「2026年5月から405事業のルールが厳しくなったと聞いた。赤字の会社は利用できないのだろうか」
「返済条件を変更して当面の資金繰りをしのげば、405事業を使えるのではないか」
最初に結論をお伝えします。2026年5月1日改定後の405事業「通常枠」は、返済猶予によって会社を延命するための制度ではありません。計画を実行することで、持続的・安定的に事業を継続し、金融取引を正常化できる見通しが必要です。
したがって、現実的な経営改善策を実行しても事業継続の見通しを描けない会社は、405事業の通常枠を利用する土台に乗りません。
ただし、「現在赤字だから利用できない」「債務超過だから対象外」という意味ではありません。赤字や債務超過を抱えていても、収益力を立て直し、改定後の数値基準を達成できる計画、または例外を適用する合理的な根拠を示せるかどうかが重要です。
この記事では、2026年5月改定後の経営改善計画策定支援事業(通称:405事業)の通常枠について、経営者が判断を誤らないための重点ポイントを実務の視点から解説します。
405事業について、知りたい内容から確認できます
405事業は、財務上の問題を抱える中小企業が、認定支援機関の支援を受けて経営改善計画を策定する制度です。通常枠では条件変更等を受けながら収益力と財務を改善します。リスケジュールは再生時間を確保する手段であり、継続自体が目的ではありません。
経営者が最初に考えるべき問いは、「返済を止められるか」ではなく、「返済負担を抑えている間に、利益とキャッシュフローを回復できるか」です。
そのため、利用を検討する段階では、経営者、主要金融機関、認定支援機関、中小企業活性化協議会などが、事業の収益性、実態財務、改善策の実行可能性を確認します。事業継続可能性の見極めを曖昧にしたまま計画づくりへ進んでも、金融機関が合意できる計画にはなりません。
今回導入された基準には、「経常利益が赤字である場合は概ね3年以内を目処に黒字化する」という内容があります。これは、現在赤字であることだけを理由に対象外とする制度ではないことを示しています。
問われるのは、売上増加や経費削減を並べただけの希望的な計画ではなく、誰が、いつまでに、何を実行し、その結果として利益と返済能力がどこまで回復するのかを説明できるかです。
中小企業庁は、2026年5月1日から405事業の手引きとマニュアル・FAQを改定しました。今回の見直しの柱は、再生支援の出口の明確化と伴走支援体制の強化です。
改定前よりも「計画を作ったか」ではなく、「計画によって会社が再生へ進んでいるか」が重視される仕組みになりました。計画書の完成はゴールではなく、実行管理のスタートです。
公式資料:
405事業の通常枠を利用するには、金融機関による金融支援を予定した計画であることが必要です。改定後の通常枠でいう金融支援は、原則として「条件変更等」を指します。
借換融資や新規融資は、それ自体では改定後の通常枠における金融支援に含まれません。手形を書き換える場合も、申請者と金融機関の間で旧債務を消滅させる意思がなければ、条件変更として扱われます。
一部の債務について条件変更を受けながら、新たな運転資金の融資や借換融資を計画に含めることはあります。このような複合的な計画では、計画実行時に条件変更を受けた債務が、計画に含まれる借換融資や新規融資を含む全債務の50%以上であることが通常枠の対象要件です。
条件変更を受けた債務 ÷ 計画に含まれる全債務
= 50%以上
「新しい融資を受ける計画だから405事業を使える」と考えるのは誤りです。まず、通常枠が求める条件変更等に該当するかを確認する必要があります。
改定後は、計画策定後の伴走支援を原則3年間、少なくとも年2回以上実施します。決算時だけでなく、中間時点でも計画と実績の差を確認し、必要な対応策を検討することが求められます。
伴走支援費用を請求しない場合でも、所定の伴走支援と協議会への報告を省略できるわけではありません。専門家費用の補助を受けるかどうかと、計画の実効性を確認する責任は別の問題です。
