ANA(全日空)が、コロナ禍において、銀行団から新規融資を受けるにあたり、リストラ要請されたという新聞記事を見ました。
それを受けてANAは、一般職の給与30%カット、大型機の一部廃止、路線の縮小、早期退職の募集、他業種への出向など、大胆なリストラ策を発表しました。
優良大企業でもこのような厳しい状況です。
今後、あなたの会社にも起こらないとは限りません。
【目次】
では、銀行がリストラ要請をするのはどんな時でしょうか?
黒字の時はまず言ってきません。
決算で一期赤字になっても言ってきません。
言ってくるのは、連続赤字が続いたときです。
言ってくるタイミングは、連続赤字の状態で追加融資を申し込んだ時です。
なぜなら、融資するにも連続赤字では、融資金が約束通り返済されるか、心配だからです。
そしてこう言ってきます。
「赤字を改善し、黒字化できる計画を出してください」
または、ストレートに「経費を削減して、黒字になるような計画を提出してください」
これが融資を申し込んだ際のリストラ要請です。
でもおかしいぞ、当社は赤字が続いているのに、融資を申し込んでもリストラ要請されない、、、
その場合は、あなたの会社に、以下の様な理由があると想定されます。
☑ 多額の減価償却費を計上し、減価償却費が赤字幅を上回っている(銀行は減価償却費を融資金の返済財源とするため)
☑ 役員報酬を多額にもらっており、資金が足らないときは役員が会社に貸付している⇒役員借入金(役員が会社に貸す)残高が多い
☑ 定期預金や上場企業有価証券、役員保険など、換金性が高い資産を保有している
☑ 赤字の原因が、不良資産の償却や固定資産除却損など、一過性のものである
☑ 価値のある不動産を、会社か役員個人が有しており、なおかつそれが銀行の融資担保に取られている(担保価値が融資額を上回ってる)
☑ プロパー融資が少なく、現在融資金の多くが信用保証協会付融資である、かつ今回の融資も信用保証協会付融資で対応しようとしている
つまり、上記により、現時点で銀行があなたの会社に対して、融資回収に懸念を示していないと考えられます。
逆に言えば、赤字が続いて上記の要件を満たさない、
減価償却費が少額、換金性の高い預金や有価証券等の資産を有していない、不動産担保が少ない、信用保証協会付融資の枠がいっぱいになり、今後プロパー融資でしか対応できない、、、
などの場合には、融資(特にプロパー融資)を申し込んだ際、リストラ要請をされるということです。
リストラ要請で多いのが、以下の様な項目です。
☑ 役員報酬、役員親族等の給与削減
☑ 役員親族に対する地代家賃の削減
☑ 接待交際費の削減
☑ 役員保険などの保険料削減、役員保険の解約
☑ 遊休不動産等、資産の売却
☑ 高額なリース契約の見直し
☑ 不採算部門、不採算店舗の撤退
など、まだまだ会社の置かれている環境により違いがありますが、多項目に渡ります。
私は、銀行時代の17年コンサル9年、合計26年リストラ要請された時の社長の対応を見てきました。
抵抗する社長、従う社長、色々でした。
抵抗する社長は、出来ないと抵抗したり、リストラしているよう表面上つくろったり、反応は様々です。
そこで、冷静になって考えたいのは、あなたの会社の置かれている状況です。
銀行からリストラ要請が出るというのは、あなたの会社が厳しい状況にあるということです。
今までと同じやり方では、会社継続が難しいということです。
そこをまず認識します。少し離れた立場で状況を客観視する、もう一人の自分が必要になります。
表面上見せかけただけのリストラ策では、傷を深めていくことになります。
一番の敵は、社長であるあなたの長年の経験から出る思い込みと固定観念です。
時代背景や経営環境は変化しているのです。
懸案となっていた不採算部門、仕入形態や外注先の編成、気になっていた人件費、水膨れした間接経費、、、
これらを思い切って撤退や削減、再編成していきます。
思い切った対応で、銀行からのリストラ要請というピンチを、会社の経営体力を高めるチャンスに変えていくのです。
そもそも、長年経営していると、ピンチは必ずやってきます。
優良大企業だって、倒産の危機を切り抜けて今があるのです。
ポイントは、どのコストを削り、どのコストを残すのか、の適切な判断です。
重要な経営判断になります。一律何%カットではなく、戦略が必要です。
そのためには、どのコストが業績に貢献して、どのコストが不要なのかの分析が大切です。
削るコストが出てくるのはもちろんですが、逆に会社が生き残っていくために行う修繕投資など、増額する経費もでてくるかもしれません。
いくら銀行から人件費カットを要請されても、再建に不可欠な優秀な人材は、何が何でも守る必要があります。
当事務所では、銀行向けの経営改善計画策定支援を主業務にしていますが、その際、気を付けているのは、削る経費と削らない経費(最低限度にはなりますが、場合によっては増額する経費もあります)の振り分けです。もちろん赤字なのですから、経営改善計画では、経費総額をマイナスにする必要はあります。
しかし、繰り返しますが、コストカットには戦略が必要です。コストを戦略なく削ることで、再建に支障が出ることを防ぎます。
一方で、できない、そんなことをしたら会社が回らない、と消極的になるのではなく、今までとは違った視点からコストを見直してみます。銀行からの要請を会社のプラスに転じるという姿勢もある、と私は感じるのです。
【この記事書いた人】プロフィール
【お手伝いの際の考え方】
【この記事の問題を解決するための手段はこちら】
【この記事の問題を解決するサービスメニュー】
【関連記事】
2期連続の営業利益赤字になった。経営者は今すぐ何をすべきか。
経営力強化に関するお問い合わせはこちらから(暗号化対応をしているので、コメントやメールアドレスが外部に漏れることはありません。24時間コメント受付、返信は翌営業日以降になることがあります)。☟