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銀行の補助金提案|その背景と企業への影響

様々な補助金が出ています。

私は仕事柄、補助金に接することも多いので情報収集に努めてはいますが、それでもすべて網羅(もうら)は難しい状態です。

近年、銀行は取引先に対して「補助金提案」を強化しています。

そこに銀行側のどんな事情があるのでしょう?

少し考えてみます。

銀行が勧めてくる補助金

銀行は今、取引先にどんな補助金を勧めているのでしょう?

最近は、「ものづくり補助金」「事業再構築補助金」を勧めています。

この2つの補助金は、比較的事業規模が大きい(採択になると補助金額が大きい)補助金です。

小規模事業者持続化補助金(以下持続化補助金)のように、事業規模が小さい補助金はあまり勧めてきません。

持続化補助金は、おもに商工会議所・商工会が推進しています。

事業規模が大きな補助金を勧めてくるのは、補助金額が大きいと、銀行にメリットがあるからです。

 

補助金申請書作りを手伝いフィーを獲得

銀行に補助金を勧められて、経営者のあなたが「よし、それなら挑戦してみようか」と決断したとします。

補助金に応募するにあたり、まず困るのは、補助金申請書の書き方がよく分からないことです。

特に上記に挙げた2つの補助金「ものづくり補助金」「事業再構築補助金」などは、書類作成の専門知識がないと作成が難しいものです。

そこで銀行員は、「補助金申請書作成、銀行が全面的にお手伝いしますよ」と提案します。

経営者にとって渡りに船、銀行は信用できるので、「では、お願いします」となります。

銀行に書類作成をお願いするとしたら、無料ではありません。書類作成代行費用がかかります。

地方銀行で、書類作成費30万円、別途成功報酬で獲得額の3%などがあるようです(詳細は銀行ごとに違うので、確認してみてください)。

仮に、書類作成費30万円、成功報酬獲得額の3%で計算してみましょう。

例えば、1,000万円獲得できれば、書類作成費30万円、成功報酬30万円。銀行は合計60万円の手数料獲得(手数料率6%)になります。

 

率がよく、リスクが少ない

投資信託を販売しても、手数料は1~2%程度でしょうから、手間はかかりますが率の良い仕事です。

この手数料収入は、融資と違って貸し倒れのリスクがない収入です

例え失敗しても書類作成費30万円は、手数料としてもらうことができます。

補助採択額が大きければ大きいほど、成功報酬が大きくなります。

これが、銀行が補助額の大きい「事業再構築補助金」(最大1億円)や「ものづくり補助金」(最大3,000万円;海外展開枠)を勧める一つの理由です。

 

フィーを払っても挑戦したい補助金

経営者側からすると、60万円のフィーを払っても面倒な申請書作成を銀行が代行してくれて、1,000万円の補助金が入るなら、「じゃあ、やってみようか」と、なります。

銀行からの提案なら、補助期間中の立替資金の融資もセットになっていることが多いため、資金面でも安心です。

自社がちょうど、最新設備を導入して生産性を高めたい(ものづくり補助金)、新しい事業展開をしたい(事業再構築補助金)と考えていたなら、挑戦してみるのも良いかもしれません。

 

専門部署を作って支援する銀行

補助金の専門部署を立ち上げて、取引先を支援している銀行があります。

製造業出身者を再雇用してものづくり企業のサポートをしたり、銀行内部の中小企業診断士が新規ビジネスの作り込みを手伝ったり。

あなたも、銀行営業担当者に相談したら、本部の専門部署の担当者と同行訪問してきた、という体験をしたことがあるかもしれません。

経営者にとって、取引銀行にこうした専門サポート体制があれば心強いことです。

 

補助金を勧めてきた銀行員に聞いてみること

とはいえ、銀行員による補助金提案も、筋の良いものと、良くないものがあります。

本当に企業のことを考えて提案してくれているのか、それとも訪問の口実としてあまり意味なく提案しているのか。

以下のようなことを聞いてみてください。

① 提案してきた補助金の特徴

② 当社の将来にとって応募することでどんなメリットが考えられるか

③ 銀行としての申請支援体制はあるか(専門部署はあるか)

