「不動産を担保に入れているのに、なぜ銀行は追加融資してくれないんだ?」
「担保価値は十分なはずなのに、融資を断られた…納得いかない!」
「『担保があるのに融資しない』って、銀行はどういう考えなんだろう?」
会社の土地や建物といった不動産を担保として銀行に提供しているにも関わらず、いざという時に追加の融資を断られてしまい、困惑や不信感を抱く経営者の方は少なくありません。なぜ、担保という強力な裏付けがあるはずなのに、銀行は融資に難色を示すのでしょうか?
それは、経営者が考える「担保」の価値と、銀行が融資判断で重視するポイントに、しばしばギャップがあるからです。
この記事では、ここ愛媛県をはじめ多くの中小企業をご支援してきたコンサルタントとして、銀行融資における担保の基本的な考え方、有担保融資・無担保融資の違い、銀行が担保があっても融資を断る主な理由(「担保あるのに融資しない」理由)、そして経営者が取るべき対策について解説します。
【目次】
まず、銀行融資の基本的な種類を確認しましょう。
無担保融資とは?
文字通り、担保を提供せずに、企業の信用力(決算内容、事業の将来性、経営者の資質など)を基に行われる融資です。信用保証協会の保証付き融資も、銀行にとっては(協会が保証するため)実質的に無担保に近い扱いとなります。
有担保融資とは?
不動産(土地・建物)、預金、有価証券などの資産を担保として提供し、それを裏付けとして行われる融資です。銀行にとっては、万が一返済が滞った場合に担保を処分して債権を回収できるため、無担保 融資に比べてリスクが低減されます。そのため、比較的高額な融資や、長期の返済期間を設定しやすくなります。
主な融資担保の種類
様々なものが担保となり得ますが、中小企業の有担保融資で一般的な「融資担保 種類」は以下の通りです。
・不動産: 土地、建物(本社、工場、店舗、経営者の自宅など) ← 最も一般的
・預金: 定期預金など(預金担保)
・有価証券: 上場株式、国債など
・売掛債権: (ABL:Asset Based Lending の一部)
・動産: 機械設備、在庫など(ABLの一部)
・人的担保: 経営者や第三者の保証(近年は経営者保証に依存しない方向性が示されていますが、依然として多くの場合求められます)
本記事では、特に「不動産担保」に焦点を当てます。
「担保があるのに融資しない」最大の理由は、銀行が企業の「返済能力」そのものに疑問を持っているケースです。
銀行融資の原則:「事業の収益力」が第一
銀行が融資判断で最も重視するのは、「その会社が、事業活動を通じて生み出す利益やキャッシュフローから、借りたお金をきちんと返済できるか」という点です。 担保は、あくまで返済が不可能になった場合の「最後の保険」であり、担保があるからといって、返済能力がない企業に積極的に融資をすることはありません。
赤字継続や業績悪化が示すシグナル
決算書で赤字が続いていたり、試算表で業績の悪化傾向が見られたりする場合、銀行は「将来的に返済が滞るリスクが高い」と判断します。いくら価値のある担保を提供していても、事業そのものの収益力が回復する見込みが立たなければ、追加融資には極めて慎重になります。
[関連記事:2期連続赤字で、銀行の融資態度はどうなるか。]
担保はあくまで「保険」
銀行は、担保処分という手間やコスト(競売費用、時間、風評リスクなど)がかかる事態は、できる限り避けたいと考えています。担保があるから貸すのではなく、返済が見込めるから貸す、というのが銀行の基本スタンスです。
次に考えられるのは、提供されている担保の「価値」が、銀行の基準で見て不足しているケースです。
銀行による担保評価額 < 経営者の期待値 (自分が考える 担保価値)
銀行が行う担保評価(「銀行 担保評価」)は、経営者が考えている不動産の市場価値や購入価格よりも、**かなり保守的(低く)**なるのが一般的です。これは、銀行が「万が一の場合に、早期かつ確実に回収できる価額」を基準に評価するため、市場価格から一定の割引(担保掛目)を行うからです。
そのため、経営者が「これだけの価値があるはずだ」と思っている担保でも、銀行の評価額では希望する融資額に対して不足している場合があります。
[関連記事:銀行融資と担保の関係~評価方法と抵当権・根抵当権の違い~]
先順位担保権の存在
