新聞、書籍、テレビ、雑誌。最近、「人口減少による地方銀行の将来危機予測」を目にする機会が多くなりました。
その道の専門家が、詳細な分析をベースに発表しているので、おそらくそうなのでしょう。銀行も収益会社として、事業の継続性という、他の会社と同じ悩みを抱えています。
将来の危機に対する対策は、金融庁の旗振りのもと、担保や保証に依存しない事業性評価融資の強化や、コンサルティングやM&A業務など非金利収入で稼ぐビジネスモデルへの変換、などが進められています。
横並び傾向が強い銀行業界ですから、どの銀行も今は、事業性評価融資、コンサルティング機能強化(ビジネスマッチング、補助金等申請支援)、M&A(事業承継支援)です。確かにこれら業務は魅力的です。
私は銀行出身の経歴と、保有する中小企業診断士・経営革新等支援機関の資格から、中小企業の銀行取引改善支援に関わることが多々あります。具体的には、経営改善計画策定→モニタリング支援や資金調達支援などです。
経営者と面談したり、金融機関に同行訪問して感じることがあります。特に格付けが「要注意先以下」の企業に、「資金繰り改善のニーズ」がある一方、そのニーズ対応に取引銀行は消極的である、ということです。
通常、銀行格付けが要注意以下の企業は、資金繰りに不安を抱えていることが多いのですが、それら低格付けの中小企業の中にも、キラリひかる技術や商品・サービスを保有した企業は、結構あります。しかしながら、資金ショートなど、資金繰りに不安を抱えているため、次の有効な一手が打てないのです。
資金繰りがうまくいかないと、折角良い商品やサービスがあっても販売機会をロスしたり、資金を回すため赤字受注に走り収益が悪化したりして、経営改善のチェンスを逃してしまいます。経営者は、いつも資金繰りを心配しているので、精神的負担も大きく顔色が優れません。時にはやむを得ず、個人ローンなど金利が高い商品に手を伸ばしてしまいます。
銀行は、リスケジュールをしている先には、原則新規融資を出しません。融資を組み替えて、資金繰りを安定化させたりも、あまりしません。私はここに、銀行側にも他の銀行と差別化するチェンスがあると思うのです。
企業は生き物で、業績が良いときも悪いときもあります。悪いときだからこそ、「資金繰り改善の提案サービス」が提供できるのです。
私が考える「資金繰り改善サービス」とは、具体的には、資金繰り表の作成・運用指導、既存借入の組み替えによる返済能力の捻出、短期継続融資の提供、リスケ先への新規融資、などです。
もちろん支援できるのは、その企業に経営者の能力や、商品・サービスの強み、顧客とのつながりの深さ、従業員の質、など決算書に出てこない経営資源や今後の将来性があるときです。銀行員には実態を見抜く能力が必要です。これこそが差別化できる事業性評価融資です。
返済財源が明確にあるとか、決算内容が良い、など誰が見ても融資したい企業には銀行が殺到します。金利ダンピング競争で銀行も儲けることができません。
債務者区分の低い資金繰り改善サービスが必要な企業は、優良企業と比較してリスクが高いです。(しかし、前述したように、キラリ光る強みを持っているため、改善して立ち直る可能性があります)。ですから新規融資分などは、3~5%程度のミドルリスク金利をもらえば良いと思います。銀行も収益が上がります。企業も助かります。
返済財源がないので融資出来ません、タンコロ(短期転がし融資)は無理です、リスケ期間中の新規融資は無理です・・・。深く取引企業を知ろうとせず、表面数字だけで企業を評価し、リスクを回避し融資を絞る。これでは地方銀行の存在意義は何なのでしょうか?地元企業のピンチの時こそ出番なのに、こういうスタンスでは、時間が経過すれば、地域の顧客から見放され、銀行自身が淘汰されていくでしょう。
他銀行があまりやらない状況だからこそ、「資金繰り改善サービス」に取り組むことで、地域顧客から選ばれる銀行になると思うのです。
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