【405事業・2026年5月改定に対する現場の本音】
● 悩める経営者:
「5月からルールが厳しくなったと聞いた。赤字続きのうちは、もう門前払いされてしまうのか…?」
● 認定支援機関(税理士・診断士):
「伴走支援が3年義務化? マニュアルのどこに新しい要件が隠れているのか、正確に把握しないと怖くて受けられない…」
● 金融機関(再生担当者):
「単なるリスケの引き延ばしはもう限界だ。今度の改定で、本当に『出口』が見える実効性のある計画が出てくるんだろうな?」
【目次】
解説に入る前に、本事業を活用する上での極めて重要な「大前提」を共有します。元銀行員として多くの現場を見てきた私だからこそ断言しますが、405事業は「リスケ(条件変更)をするための制度」ではありません。
借入金の返済猶予(リスケ)は、あくまで再生に向けた時間を稼ぐための「手段」に過ぎません。本事業の真の目的は、「計画期間内に会社が健全な姿に再生すること」です。そもそも「再生可能性」が極めて低いと判断される会社は、この制度を利用することはできません。単なる延命措置として本事業を使うことは、経営者にとっても社会にとっても不幸な結果を招くからです。
したがって、この会社が本当に405事業の土台に乗るべき対象なのかを、メインバンク、中小企業活性化協議会、認定支援機関などが連携し、事前に「正確な判定(目利き)」を行うことがすべての出発点となります。この土台があって初めて、意味のある計画策定が始まるのです。
借入金の返済負担など、財務上の問題を抱えている中小企業・小規模事業者を力強く支援する「経営改善計画策定支援事業(通称:405事業)」。税理士や中小企業診断士などの認定経営革新等支援機関(以下、認定支援機関)のサポートを受けながら、金融支援を伴う本格的な経営改善計画を策定し、事業再生を促進するための制度です。
今回の制度改定において、最も重要なテーマとして掲げられているのが「再生支援出口の明確化」と「伴走支援体制の強化」の2点です。
これまで、計画を策定したものの「いつまでに、どの水準まで回復させるのか」というゴールが曖昧になるケースや、計画策定後の実行フェーズでの専門家によるフォローアップが不足するケースが課題でした。そこで今回の改定では、具体的な数値目標を用いた「出口」をはっきりと定め、計画実行段階まで専門家がしっかりとサポートする体制がより明確化されました。
本記事では、この改定の目的に沿って、実務上絶対に押さえておくべき7つの重要ポイントを、最新の公式マニュアルに基づき徹底解説します。
本事業を利用するための大前提となるのが、金融機関からの「金融支援」を見込んだ計画であることです。では、この金融支援とは具体的に何を指すのでしょうか?
『マニュアル・FAQ』によると、本事業における「金融支援」とは、原則として「条件変更等」を指します。具体的には、既存借入の返済条件の変更、金利の減免、利息の支払猶予、元金の支払猶予などが該当します。一方で、経営改善や事業再生に必要な「新たな融資行為(借換融資、新規融資)」は、ここでいう金融支援には含まれません。
また、手形の書き換えについても注意が必要です。申請者と金融機関の間で旧債務を消滅させる意思がない場合は、本事業においては条件変更とみなされます。 もし、一部の債務についてのみ条件変更を受け、別途新規の運転資金を借り入れるような複合的な計画を立てる場合は、計画実行時に「条件変更を受けた債務が、全債務(新規融資等を含む借入総額)の50%以上」を占めていることが本事業利用の要件となります。
本事業における計画期間は、後述する「数値基準(3つの要件)」をすべて達成・解消するまでの期間に応じて設定されます。本事業では「計画策定後、原則として3年間の伴走支援を行うこと」が義務化されているため、計画期間は少なくとも「3年」は必要となります。
ただし、企業の業種特性や固有の事情により、どうしても定められた数値基準を規定期間内に満たすことが難しい場合は、「数値基準の例外」や「小規模企業者の特例」が設けられています。 『マニュアル・FAQ』の規定によれば、これらの特例を利用して計画期間が3年を超える長期になる場合には、伴走支援期間もその計画期間と同期間に設定しなければなりません。さらに、計画の4年目以降については、認定支援機関だけでなく「主要金融機関」による継続的な伴走支援が必須となる点に留意が必要です。
※計画策定の具体的な流れや、成功させるための鍵については以下のガイドもぜひ参考にしてください。
▶ 【405事業 徹底活用ガイド】流れ・メリット・注意点と成功の鍵
『経営改善計画策定支援事業に関する手引き』および実務指針に基づき、原則として以下の内容を網羅した計画書を作成します。