提供する不動産に、すでに他の金融機関や住宅ローンなどの「先順位」の抵当権や根抵当権が設定されている場合、後から設定する銀行にとっては、実質的な担保価値はほとんどない(あるいは非常に低い)と評価されることがあります。登記簿謄本(登記事項証明書)で確認が必要です。
担保設定額と評価額は異なる
特に「根抵当権」の場合、設定されている「極度額」はあくまで融資枠の上限であり、必ずしも現在の担保評価額を示すものではありません。過去に設定された高い極度額が残っていても、現在の銀行 担保評価額はそれより低い可能性があります。
最後に、担保価値や返済能力以前の問題として、銀行との信頼関係が失われているために融資が受けられないケースです。
過去の約束違反や不誠実な対応
・資金使途違反: 借りたお金を、申し込んだ目的以外に使用した。
・粉飾決算: 決算書の内容を偽って提出した。
・報告義務違反: 約束した資料提出や業況報告を怠った。
・その他: 約束を守らない、不誠実な言動があったなど。
信頼がなければ担保も意味をなさない
一度、銀行からの信頼を失ってしまうと、たとえ十分な担保を提供したとしても、新たな融資を受けることは極めて困難になります。銀行取引は、最終的には人と人との信頼関係に基づいています。
[関連記事:銀行が嫌う経営者~銀行員がそっぽを向くタブーな言動~]
「担保があるのに融資が出ない」という状況に陥らないため、また、もしそうなった場合にどう対応すべきかについて、経営者ができることを考えます。
自社(自身)の担保価値を概算する方法
銀行内部の正確な担保評価額を知ることは難しいですが、以下の方法でおおよその価値を把握することは可能です。
・固定資産税納税通知書: 課税標準額が記載されており、時価の目安となります。
・路線価: 国税庁HPで確認できます。土地のおおよその時価を計算できます。
・不動産鑑定士への依頼: 正確な評価が必要な場合は、専門家への依頼も選択肢です(費用がかかります)。
ただし、これらはあくまで目安であり、最終的な銀行 担保評価とは異なる可能性があることを理解しておく必要があります。
融資を断られた場合の対応策
もし融資を断られた場合、まずはその理由を銀行に(冷静に)確認することが重要です。理由に応じて、取るべき対策は異なります。
・返済能力が問題視された場合: なぜ返済能力がないと判断されたのか(赤字、キャッシュフロー不足など)を具体的に把握し、実現可能性の高い経営改善計画を作成・提出し、業績回復への道筋を示す必要があります。
・担保価値が不足している場合: 追加の担保(他の不動産、保証人など)を提供するか、希望融資額を減額する、あるいは信用保証協会付き融資など無担保融資の選択肢を探る、などの対応が考えられます。まずは事業の収益力を高めることが、担保への依存度を下げる根本策です。
・信頼関係が問題の場合: 関係修復には時間がかかります。誠実な対話と、約束の履行を積み重ねるしかありません。場合によっては、取引銀行の見直しも必要になるかもしれません。
融資先の多様化
特定の銀行一行だけに依存せず、複数の金融機関(民間銀行、信用金庫・組合、政府系金融機関など)と日頃から取引関係を構築しておくことも、リスク管理の観点から重要です。
「担保があるから大丈夫」という考えは、銀行融資においては必ずしも通用しません。有担保融資であっても、銀行が最も重視するのは**「事業の収益性に基づく返済能力」**です。「担保あるのに融資しない」という状況は、多くの場合、その返済能力に疑問符がついているか、担保価値が銀行の基準で不足しているか、あるいは信頼関係が損なわれているかのいずれかです。
経営者としては、
・担保の種類や意味(融資担保 種類)、抵当権・根抵当権の違いを理解する。
・銀行の担保評価(「銀行 担保評価」)が保守的であることを認識する。
・担保に頼る前に、まずは自社の事業の収益力・キャッシュフロー創出力を高める努力をする。
・銀行とは日頃から良好なコミュニケーションを保ち、信頼関係を築く。
という基本姿勢が重要です。
この記事が、銀行融資と担保の関係についての理解を深め、貴社の円滑な資金調達と健全な経営の一助となれば幸いです。
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