「毎月、銀行へ多額の借入金を返済しているのに、損益計算書をいくら眺めても、その金額が見つからない」
これは、決算書を自社の経営に活用しようとする中小企業経営者から、よく寄せられる疑問です。
通帳を見ると確かに返済額が引き落とされています。それにもかかわらず、損益計算書の販売費及び一般管理費や営業外費用を探しても、同じ金額の勘定科目は見当たりません。
結論から言えば、銀行借入金の元金返済は経費ではありません。そのため、損益計算書を探しても元金返済額は載っていません。
損益計算書に記載されるのは、銀行への支払額のうち、原則として「支払利息」の部分です。元金と利息を区別しないまま利益や資金繰りを考えると、「黒字なのに預金が増えない」という状況を正しく説明できなくなります。
この記事では、銀行借入金の元金返済が損益計算書に載らない理由と、返済予定表を使った正確な返済額の見つけ方、さらに返済負担を経営判断へつなげる方法を解説します。

損益計算書は、一定期間に会社がどれだけの収益を上げ、そのためにどれだけの費用がかかり、最終的にいくらの利益が残ったかを示す書類です。
一方、借入金の元金返済は、過去に銀行から借りたお金を返す取引です。商品を仕入れたり、人件費や広告費を支払ったりする取引とは性質が異なります。
銀行から融資を受けたときは、会社の現預金が増えると同時に、返済義務である借入金も増えます。借りたお金そのものは売上ではないため、融資を受けた時点で利益が増えるわけではありません。
その後、元金を返済すると、現預金と借入金が同時に減少します。会社の負債を減らす取引であり、その期の費用ではないため、損益計算書には記載されません。
① 借入時:現預金が増え、借入金も増える
② 元金返済時:現預金が減り、借入金も減る
▶ 元金返済は費用ではないため、損益計算書には載らない
銀行への毎月の支払額には、通常、「元金」と「利息」が含まれています。このうち、資金を借りるためのコストである利息は「支払利息」として営業外費用に計上されます。
毎月の引落額をそのまま経費と考えるのではなく、元金と利息を分けて確認することが、最初のポイントです。
「元金返済が経費ではないなら、最初に銀行から借りた資金は会計上どこへ行ったのか」と疑問に思う方もいるでしょう。
銀行から調達した資金は、そのまま預金として保有される場合もあれば、設備、商品在庫などへ形を変える場合もあります。
つまり、借入金を使った時期、会計上の費用になる時期、銀行へ元金を返済する時期は、必ずしも一致しません。

損益計算書の利益と、実際の現金の増減は同じではありません。
元金返済のほか、設備投資、在庫や売掛金の増減なども、利益と手元資金がずれる原因になります。
年間でいくらの元金を返済しているのかを正確に把握するには、取引金融機関から交付されている「返済予定表」または「償還予定表」を確認します。
複数の銀行、複数の借入がある場合は、すべての返済予定表をそろえることが重要です。一部の借入だけを確認しても、会社全体の返済負担は分かりません。
例えば、A銀行とB銀行に次の借入があるとします。
| № | 銀行名 | 月額元金 | 月額利息 | 月額合計 |
|---|---|---|---|---|
| ① | A銀行 | 100,000円 | 5,000円 | 105,000円 |
| ② | B銀行 | 200,000円 | 10,000円 | 210,000円 |
| 合計 | 300,000円 | 15,000円 | 315,000円 |
月額元金合計300,000円 × 12か月
= 年間元金返済総額3,600,000円
銀行への年間支払総額ではなく、元金だけを合計するのがポイントです。利息はすでに損益計算書の費用へ反映されているため、元金返済額とは分けて管理します。
返済予定表は、今後の返済予定を把握するうえで最も分かりやすい資料です。一方、実際に返済した金額を確認するときは、借入金の勘定元帳や銀行通帳も照合します。
繰上返済、返済条件の変更、新規借入などがあった場合、当初の返済予定表と実際の動きが異なる可能性があるためです。
貸借対照表には、決算日時点の短期借入金や長期借入金の残高が記載されています。しかし、前期末と当期末の借入金残高を比較するだけでは、年間の元金返済額を正確に把握できない場合があります。
例えば、期首から期末までに借入金残高が300万円減っていたとしても、その間に新たな借入があれば、実際の元金返済額は300万円より多くなります。
貸借対照表で分かるのは、基本的に決算日時点の残高です。期中に行われた新規借入と元金返済の両方が反映された結果であり、返済だけを切り分けた数字ではありません。
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「前期末残高-当期末残高=年間返済額」とは限りません。
期中の新規借入や繰上返済がある場合は、返済予定表、借入金元帳、通帳を組み合わせて確認してください。
元金返済は損益計算書に載りませんが、会社の預金からは確実に流出します。そのため、決算書が黒字でも、元金返済額が大きければ手元資金は増えません。
返済負担を簡易的に確認するときは、返済へ充てられる資金と年間元金返済額を比較します。
基本的な返済原資
= 税引後当期純利益 + 減価償却費
減価償却費は損益計算書上の費用ですが、その期に同額の現金が流出するものではありません。そのため、簡易的な返済原資を考える際には、税引後当期純利益へ足し戻します。
この返済原資と、返済予定表から集計した年間元金返済総額を比較します。
ただし、これはあくまで簡易的な見方です。実際の資金繰りには、売掛金、在庫、設備投資、税金の支払いなども影響します。
返済原資について詳しく確認したい方は、次の記事も参考にしてください。
【関連記事】借入金はどれぐらいが適正か?計算方法
設備投資、M&A、人材採用などへ向けて新たな融資を検討する場合、現在の借入残高だけでなく、既存借入の年間元金返済額を把握しておく必要があります。
追加融資を受ければ、手元資金は一時的に増えます。しかし、その後は新しい借入の返済も始まります。現在の返済負担を把握しないまま借入を増やすと、将来の資金繰りが想定以上に厳しくなる可能性があります。
銀行との融資相談では、次の数字を整理しておくと、自社の返済状況を具体的に説明しやすくなります。
返済額を正確に把握する目的は、単に数字を知ることではありません。
次の投資へ進めるのか、借入期間や返済条件を見直すべきなのかを判断できる状態にすることです。
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銀行へ毎月支払っている金額のうち、元金返済は経費ではありません。そのため、損益計算書を探しても元金返済額は見つかりません。
損益計算書に記載されるのは支払利息です。元金返済は、現預金と借入金を同時に減らす取引として、貸借対照表の残高へ反映されます。
ただし、貸借対照表の前期末残高と当期末残高の差額だけでは、期中の新規借入や繰上返済を切り分けられません。正確な返済額を把握するには、すべての金融機関の返済予定表をそろえ、必要に応じて借入金元帳や通帳と照合します。
銀行借入金の元金返済額は、損益計算書のどこかに隠れているのではありません。元金は経費ではないため、損益計算書には載らないのです。返済額は返済予定表で確認し、返済原資と比較して経営判断へつなげましょう。
決算書が黒字か赤字かを見るだけでは、会社の返済負担は分かりません。損益計算書に載らない元金返済まで含めて、自社にどれだけの資金余力があるかを確認してください。
自社の財務基盤を盤石にし、本気の事業成長を目指す方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。