なお、『マニュアル・FAQ』では一部書類の省略規定も明記されています。重要な設備投資や運転資金の変動がないと見込まれ、金融支援を要請する金融機関が不要と認めた場合に限り、詳細なB/SやC/F計算書に代えて、「損益計画」をベースにした「簡易キャッシュフロー計画」と「借入返済計画」で済ませることも認められています。
※本事業の全体像や、活用する際のデメリットについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
▶ 【405事業 徹底解説】経営改善計画策定支援とは?デメリットと失敗しない活用法
今回の改定の目玉である「再生支援出口の明確化」を象徴するのが、この数値基準です。『マニュアル・FAQ』において、原則として以下の3つの基準をすべて満たす計画を作成することが求められています。
もし、これらを満たせない合理的な理由がある場合は、認定支援機関および主要金融機関から協議会に対して合理的な根拠を記載した書面を提出し、確認を受ける必要があります。また、万が一計画の履行が困難になった場合を想定した「出口の方向性(抜本再生や事業承継など)」についてもあらかじめ計画に記載し、他の債権者や主要金融機関の同意を得るという厳しい要件が課されます。
数値基準の3つ目に出てきた「有利子負債の対キャッシュフロー比率(概ね10倍以下)」について、金融機関が事業者の返済能力を測る最重要指標の一つです。『マニュアル・FAQ』には、その明確な計算式と定義が示されています。
【 計算式 】 ≦ 10倍
(有利子負債合計額 - 現預金 - 信用度の高い有価証券等の評価額 - 運転資金の額)
÷
(留保利益 + 減価償却費 + 前事業年度からの引当金の増減額)
計画ができあがったら、金融支援に必要なすべての金融機関から合意を得る「金融機関調整」を行います。ここで実務上、極めて重要な注意点があります。
「全ての金融機関からの同意」を取得するための金融機関調整(交渉)は、原則として「事業者(経営者自身)」が行わなければなりません。認定支援機関は、バンクミーティング等において事業者が円滑に説明ができるように支援する「サポート役」に徹する必要があります。
『マニュアル・FAQ』でも強く警告されている通り、弁護士資格を持たない専門家が、報酬を得る目的で代理人として金融機関と直接交渉することは「非弁行為(弁護士法違反)」に該当します。したがって、本事業で費用負担の対象となる「金融調整サポート費用」は、事業者自身が交渉を行うためのサポート業務(説明資料や質問への対応資料の作成費用等)に限られます。 事業者による調整が難しい場合は、各都道府県の信用保証協会が事務局を務める「経営サポート会議」を活用したり、協議会にサポートを求めたりすることが可能です。
※銀行員がどのような視点で本事業や融資先を見ているかについては、こちらの記事が大変参考になります。
▶ 【銀行員向け】405事業活用のメリットとは?融資先支援と自行収益への貢献
計画が金融機関から同意を得られれば、いよいよ実行フェーズです。改定の大きな柱として、計画策定後、特段の事情がない限り原則として3年間(少なくとも年2回の中間決算・本決算時)の伴走支援を実施し、協議会に報告することが義務付けられました。伴走支援費用の請求を行わない場合であっても、この報告義務は免除されません。
『マニュアル・FAQ』に示されている実務指針によれば、伴走支援は以下の5つの着眼点で行われます。
今回は、経営改善計画策定支援事業(405事業)の改定ポイントについて、「再生支援出口の明確化」と「伴走支援体制の強化」という2つの大きな目的を中心に、実務上重要な7つのポイントを解説しました。
本事業は、単に目の前の資金繰りを乗り切るための対症療法ではなく、中長期的な企業価値向上に向けたガバナンス体制の整備や、PDCAサイクルの構築を通じた「本質的な収益力の改善」を目指す制度へと進化しています。 数値基準の厳格化や伴走支援の義務化、非弁行為への配慮など、支援のハードルは高くなりましたが、それは裏を返せば「本気で会社を立ち直らせるための仕組み」が整備されたということです。
財務上の課題を抱える経営者の皆様、そしてそれを支える専門家の皆様は、ぜひこの制度を正しく理解し、強靭な企業体質への変革を実現してください!
記事で説明した405事業を活用して、自社の財務基盤を盤石にし、本気の事業成長を目指す方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。17年の銀行員経験と、15年のコンサルタントとしての事業性評価(DD)の実績をかけ合わせ、御社の「最強の参謀」として伴走いたします。