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地銀の経営環境⑩~SWOT分析による地銀への提言~

今回が最終回です。

今まで9回に渡り、地銀を取り巻く環境分析をしてきました。

地銀業界は、成熟産業で、ある意味衰退産業とも言えます。

他の企業と同じく、地銀も未来永劫続くわけではありません。

地方銀行を取り巻く状況で一番の問題は、「顧客の幸せと銀行の幸せが合致していないこと」です。

顧客とWin-Winの関係になっていません。

なぜかというと、組織と人材育成に問題があるからです。

 

地方銀行を取り巻く外部、内部の脅威

外部環境の一番の脅威は、今までお話ししてきたように、人口減少による地域の衰退と、異業種の銀行参入です。

そして、内部環境の弱点は、人材不足と顧客志向の不足です。特に金融サービス業としての意識不足は深刻です。

上司や監督官庁、株式市場の評価(短期業績重視)などを重視する、内向き志向を改める必要があります。顧客をおろそかにしてきた結果が、いまさら「顧客本位の業務運営」が不十分などと、指摘されるのです。商売していると、お客さんを大切にするのは、基本中の基本です。

目を向けるべきは、顧客、地域経済、そして勤務する銀行員満足です。

 

地方銀行への提言

以下地銀への提言として、私の考えをお話しします。どれも当たり前で基本的なことです。漠然としていますが、具体策は個々の銀行が考えていくでしょう。

①金融サービス業としての意識向上
銀行もサービス業です。他の産業の顧客満足のための取り組みを研究し、自行の顧客満足度の向上策に活かす事が必要です。

②他銀行との差別化
他の銀行と何が違うのか、何を前面に打ち出していくのか。得意業種を絞るのか、顧客支援の方法を差別化するのか(創業支援を強化や業績不振企業を徹底的に支援するとか)。「この銀行といえばこれ!」と顧客がピンとくる、ブランド化が必要です。銀行の弱点は、成果が出なければ、すぐ撤退してしまうことです。少しぐらい取り組んでも、成果が出るわけがありません。事業だって3年、5年してやっと芽が出てくるものです。最低でも10年は続けないと成果は出ません。「やり抜く力」が必要です。北国銀行など、成功事例もあります。

③行員の育成
若いうちに中小企業に出向させます。経理財務ではなく、中小企業の営業現場、製造現場などを体験させます。現場を体験させることで、商品の流れが分かるとともに、中小企業の厳しさ、に気づきます。ただし、出向を制度化し、出向者が誤解しないよう、主旨説明を丁寧に行います。

④人事評価のポイント
内向きで上司対応に優れる人材が出世する仕組みを変えます。顧客志向と内部調整のバランスが採れた人材を登用します。取引先や部下を踏み台にしていく人物は、しっかり見抜きます。取引先に無理を押しつける人物は、「顧客本位の業務運営」に反します。「短期で業績を上げる人物を評価する姿勢」を改めます。地味で目立たなくても、取引先のため、地域経済のために長期的な視点で努力する人材を引き上げます。この人事評価で、「顧客本位の業務運営」に舵を切ったと、銀行内に意思表示します。

⑤人事サイクルの長期化
不正防止のためですが、1年や2年での配置換え、転勤は短すぎます。支店運営に長期的視点を持つため、顧客との関係性を深めるために、支店長は、出来れば5年以上は同一支店に滞在したいものです。長く滞在するなら銀行本意ではなく、顧客本位を考えるはずです。

 

大切なのは、人。

大切なのは、企業も銀行も「人」です。銀行員が、自分の取り組んでいる仕事に、そして自分が働いている銀行に誇りを持てること、が大切です。銀行員が幸せであれば、その銀行員は取引先に幸せになってもらおう、と努力するでしょう。

中小企業の立場に配慮した対応、経営者など相手に対する思いやり。その心があれば、自然に「顧客本位の業務運営」が出来るはずです。

この提言は、私自身の銀行員時代の反省を踏まえて、「こうしておけば良かった。」と思い出しながら、今の地銀業界の状況も加味して考えました。

最後に、「地方銀行が地域経済を支えないと誰が支えるのだ」、と強く思うのです。

 

追記:地方銀行へSWOT分析での提言

最後にSWOT分析を用いた「地方銀行への提言」をまとめてみました。

今回は、対顧客面、対社内人材面に重点を絞り考えました。

銀行内でこうしたディスカッションをしてみると、人材育成につながりますし、また面白いアイデアが出てくるかもしれませんね。

参考いただきますと幸いです。

地方銀行SWOT分析の図

 

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