経営者として銀行員を相手にしていると、「銀行の融資態度が変化した!」と感じたことがあるかもしれません。
積極的になったなぁ、とか、厳しくなったぞ、とか。
今日は「銀行があなたの会社への融資態度を厳しくする場合」の話をします。
自社では解決が難しい「外部要因」と、自社に起因する「内部要因」に分けてお話ししますね。
幸運にも銀行の融資態度変化に遭遇したことがない経営者の方、今後もその状態が続きますか?
【目次】
まず外部要因ですが、
例えば、新聞沙汰になるような社会問題が起こると、その業界や業種に対して、銀行の融資態度が厳しくなります。
最近で言えば、スルガ銀行が不動産向けに不正融資を行っていたこと、レオパレスの不正建築問題などがそうです。
その結果、「不動産向け融資」が全国的に厳しくなりました。
このようなケースでは、自社が不動産融資を考えていたり、不動産業に属していたりすると、自社の業績とはあまり関係ないところで、銀行の融資態度が変わってしまいます。
1年前までは正反対で、不動産担保が取れる「不動産向け融資」は、銀行にとってリスクが低く融資量も大きいため、ドル箱でした。
今後不動産投資を検討している経営者は、事前にしっかり銀行と打ち合わせを重ねるなど、今までとは違った注意と対応が必要になるでしょう。
あと、銀行は内部で、個別に業種向けの融資枠を設けています(業種とは、製造業、小売業、飲食業、建設業、など)。
○○業→○○○○億円 ○○業→○○○○億円 のように。
これは特定の業種に融資が集中することで、融資リスクが高まることを回避するためです。
この枠がいっぱいになると、その業種に対する融資態度を厳しくすることがあります。
また、支店長の変更によって、融資態度が変わることもあります。
支店長にも、攻め重視の支店長、守り重視の支店長などと、タイプが色々あります。
銀行は組織防衛上、同じタイプの支店長を連続して送り込むことは避ける傾向にあります。
攻めのタイプの支店長が続けば、守りのタイプを送り込むなど、人事配置を考えるのです。
支店長が変わると(文書での引継ぎはありますが)、人間関係を再構築する必要が出てきます。
特に業績が厳しくなっているときには、新しい支店長は、新鮮な観点で会社や経営者を判断して、厳しい姿勢で臨むことがあります。
ここまでが、自社では解決が難しい外的要因です。
次に会社側が引き起こす内的要因ですが、
銀行が融資態度を変えるのは、融資先企業の業績が悪化したときです。
具体的には、赤字が出た決算書を提出したあとです。
銀行は、企業の決算期の税務申告が終了すると、決算書を取りに来ます。
決算書を分析し、今後の融資方針に反映させるためです。
このとき、赤字になっていると、融資態度を変えてきます。
そして、最も銀行が融資態度を変えるのは、「企業に不信感を持ったとき」です。
具体的には、粉飾した決算書を提出して、ばれたときです。
経営者の気持ちも分からないではありません。
赤字を出せば、融資態度が厳しくなるのですから。
ただし、粉飾決算書がばれたときには、さらに目も当てられません(銀行は決算書を見ることにかけてプロなので、いつかばれます)。
銀行から一度不信感を持たれると、回復するのには時間がかかります。
ではどうするか、
企業経営には良いときも悪いときもあります。調子が悪く、赤字になることもあります。
だからといって、粉飾決算をしてしまうと、経営者自身が現状から目をそらすことになり、感覚が麻痺してしまいます。
赤字なのに、黒字のような気分になってしまい、経営改善が遅れます。
早く気づいて、早く手を打つことです。
赤字が出そうだったり、赤字が出た場合には、正しく現状を分析し、的確な対策を打ち、素早く実行します。
時間がたてばたつほど、回復は難しくなります。
私も、もっと早く相談してくれていればと、残念な気持ちになることがあります。
以上、「銀行が融資態度を変えるとき」について、お話ししました。
私は25年間の中小企業支援の経験のなかで、経営者が、「銀行に手のひらを返された!」と嘆くケースを何度も見てきました。
ただそれは、経営者自身が銀行に過大な期待をかけているとも言えます。
株式会社であり株式上場もしている銀行。重要なのは、「貸したお金が返ってくること」なのです。
そうした銀行の特徴を理解したうえで、銀行に寄りかかるのではなく、パートナーとして適度な距離感をもって付き合うことが大切ではないかと、私は感じます。
そのためには、経営者自身が銀行対応、ひいては会社経営について、戦略を持って取り組むことが必要だ、と思うのです。
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