業種特性や企業固有の事情により、数値基準を原則期間内に達成することが難しい場合は、数値基準の例外や小規模企業者の特例を検討します。
その結果、計画期間が3年を超える場合は、伴走支援期間も計画期間と同じ期間に設定します。さらに、計画4年目以降は、認定支援機関だけでなく主要金融機関による伴走支援が必須です。
申請前の準備から計画策定、金融機関の同意、伴走支援までの手順は、【405事業の流れ】事前相談・利用申請・計画策定・銀行同意・伴走支援まで解説で詳しく解説しています。
改定後の計画では、表面的な決算書だけで会社を判断しません。回収できない売掛金、実在しない在庫、実際の価値が低下した固定資産などを必要に応じて見直し、会社の実態を反映した貸借対照表を作成します。
計画書には、会社概要・ビジネスモデル・経営課題・基本方針・アクションプラン・伴走支援計画を整理し、実態貸借対照表、損益・キャッシュフロー計画、資金繰表、金融機関別の支援依頼と資産保全状況を盛り込みます。
資料準備の詳細は、経営改善計画書の必要書類一覧|銀行提出前に準備したい資料と確認ポイントをご確認ください。
重要な設備投資や運転資金の大きな変動が見込まれず、金融支援を要請する金融機関が不要と認める場合には、詳細な貸借対照表やキャッシュフロー計算書に代えて、損益計画を基にした「簡易キャッシュフロー計画」と「借入返済計画」で対応できる場合があります。
ただし、書類を簡略化できることと、財務実態の分析を省略できることは同じではありません。会社の実態を把握できなければ、事業継続可能性も判断できないからです。
今回の改定で特に重要なのが、通常枠の計画に求められる数値基準です。原則として、次の基準をすべて満たす計画を策定します。
この基準は、単に数字をきれいに見せるためのものではありません。「いつまで条件変更を続けるのか」「どの時点で正常返済へ戻れるのか」という出口を、経営者と金融機関が共有するための基準です。
業種特性などにより原則基準を満たせない合理的な理由がある場合は、認定支援機関と主要金融機関から協議会へ、合理的な根拠を記載した書面を提出し、確認を受ける必要があります。
また、計画の履行が困難になった場合に備え、抜本的な再生や事業承継などの「出口の方向性」を計画へ記載し、主要金融機関等の同意を得ます。
例外規定は、達成できない計画を形式的に通すための逃げ道ではありません。
原則基準とは異なる再生期間が必要な理由と、それでも事業継続が可能である根拠を、数字と行動計画で説明するための仕組みです。
有利子負債の対キャッシュフロー比率は、会社が生み出すキャッシュフローに対して、実質的な有利子負債が何年分あるかを見る指標です。通常枠では、計画終了年度に概ね10倍以下となる内容を求めています。
【有利子負債の対キャッシュフロー比率】概ね10倍以下
(有利子負債合計額-現預金-信用度の高い有価証券等の評価額-運転資金の額)
÷
(留保利益+減価償却費+前事業年度からの引当金の増減額)
計算では、短期・長期借入金や社債等から現預金・換金性の高い資産・正常運転資金を差し引き、留保利益、減価償却費、対象となる引当金増減を基礎に返済能力を確認します。不良債権や不良在庫を含む決算書の数字をそのまま使わず、資産内容を精査することが重要です。
経営改善計画ができた後は、金融支援を依頼する金融機関へ計画を説明し、同意を得ます。この金融機関調整の主体は、原則として事業者、つまり経営者自身です。
認定支援機関は、経営者が計画の内容と実行意思を説明できるよう、説明資料や想定問答の作成、バンクミーティングでの説明補助などを行います。しかし、弁護士資格を持たない専門家が、報酬を得る目的で事業者の代理人として法律事件に関する交渉を行えば、非弁行為に該当するおそれがあります。
