お問合せ

損益イメージを共有せよ!:事業デューデリ|経営危機を乗り越える!経営再建計画の作り方|⑦

今日は、「損益イメージの共有」の話をします。

事業デューデリにおいて、これをしておくと、次の数値計画策定のステップが進めやすくなります。

損益イメージを共有する

経営再建計画書の策定において、詳細な分析を経た後に**「目指すべき損益の姿」を具体的に描くことは、計画の方向性を定め、関係者の意思統一を図る上で不可欠です。その際に強力な武器となるのが「損益イメージ図」**です。

この記事では、**事業デューデリジェンス(事業DD)**の結果を具体的な目標数値イメージに落とし込み、経営再建への道筋を照らす「損益イメージ図」の重要性、作り方、そしてその効果を解説します。

事業デューデリの総仕上げ:なぜ「損益イメージ図」が有効なのか?

事業デューデリでは、内部環境分析、外部環境分析、SWOT分析、経営課題抽出といった多角的な分析を行います。これらの結果は、窮境原因の特定とともに報告書にまとめられますが、文章やデータが中心となり、全体像を直感的に把握しにくい側面もあります。

そこで、事業デューデリの締めくくりとして**「損益イメージ図」**を付け加えることには、大きな意義があります。

・視覚的なインパクト: 文章だけでは伝わりにくい**「将来の損益目標」**を、図やシンプルな表で示すことで、関係者の理解度を一気に高めます。
・分析結果の集約: これまでのデューデリで明らかになった課題と改善策が、最終的に損益にどう結びつくのかを具体的に示すことができます。
・共通言語の醸成: 経営者、従業員、金融機関、支援専門家といった立場が異なる関係者が、「どこを目指すのか」というゴールイメージを共有するための共通言語となります。

損益イメージ図とは?:経営再建の目標数値を可視化する

「デューデリの結果、課題は分かった。しかし、具体的に売上や利益をどう変えていけば会社は立ち直れるのか?」という経営者の切実な問いに、明快な形で答えるツールが損益イメージ図です。

図で示す内容:実績から目標への道筋

損益イメージ図の核心は、「現状(直近実績)」と「目指す姿(将来目標)」を対比して示す点にあります。通常、以下のような項目を時系列(例:直近実績と3年後目標)で比較できるように表示します。

(表をクリックで拡大します)

損益イメージ図

① 売上高: 事業規模の目標
② 変動費: 売上に応じて変動する費用(材料費など)
③ 限界利益 (①-②): 売上から得られる直接的な利益
④ 固定費 – 人件費: 比較的固定的な人件費
⑤ 固定費 – その他: 人件費以外の固定費(家賃、減価償却費など)
⑥ 固定費 合計 (④+⑤):
⑦ 営業利益 (③-⑥): 本業の儲け
⑧ 営業外損益: 受取利息や支払利息など
⑨ 差引利益 (⑦+⑧): 経常利益に相当する場合が多い

このように、実績からスタートし、各項目を将来(例えば3年後)どの水準まで持っていく必要があるのかを、具体的な数値(ただし、この段階では概算)で示すことが重要です。

フォーマット例:損益構造の変化を捉える

図(棒グラフや積み上げグラフで表現されることが多い)は、各損益項目の大きさとその推移を視覚的に捉えるのに適しています。

・売上高がどのように伸びていくのか。

・**限界利益(率)**がどのように改善していくのか(例:不採算取引の見直し、価格改定の効果)。

・固定費(特に人件費やその他経費)がどのようにコントロールされるのか。

・それらの結果として、営業利益がどのように増加していくのか。

といった損益構造の変化が一目で分かります。

あくまで「イメージ」:詳細計画への橋渡し

繰り返しになりますが、**事業デューデリ段階で作成する損益イメージ図の数値は、あくまで概算の「目標イメージ」**です。この図を作る目的は、精密な予測ではなく、関係者間で「目指すべき方向性」と「達成すべきおおよそのレベル感」を共有することにあります。

詳細な月別・年別の損益計画、資金繰り計画、アクションプランごとのKPI設定などは、経営再建計画書本文の「数値計画・アクションプラン」のセクションで、この損益イメージ図を基に、より精緻に策定していきます。しかし、この初期段階の**「概算イメージ」**があるからこそ、その後の詳細計画作りがスムーズに進むのです。

 

損益イメージ図作成の前提:質の高い事業デューデリが不可欠

信頼性のある損益イメージ図は、質の高い事業デューデリがあってこそ作成可能です。

・内部環境分析: 各部門や商品、顧客ごとの収支構造を把握していなければ、改善による損益インパクトを見積もれません。例えば、「部署ごとの人件費と貢献利益の関係性」が分かっていないと、将来の適切な人員配置や人件費計画が描けません。

