「最近、銀行の担当者の顔つきが厳しい気がする…まさかうちの会社に対して何か言ってくるんじゃないだろうか?」
「赤字続きで、そろそろ追加融資をお願いしたいんだけど、銀行から厳しい条件を出されたり、最悪、融資を断られたりしないか心配だ…。」
「もし銀行から『リストラしろ』なんて言われたら、一体どこから手をつければいいんだ…社員たちの顔が浮かんで、夜も眠れないよ。」
かつて、コロナ禍において大手航空会社ANAが銀行団から大規模なリストラ要請を受け、給与カットや早期退職募集などの大鉈を振るったニュースは記憶に新しいかと思います。これは、いかに優良企業であっても、外部環境の激変により厳しい経営判断を迫られることがあるという現実を示しています。
本記事では、中小企業支援コンサルタントの視点から、あなたの会社にも起こりうる「銀行からのリストラ要請」という事態について、その背景、具体的な要請内容、そして経営者が取るべき対応策、さらにはそれを経営改善の好機と捉えるための考え方を徹底解説します。「うちはまだ大丈夫」と思っていても、連続赤字や業績不振が続けば、銀行からの追加融資の条件として、あるいは融資拒否を回避するために、厳しいコスト削減や不採算部門の見直しを含む経営再建計画の提出を求められる可能性はゼロではありません。
【目次】
まず、銀行が企業に対してリストラを含む経営改善を要請するのは、どのような状況なのでしょうか。
赤字決算と追加融資のタイミング
企業が黒字経営を続けている間や、一時的な赤字決算に陥った程度では、銀行からリストラを具体的に要請されることは稀です。しかし、問題となるのは、赤字決算が2期、3期と連続した場合です。
特に、連続赤字の状態で新たな追加融資を申し込んだ際に、銀行の態度は厳しくなります。 なぜなら、融資を実行する銀行にとって最大の関心事は「貸したお金が約束通りに返済されるか」という点であり、連続赤字の企業に対しては、その返済能力に大きな疑問符が付くからです。
このタイミングで、銀行は次のような形で改善を求めてきます。
「このままでは融資は難しい。まずは赤字を改善し、黒字化できる具体的な経営再建計画を提出してください。」
あるいは、より直接的に、
「経費を抜本的に見直し、確実に黒字化できるコスト削減計画を盛り込んだ経営再建計画が必要です。」
これが、実質的なリストラ要請の始まりです。この要請に応えられない場合、最悪のケースでは融資拒否という厳しい判断が下されることも覚悟しなければなりません。
銀行は、企業の返済能力を様々な角度から評価します。単に赤字というだけでなく、キャッシュフローの状況、自己資本の充実度、保有資産の状況などを総合的に見ています。リストラ要請は、これらの指標が悪化し、将来の返済に懸念が生じたと銀行が判断したサインと言えるでしょう。
関連情報:「2期連続赤字で銀行融資はどうなる?中小企業が取るべき対策【2025年版】」
赤字でもリストラ要請されないケースとその理由
「うちは赤字が続いているが、銀行から特にリストラ要請は受けていない」という経営者の方もいらっしゃるかもしれません。その場合、貴社には以下のような理由が考えられます。
・多額の減価償却費を計上している: 減価償却費は会計上の費用ですが、現金の支出を伴わないため、銀行はこれを実質的な返済財源と見なすことがあります。赤字幅よりも減価償却費が大きければ、キャッシュフロー的にはプラスである可能性があります。
・役員報酬が高額で、役員借入金が多い: 経営者が高額な役員報酬を得ており、その一部を会社に貸し付ける形(役員借入金)で資金繰りを支えている場合、銀行は「いざとなれば役員がさらに資金投入するだろう」と見なすことがあります。
・換金性の高い資産を保有している: 定期預金、上場有価証券、解約返戻金の見込める役員保険など、すぐに現金化できる資産を潤沢に保有していれば、それが返済の担保として評価されます。
・赤字の原因が一過性のものであると判断されている: 例えば、一時的な大口取引先の倒産、災害による損失、あるいは将来の収益改善に繋がる先行投資としての不良資産の整理損や固定資産除却損など、特殊要因による赤字であれば、銀行も過度な懸念を示さないことがあります。
・価値のある不動産を担保提供している: 会社または経営者個人が所有する不動産に十分な担保価値があり、それが融資額をカバーしている場合。
・信用保証協会付融資が中心である: プロパー融資(銀行が直接リスクを負う融資)が少なく、既存融資の多くが信用保証協会の保証付きであり、かつ今回の追加融資も保証協会付きで対応できる見込みの場合、銀行独自のリスクは限定的と判断されることがあります。
要するに、これらのケースは、現時点において銀行が貴社の融資回収に対して、まだ致命的な懸念を抱いていないと解釈できます。しかし、これらの状況に甘んじることなく、早期の黒字化に向けた取り組みは不可欠です。
では、実際に銀行からリストラ要請が出される場合、どのような項目が対象となるのでしょうか。これは企業の状況によって千差万別ですが、一般的に指摘されやすいのは以下のような点です。
・役員報酬・役員親族給与の削減
・役員親族に対する過大な地代家賃や支払手数料の見直し
・接待交際費、旅費交通費などの大幅な削減
・生命保険料(特に役員保険)の削減、または保険解約による返戻金の運転資金への充当
・遊休不動産や不採算事業に関連する資産の売却による資金化と有利子負債の圧縮
・高額なリース契約(車両、OA機器など)の見直し、解約
・不採算部門や不採算店舗の統廃合、撤退
・人員配置の見直し、場合によっては希望退職者の募集
・仕入れコスト、外注費の削減交渉
これらの項目は、経営者にとって痛みを伴うものばかりですが、事業を継続するためには避けて通れない課題として提示されるのです。