自社だけで調整することが難しい場合は、信用保証協会が事務局を務める経営サポート会議や、中小企業活性化協議会へ相談する方法があります。法的な交渉が必要な場面では、弁護士との連携も検討すべきです。
銀行側から見た活用目的と実務上の注意点は、【銀行員向け】405事業のメリットと注意点|融資先支援・行内判断・伴走支援の実務で詳しく解説しています。
認定支援機関側の受任判断と事前確認は、【認定支援機関向け】405事業の受任判断|4つの失敗事例と7つの事前確認で整理しています。
メインバンクから405事業の利用を提案された経営者は、銀行から405事業を提案されたら?確認すべき5項目と次に行う準備も併せてご確認ください。
金融機関から計画への同意を得た後は、実行段階へ移ります。伴走支援では、少なくとも年2回以上、計画の進捗と課題を確認し、協議会へ報告します。
実務では、次の着眼点が重要です。
計画未達を隠すことが伴走支援ではありません。計画との差を早く見つけ、資金が尽きる前に手を打つことが伴走支援の役割です。
すでに計画と実績の差が大きくなっている場合は、【経営改善計画が未達】銀行へ提出する修正計画の作り方|差異分析と資金繰りで、金融機関への説明方法を確認できます。
良い経営改善計画は、作成時点で完璧な計画ではありません。
前提条件が変わったときに実績を確認し、打ち手を修正できる計画です。
「AI経営参謀」で自社の現状と不足資料を整理できます
必要資料:自社の直近2~3期分の決算書・申告書一式、最新試算表、借入金一覧・返済予定表、今後6か月程度の資金繰り表。数値基準との距離を確認する場合は、売掛金・在庫・固定資産の実態が分かる明細も用意してください。
質問例:「添付した当社資料から、実態財務と資金繰りの課題、405事業を検討する前に不足している資料を整理してください。資料だけで判断できない点は推測せず示してください。」
判定限界:AIは405事業の利用可否、事業継続可能性、金融機関の同意・融資・条件変更を判定または保証できません。第三者企業の資料分析や専門家業務の代行には対応していません。最終判断は主要金融機関、認定支援機関、中小企業活性化協議会等へ確認してください。
405事業の通常枠は、単なるリスケの継続によって会社を延命する制度ではありません。持続的・安定的な事業継続と金融取引の正常化を見通せる会社が、実行可能な計画を作り、金融機関と専門家の伴走を受けながら再生へ進むための制度です。
赤字や債務超過だけで対象外にはなりません。ただし、改善後もキャッシュフローと事業継続の根拠を示せない場合は、事業承継、事業譲渡、廃業等の別の出口も早期に検討します。
①条件変更中に本業を黒字化できるか、②売上・原価・固定費・資産を実態どおり把握しているか、③債務超過解消・黒字化・CF倍率の達成時期を説明できるか、④経営者自身が金融機関へ計画と実行意思を説明できるか、⑤伴走支援を受けながら改善行動を続けられるかを確認します。
405事業を利用するかどうかの判断で最も重要なのは、制度へ申請できるかではありません。会社が再生できるのか、そのために何を変えなければならないのかを、早い段階で正確に見極めることです。
※本記事は、2026年5月1日改定の405事業「通常枠」を中心に解説しています。個別案件の利用可否、例外・特例の適用、金融機関調整の方法は、所在地の中小企業活性化協議会、主要金融機関、認定支援機関等へご確認ください。
金融機関・信用金庫等のご担当者様へ|案件相談はお電話で
405事業の提案前や専門家への紹介検討段階でも、案件概要を伺います。最初のお電話では企業名等は不要です。所属金融機関の規程に従い、開示可能な範囲でご相談ください。
089-904-1437
受付:月~土曜日 9:00~18:00(祝日を除く)
受付方針の詳細:405事業の紹介案件相談|金融機関・支援機関向け受付窓口
※案件概要の事前確認は無料です。ただし、お電話によって当事務所の受任、405事業の利用、計画への同意、金融支援の実施を確約するものではありません。