【この記事で分かること】
・ 銀行が融資のない子会社の決算書を欲しがる理由
・ 銀行は、親会社と子会社の商取引や資金の流れ、どこを見ているか
・ どういう場合、銀行からの要請を断ることができるのか
【この記事のポイントは以下の通り】
☑ 銀行が融資を受けていない子会社の決算書を要求してくるのは、親会社と子会社をグループ一体として判断したいから
☑ 銀行独自に子会社の決算書と親会社の決算書を合計(連結決算書を作成)して、グループの全体像を把握するつもりである
☑ 実態がつかめなくなるので、子会社の決算期が親会社の決算期と相違することを嫌がる傾向がある
☑ 提出やむなしのケースと、提出を拒めるケースがあり、以下記事を参考にして、経営者は事前に自社の状況を把握のうえ対応を決めておくと良い
詳しく見ていきましょう。
貴方が複数の会社を経営しているとします。
銀行から、融資を受けていない子会社の決算書を要求されたことはないですか。
融資を受けている親会社なら理解できますが、なぜ融資のない子会社まで?
理由について考えてみましょう。
銀行が融資のない子会社の決算書を要求してくるのは、親会社と子会社を一体として見ているからです。
親会社の決算書に、このような勘定科目がないですか?
① 貸借対照表 その他の固定資産勘定に「関係会社(子会社)株式」
② 貸借対照表 その他流動資産やその他固定資産に「関係会社(子会社)貸付金」
③ 貸借対照表 その他の流動負債またはその他の固定負債に「関係会社(子会社)借入金」
④ 損益計算書 「売上」の中に子会社への販売分がある
⑤ 損益計算書 「売上原価」の中に子会社からの仕入れがある
⑥ 損益計算書 「雑収入」として子会社から家賃を受け取っている
⑦ 販売管理費明細 「地代家賃」として子会社に家賃を支払っている
などなど。
銀行は、親会社の決算書を確認して上記のような内訳を発見すれば、資金的なやりとりを行っている実質一体会社と判断します。
子会社が大きな赤字を抱えていたり、親会社、子会社間で多額の売上や貸付のやり取りをしていれば、警戒を強めます。表面上親会社が財務内容に問題なくても、「グループ一体として見ればリスクが高い」、と判断するのです。
中小企業の場合、複数会社を経営していても、連結決算書(複数の会社の決算書を合算して1本化する)を作ることは少ないと思います。
一方銀行は、子会社の決算書の提出を受け、親会社と合算し、グループとして1本化した決算書(連結決算書)を作っています。
親会社、子会社間の売上、仕入、売掛買掛、資金の貸し借りを相殺し、スリムな決算書にします。
例えば、
① 親会社の子会社貸付金(資産勘定)500万円と子会社の親会社借入金(負債勘定)500万円を相殺
② 親会社の子会社向け売掛金(資産勘定)と子会社の親会社向け買掛金(負債勘定)を相殺
③ 親会社の子会社向け売上高と子会社の親会社からの仕入高を補正
など。商取引の実態に応じて、グループ決算書を修正します。
結果、グループ全体の真の売上規模、収益力、財務の安全性・健全性を確認しているのです。
そのため、親会社と子会社の間で、決算時期が相違すること(例えば親会社は3月決算、子会社は12月決算など)を嫌がります。
決算時期が相違すれば、正確なグループ決算書を作成できないからです。
そもそもなぜ、グループ会社間で決算期をずらしているのでしょう?
経営者目線でも、グループの真の内容を把握するためには、決算期を合わせるほうが良いと思います。
グループで決算期が違う理由を聞くと、税理士事務所の都合だったりします(決算期が重なると決算申告作業が煩雑になるため)。
改善してはいかがでしょう?
子会社の決算書提出を求められた場合、まれなケースだと思いますが、以下の様な場合、断ることもできます。
① 親会社、子会社間で商取引がない
② 親会社、子会社間で決算書の中に貸し借りがない
③ 親会社、子会社間で月中の資金の貸し借りがない(通帳や当座預金の動きを確認されます)
このような場合、銀行は子会社の債権者ではないうえに、親会社子会社間の商取引上、資金上の関連が薄いため、提出を断ることができます。
銀行から、融資を受けていない子会社の決算書提出を要求されたら、理由を確認しましょう。
以上、銀行が子会社の決算提出を求めてくる理由と、経営者の対応についてお話ししました。
経営者としては、グループ間決算書を作成し、グループの実態を把握することで全体を見渡せたほうが、経営力アップにつながると思います。
まず第一歩は、親会社と子会社の決算期を合わせることです。
以下の記事に「銀行にどこまで決算書を渡せば良いか」、説明しています。併せて参考ください。☟
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