銀行から厳しいリストラ要請を受けたとき、経営者はどのように対応すべきでしょうか。私の31年以上にわたる銀行員時代およびコンサルタントとしての経験から見えてきたことをお伝えします。
社長が陥りがちな反応とその問題点
リストラ要請に対し、社長の反応は様々です。「そんなことはできない」と抵抗する社長、「分かりました」と従順な社長、あるいは表面上だけ取り繕って実態は変えない社長…。
しかし、ここで冷静に認識すべきは、銀行からリストラ要請が出るということは、貴社がそれだけ厳しい経営状況にあるという紛れもない事実です。今まで通りのやり方では、会社の存続が危ういというシグナルなのです。
表面的な対応や一時しのぎの策では、根本的な問題解決には至らず、むしろ傷を深める結果になりかねません。**最も手強い敵は、社長自身の長年の経験からくる「思い込み」や「固定観念」**であることも少なくありません。経営環境は常に変化しているのです。
まずは、自社の置かれた状況を客観的に、そして厳しく認識することが不可欠です。第三者の視点を取り入れることも有効でしょう。銀行からのリストラ要請は、単なる「お願い」ではなく、多くの場合、「これ以上の支援は難しい」という最後通牒に近い意味合いを含んでいます。この現実から目を背けてはいけません。
固定観念を捨て、変化を受け入れる姿勢
「今までこれでやってこられた」「このやり方を変えるのは無理だ」といった固定観念は、思い切って捨てる勇気が必要です。変化を恐れず、新たな視点や手法を取り入れる柔軟性が、この危機を乗り越える鍵となります。
リストラ要請を経営改善のチャンスに変える思考法
一見すると絶体絶命のピンチに思える銀行からのリストラ要請ですが、これを会社を立て直す絶好の機会と捉えることもできます。
懸案事項の実行:不採算部門の整理、コスト構造の見直し
長年、気にはなっていたものの、なかなか手を付けられなかった不採算部門の整理や、聖域なきコスト削減、あるいは硬直化した仕入れ形態や外注先の見直しなどを断行するチャンスです。「銀行からの要請」という外圧を、社内の抵抗を抑え、改革を推し進めるための「追い風」として利用するのです。
経営体質の強化
思い切ったリストラ策を実行することで、一時的に企業規模は縮小するかもしれません。しかし、贅肉をそぎ落とし、筋肉質な経営体質を再構築することで、収益力はむしろ向上し、より強固な事業基盤を築くことが可能になります。
銀行からのリストラ要請に応えるためには、当然ながら大幅なコスト削減が求められます。しかし、やみくもにコストを削減するだけでは、かえって事業の競争力を削ぎ、再建を遠のかせることになりかねません。
一律カットではなく、貢献度分析に基づくメリハリの必要性
重要なのは、どのコストを大胆に削り、どのコストは事業継続・成長のために残す(あるいは、場合によっては増やす)のか、という戦略的な判断です。「全経費を一律○%カット」といった安易な方法ではなく、各コストがどれだけ業績に貢献しているのか、あるいは将来の成長に不可欠なのかを冷静に分析し、優先順位をつける必要があります。
将来への投資や人材確保の重要性
例えば、目先のコスト削減のために研究開発費やマーケティング費用を全てカットしてしまえば、将来の成長の芽を摘むことになります。また、いくら銀行から人件費削減を強く要請されたとしても、**会社の再建に不可欠な優秀な人材の流出は絶対に避けなければなりません。**むしろ、キーパーソンに対しては、厳しい状況下であってもインセンティブを与えるくらいの覚悟も必要になる場合があります。
経営再建計画におけるコスト削減の位置づけ
当事務所で銀行向けの経営再建計画策定を支援する際にも、この「削る経費」と「削らない経費(あるいは増額も検討する経費)」の仕分けには細心の注意を払います。もちろん、赤字からの脱却が目標ですから、経費総額を削減することは大前提です。しかし、戦略なきコスト削減は、再建の足かせになることを肝に銘じなければなりません。
今まで「できない」「そんなことをしたら会社が回らない」と考えていたことでも、ゼロベースで見直すことで、新たな活路が見いだせるかもしれません。銀行からの厳しい要請を、自社の経営をプラスに転換させるための「起爆剤」と捉える前向きな姿勢が、この難局を乗り切るためには不可欠です。
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コロナ関連融資の返済が本格化し、また世界的な経済情勢の変動も相まって、金融機関の融資審査はより慎重になる傾向が見られます。特に、企業の将来性やキャッシュフロー創出力、そしてガバナンス体制などが厳しく評価されるようになっています。
このような環境下では、問題が深刻化する前に、早期に経営課題を認識し、自主的に改善に取り組む姿勢がこれまで以上に重要です。また、日頃から銀行と密なコミュニケーションを取り、自社の状況や将来展望を積極的に情報開示することで、いざという時の信頼関係に繋がります。
まとめ:リストラ要請は変革の号砲。真の経営改革で未来を掴む
銀行からのリストラ要請は、経営者にとって極めて厳しい通告です。しかし、これを単なる「終わり」の宣告と捉えるのではなく、**長年の慣習や固定観念を打ち破り、会社を本質から変革するための「号砲」**と捉えることもできるはずです。
不採算部門の整理、大胆なコスト削減、そして新たな収益モデルの構築。これらは痛みを伴いますが、乗り越えた先には、より強く、より持続可能な企業としての未来が待っていると信じて、勇気ある一歩を踏み出しましょう。
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