・外部環境分析: 業界平均との比較から、自社の改善余地(例:粗利率、販管費率)を客観的に評価する必要があります。

・経営課題抽出: 明確化された経営課題(例:低収益部門の整理、コスト削減)と、その解決策が損益数値にどう反映されるかを具体的に結びつける必要があります。

・実態バランスシート: 事業デューデリで作成する実態バランスシートによって明らかになった純資産の実態や隠れた債務を踏まえなければ、健全な財務状態への回復目標(特に必要利益水準)を設定できません。

これらのデューデリ作業の一つ一つが連動し、損益イメージ図の根拠となるのです。

[関連情報:経営課題の正確な抽出方法]
[関連情報:実態バランスシートとは? なぜ経営再建で重要か?]

損益イメージ図の多大な効果:関係者の目線合わせを促進

このシンプルな図は、関係者の認識を揃え、経営再建への推進力を生み出す上で大きな効果を発揮します。

経営者の意思決定をサポート

経営者にとっては、抽象的な課題感が具体的な数値目標に置き換わることで、「何をすべきか」が明確になります。

「この営業利益目標を達成するには相当な覚悟が必要だ」といった具体的な課題感と目標達成への決意を促します。

金融機関との共通認識を醸成

金融機関は、融資先が「どこを目指しているのか」「その計画に実現可能性はあるのか」を重視します。事業デューデリに基づいた損益イメージ図は、経営再建計画書の説明初期段階で、改善の方向性と目標レベルについて共通認識を形成するのに役立ちます。特に、借入金返済原資となるキャッシュフロー目標が示されていることは、金融機関の信頼を得る上で重要です。

従業員への方向性提示

従業員に対して、会社が目指す将来の損益目標を分かりやすく示すことで、日々の業務におけるコスト意識や生産性向上へのインセンティブとなり得ます。会社全体の目標達成に向けた一体感を醸成する効果も期待できます。

 

経営再建計画書全体の構成と「書き方」

損益イメージ図は、経営再建計画書を構成する重要な要素の一つですが、それだけで計画が完成するわけではありません。経営再建計画書の書き方としては、通常、以下の要素を詳細に記述する必要があります。

1. 現状分析: 事業概要、事業デューデリの結果(財務・事業分析、実態バランスシート、SWOT分析、経営課題、窮境原因分析など)
2. 再建の基本方針: ドメイン(事業領域)の再定義、目指す姿
3. 損益イメージ: 本記事で解説した内容
4. アクションプラン: 課題解決のための具体的な行動計画(誰が、いつまでに、何をするか)
5. 数値計画: 詳細な損益計画、資金繰り計画、予定貸借対照表(BS計画)
6. その他: 人員計画、モニタリング体制など

経営再建計画書のサンプルやテンプレートは参考になりますが、形式をなぞるだけでなく、自社の状況に即した、根拠のある、実行可能な内容を盛り込むことが最も重要です。損益イメージ図は、その計画の骨子を示す役割を担います。

まとめ:損益イメージ図で経営再建のゴールを共有する

事業デューデリの成果を結集し、経営再建のゴールを具体的に可視化する**「損益イメージ図」。これは単なる図ではなく、経営再建という航海における目的地を示す海図(羅針盤)**です。

・複雑な現状と目標をシンプルに伝え、理解を促進する。

・経営者、従業員、金融機関など、関係者の目線を合わせ、一体感を醸成する。

・詳細なアクションプランと数値計画策定への確かな橋渡しとなる。

この損益イメージ図を効果的に作成・活用することで、経営再建計画書の説得力と実行力が高まり、経営再建の成功確率を大きく引き上げることができるでしょう。

 

【関連記事】

アクションプラン作成のポイント:アクションプランと数値計画|経営危機を乗り越える!経営再建計画の作り方|⑳

経営課題抽出は再建を左右する:事業デューデリ|経営危機を乗り越える!経営再建計画の作り方|⑥

経営再建計画が必要な状態とは?|経営危機を乗り越える!経営再建計画の作り方|①

 

コメントはこちらから☟

「損益イメージを共有せよ!:事業デューデリ|経営危機を乗り越える!経営再建計画の作り方|⑦ 」
ご覧いただきありがとうございました。

「事業計画書はこう作る」 関連の記事一覧

お問合せ
セミナーの依頼
 
注目の記事カテゴリ

経営者の方へ

銀行員の方へ

中小企業診断士の方へ

ページトップ