商品の仕入代金や、製品の製造にかかった直接的な費用(材料費、製造ラインの人件費、外注費など)です。

・決算書 赤字 どこを見る?: 損益計算書の上部にある「売上総利益」の欄がマイナスになっていないか。

・意味と深刻度: これは、**商品を売っても、その仕入代金や製造コストすら回収できていない「原価割れ」**の状態を意味します。極めて深刻で、ビジネスモデルそのものが破綻している可能性が高いです。例えば、過剰な値引き販売や、想定以上の原価高騰などが原因で発生します。この状態が続けば、事業継続は極めて困難です。

・銀行の視点: 最も危険視する赤字です。事業の存続可能性そのものに強い疑問符がつきます。追加融資は絶望的と言えるでしょう。

② 営業利益の赤字:本業が赤字の状態

・定義と計算式: 営業利益 = 売上総利益 – 販売費及び一般管理費(販管費)
‣ 販管費とは、商品を販売するため、また会社全体を管理するためにかかる費用(役員報酬含む人件費、事務所家賃、広告宣伝費、交通費、通信費など)です。

・決算書 赤字 どこを見る?: 損益計算書の中ほどにある「営業利益」の欄がマイナスになっていないか。(損益計算書 赤字として最初に注目されやすい項目の一つ)

・意味と深刻度: これは、**「本業の事業活動で利益を出せていない」**状態です。つまり、粗利は出ているものの、販管費(給料や家賃など)を賄いきれていないということです。経営者自身の役員報酬も、本業の儲けからは捻出できていない計算になります。売上減少、粗利率低下、販管費増加など、原因を早急に特定し、対策を打つ必要があります。

・銀行の視点: 本業の収益力に問題があると判断します。原因の究明と具体的な改善策の提示を強く求められます。改善が見込めなければ、追加融資は難しくなります。

[関連記事:営業利益マイナスは放置厳禁!その理由と具体的な改善策を徹底解説]
[関連記事:営業赤字からの脱却|コスト削減シートで会社を再建する方法]

③ 経常利益の赤字:財務活動含めた経常的な赤字

・定義と計算式: 経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 – 営業外費用
営業外収益・費用とは、本業以外で経常的に発生する収益・費用です。代表的なものに、受取利息(営業外収益)や**支払利息(営業外費用)**があります。

・決算書 赤字 どこを見る?: 損益計算書の中ほどにある「経常利益」の欄がマイナスになっていないか。

・意味と深刻度: 営業利益が黒字でも、経常利益が赤字になる場合があります。これは多くの場合、**「本業の儲け(営業利益)で、借入金の利息(支払利息)を賄いきれていない」**ことを意味します。財務内容(借入金の多さや金利負担の重さ)に問題がある可能性を示唆します。

・銀行の視点: 銀行が特に問題視する赤字の一つです。銀行にとって利息は重要な収益源であり、それを本業の利益から支払えない状態は、貸出先としてリスクが高いと判断されます。利息を支払うために、さらなる借入が必要になる悪循環に陥りやすく、追加融資のハードルは非常に高くなります。 ただし、一時的な多額の役員退職金支払いなどが営業外費用に含まれ赤字になった場合は、事情を説明すれば理解されることもあります。

④ 税引前当期純利益(又は当期純利益)の赤字:最終赤字

・定義と計算式:
‣ 税引前当期純利益 = 経常利益 + 特別利益 – 特別損失
‣ 当期純利益 = 税引前当期純利益 – 法人税等
‣ 特別利益・損失とは、その期だけの特別な要因で発生した利益・損失です。例:固定資産(土地、建物、機械など)の売却損益、災害損失、リストラ費用など。

・決算書 赤字 どこを見る?: 損益計算書の下部にある「税引前当期純利益」や最終行の「当期純利益」がマイナスになっていないか。

・意味と深刻度: 経常利益までは黒字だったのに、最終的に赤字になる場合は、**「一時的な特別損失が大きかった」**ことが主な原因です。事業の経常的な収益力に問題があるわけではないため、上記①~③の赤字に比べると、深刻度は低いと見なされることが多いです。