④ 支払うべき申請代行手数料はいくらか

⑤ 銀行として支援実績はあるか

⑥ 採択になった場合、補助金入金までの建て替えや自己負担部分の融資支援の方向性は

⑦ 提案してきた補助金の採択率はどのぐらいか

このような質問にしっかり答えられる銀行員は、補助金についてよく勉強して、企業の成長に貢献しようと考えています。

まごついて答えられない銀行員は、とりあえず話の口実に提案してきた可能性が高く、提案に安易に乗ってしまうのは避けたいことです。

経営者として見極めましょう。

 

銀行の融資担当にもアタリ、ハズレがあります。この記事でチェックしてみませんか?☟

【参考記事】 アタリの融資担当者、ハズレの融資担当者

 

メインバンク以外で支援を受けるときの注意点

銀行にとっては、メイン取引先に対して、他の銀行が補助金申請支援する事態は、絶対に避けたいことです。

そのため、メインバンク以外から補助金申請サポートの提案があったら、一応メインバンクの耳に入れておいたほうが無難かもしれません。

後日、この事実がメインバンクの知るところとなれば、今までの信頼関係が崩れ、ギクシャクする可能性があるからです。

なぜ、補助金支援をメインバンク以外に依頼すると、メインバンクとの信頼関係が崩れるのか?

それは、企業にとって大切なプロジェクトである補助金申請は、一方で、銀行から見ると取引先企業の今後の経営を左右しかねないことだからです。

企業は、補助金事業によって、業績が良くなることも、また失敗すれば悪化することも、ありますよね。

そのような大事なことを、事前相談することなく進めてしまうことに対して、メインバンクは不信感を感じるからです。

【参考記事】銀行との取引歴史を振り返る~厳しいときに助けてくれた銀行はどこか~

 

補助金は企業がリスクを負う

中小企業が補助金申請するにあたり、銀行とってリスクはあまりありません。

リスクを負うのは企業側です。

企業の事業内容を良く理解せず、安易に補助金を勧めてくる銀行員には注意が必要です。

特に今まで取引のない銀行は、補助金提案を入り口に新規取引を狙っています。

企業が負う補助金取り組みのリスクは以下です。

☑ 新たな事業展開に経営資源、資金を投入することのリスク

☑ 自己負担部分の資金負担

☑ 事業期間内の資金立替が発生

☑ 補助金を投入しても想定した成果が出ず、本業の足を引っ張る

☑ 補助金採択になると、支給の手続き、実施後の経過報告など、行政向け事務手続きが増える

などです。

補助金のリスクと上手な使い方については、以下記事を参照下さい。☟

 

【参考記事】補助金好きな経営者の末路 https://wada-keiei.com/archives/12978和田経営相談事務所オフィシャルホームページ)

 

銀行が補助金申請を勧める理由

銀行は金融庁から、「中小企業に対して融資以外の本業支援の強化」を求められています。

そのため近年では、人材マッチング、ビジネスマッチング、М&A、事業承継支援、IT化支援など、融資以外の支援を強化しています。

補助金申請支援もその一環です。

銀行にとって補助金は、取引先企業に提案しやすいメニューです。

「補助金を獲得できた」という、目に見える成果が、取引先企業にも銀行にもお互い得られるからです。

取引先にノルマのお願いごとなど、無理を頼むことが多い銀行員にとって、補助金獲得のお手伝いで恩を売っておく、という意味もあります。

まとめると、銀行が取引先企業に補助金を勧めるのは、

① 申請支援により、ノーリスクの手数料収入が得られる

② 採択の際には、目に見える成果が得られ、取引先に喜ばれる

③ 融資以外の取引先ビジネス支援に熱心な銀行として、対外アピールできる

などの理由がありそうです。

 

以上、銀行員が補助金を勧めてくる理由や背景について、お話ししました。

補助金には新たな事業展開のリスク抑制効果など、メリットがあります。上手にご活用いただくうえで、この記事が参考になりますと幸いです。

 

【関連記事】

補助金に関して銀行融資を受けるときの注意点 ~失敗しない融資の受け方~

銀行から事業再生重点支援先に選ばれる基準

銀行員が上司と2人で訪問してくることの意味について(融資断りか、前向きか)

 

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