・銀行の視点: 経常利益が黒字であれば、この段階での赤字は比較的軽視される傾向にあります。特別損失が一過性のものであれば、来期以降は黒字化すると期待されるためです。ただし、赤字の原因(特別損失の内容)は必ず確認されます。 例えば、固定資産除却損などが多額に計上されている場合、過去の設備投資判断の失敗を示す可能性もあります。また、結果的に法人税を納めていない状態が続くことは、社会貢献度の観点からは望ましくありません。

(図表イメージ:4つの赤字の深刻度比較)

深刻度 大 <—————————————————-> 深刻度 小
売上総利益赤字 > 営業利益赤字 > 経常利益赤字 > 税引前(当期)純利益赤字
(原価割れ)    (本業赤字)   (利息払えず)   (特別損失等)

 

【要注意】決算書上は黒字でも「実質赤字」のケース

決算書(損益計算書)の最終利益が黒字であっても、安心はできません。以下のような場合、実態としては赤字同然、あるいはそれに近い状態(実質赤字)の可能性があります。

・回収不能な売掛金: 売上には計上されているが、実際には回収見込みのない売掛金が多額に含まれている。
・陳腐化した在庫: 決算書に資産として計上されている在庫の多くが、実際には価値のない不良在庫である。
・使途不明な支出: 役員への不明瞭な貸付金など、実質的に会社に戻らない可能性の高い支出が資産計上されている。

これらの「実質赤字」を見抜くためには、損益計算書だけでなく、貸借対照表の資産内容を精査したり、キャッシュフロー計算書でお金の流れを確認したりする必要があります。

[関連記事:決算書の見方 – 資産超過でも安心できない?実質債務超過とは]
[関連記事:現預金はなぜ増減する?決算書から会社の健康状態を読む]

決算書の赤字への対処法:放置は絶対NG

これまで見てきたように、決算書に記載される赤字は、その種類によって深刻度は異なります。しかし、どの段階の赤字であっても、会社のどこかに問題があることを示すサインであり、決して放置してはいけません。

早期の原因分析

決算書 赤字 見方」で重要なのは、どの段階で赤字になっているかを把握した後、「なぜ赤字になったのか?」という原因を速やかに、かつ正確に分析することです。売上の問題か、原価の問題か、経費の問題か、財務の問題か、あるいは一時的な要因なのか。

具体的な改善策の立案と実行

原因が特定できたら、それに対する具体的な改善策を立案し、実行に移します。 売上向上策、コスト削減策、不採算部門からの撤退、財務改善策(借入金の見直しなど)等、原因に応じた的確な対策が必要です。

専門家への相談

自社だけで原因分析や改善策の立案・実行が難しい場合は、早期に専門家(税理士、中小企業診断士、経営コンサルタントなど)に相談しましょう。客観的な視点と専門知識が、問題解決の糸口を見つける助けとなります。

まとめ:赤字の種類を理解し、迅速な対応を

決算書、特に損益計算書に記載される赤字には4つの段階があり、それぞれ意味合いと深刻度が異なります。「決算書 赤字 見方」として「決算書 赤字 どこを見る」かを知り、自社の状況を正しく把握することが重要です。

・売上総利益の赤字は最も危険。事業モデルの根本的な見直しが必要。
・営業利益の赤字は本業の不振。原因究明と対策が急務。
・経常利益の赤字は銀行が特に嫌がる。財務負担の重さを示す。
・最終的な赤字は、一過性の要因であれば比較的軽視されるが、原因確認は必要。
・どの赤字であっても、放置はせず、速やかな原因分析と対策実行が不可欠。

赤字という結果を真摯に受け止め、それを改善へのスタートラインと捉える前向きな姿勢が、会社の未来を切り開きます。

この記事が、決算書の赤字に悩む経営者・従業員の皆様にとって、現状把握と次の一手を考えるための一助となれば幸いです。

 

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