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なぜ利益が出ているのに資金が不足するのか?社長が見るべき「キャッシュフロー計算書」の作り方・読み解き方

「損益計算書では黒字なのに、なぜか手元の資金がいつも足りない…」

「銀行に追加融資を頼みたいが、自社の本当の返済能力が分からない…」

「資金繰りの不安を解消し、もっと攻めの経営をしたい!」

こうしたお悩みを持つ経営者の方は少なくありません。その原因の多くは、お金の流れを正確に把握できていないことにあります。決算報告書に含まれる貸借対照表や損益計算書は重要ですが、それだけでは会社の実質的な資金状況は見えにくいものです。そこで重要になるのが、**キャッシュフロー計算書(CF計算書)**です。

本記事では、中小企業支援コンサルタントの視点から、キャッシュフロー計算書の基本的な作り方から、経営に活かすための読み解き方、そして改善ポイントまでを網羅的に解説します。この記事を読めば、なぜキャッシュフロー計算書が重要なのか、そしてそれをどう経営判断に役立てるのかが明確になるはずです。

 

キャッシュフロー計算書(CF計算書)への意識が低い現状

日々のコンサルティング現場で多くの経営者様とお話しする中で、「損益計算書はしっかり見ているが、CF計算書はあまり意識したことがない」というケースに頻繁に出会います。しかし、会社の資金繰りの実態や改善点は、CF計算書を見ることで明確に浮かび上がってきます。

特に、赤字からの立て直しや資金繰り改善に取り組む際には、過去数年分のCF計算書を作成し、お金の流れを客観的に把握することが最初のステップとなります。

キャッシュフロー計算書(CF計算書)とは何か?

CF計算書とは、一会計期間における会社の現金の出入り(キャッシュ・インとキャッシュ・アウト)を詳細に示した報告書です。この「現金」には、現金同等物(容易に換金可能で価値変動リスクの少ない短期投資など)も含まれます。CF計算書は、以下の3つの活動区分で構成されます。

1. 営業活動キャッシュフロー(営業CF):

本業の営業活動から生み出された、または使用された現金の流れを示します。

・主なプラス要因(現金の増加): 税引前当期純利益、減価償却費、売掛債権の減少、棚卸資産(在庫)の減少、仕入債務(買掛金・支払手形)の増加など。
・主なマイナス要因(現金の減少): 税引前当期純損失、売掛債権の増加、棚卸資産(在庫)の増加、仕入債務(買掛金・支払手形)の減少、法人税等の支払額など。

2. 投資活動キャッシュフロー(投資CF):

将来の利益獲得や事業維持のために行われる投資活動に伴う現金の流れを示します。

・主なプラス要因(現金の増加): 固定資産の売却収入、有価証券の売却収入、貸付金の回収など。
・主なマイナス要因(現金の減少): 固定資産の取得支出、有価証券の取得支出、貸付金の実行など。

3. 財務活動キャッシュフロー(財務CF):

資金調達や返済といった財務活動に伴う現金の流れを示します。

・主なプラス要因(現金の増加): 借入金の増加(新規借入)、社債発行、増資(株式発行)、補助金収入など。
・主なマイナス要因(現金の減少): 借入金の返済、社債の償還、自己株式の取得、配当金の支払いなど。

以下は、一般的なキャッシュフロー計算書のひな形(主要項目)です。

キャッシュフロー計算書(CF計算書)の作り方

顧問税理士に依頼すれば会計ソフトで作成してもらえますが、経営者自身が内容を理解するためにも、一度は手作業で作成の流れを掴んでおくことをお勧めします。会計ソフトによる自動作成では、実態とズレが生じる場合があり、その場合は修正が必要です。例えば、機械設備に関する補助金収入は、会計ソフトでは営業CFに計上されることがありますが、一時的なものであり、実態としては財務活動(財務CF)に近い性質を持つと考えられます。

ここでは、5年間のCF計算書を作成する場合を例に、必要な資料と基本的な手順を解説します。

準備する資料

① 6年間の決算報告書(貸借対照表、損益計算書): 前期との増減額を確認するため、5年分のCF計算書作成には6期分の決算書が必要です。
② 固定資産台帳(または償却資産台帳): 個別の固定資産の減価償却費や取得・売却価額を把握するために使用します。通常、税理士事務所が作成・保管しています。
③ 不動産売買契約書など: 不動産の売買があった場合、その時期や金額を確認します。
④ 役員保険の解約返戻金明細など: 保険解約による収入があった場合に確認します。
⑤ 過去5年間の預金通帳: 実際の入出金を確認するために使用します。

CF計算書に数値を入力する時の考え方

上記の資料を基に、CF計算書の各項目に数値を入力していきます。その際、各項目が会社の現金を増やす(プラス)か減らす(マイナス)かで判断するのが基本です。

① 営業CFの主な項目

・税引前当期純利益:プラス
・減価償却費:プラス(費用計上されているが現金の支出はないため、利益に加算して調整)
・売掛債権の増減:前期比増加はマイナス(入金が遅れている)、減少はプラス(回収が進んだ)
・棚卸資産(在庫)の増減:前期比増加はマイナス(在庫にお金が寝ている)、減少はプラス(在庫が現金化された)
・仕入債務(買掛金・支払手形)の増減:前期比増加はプラス(支払いが猶予されている)、減少はマイナス(支払いが進んだ)
・未払金の増減:前期比増加はプラス、減少はマイナス

② 投資CFの主な項目

・固定資産の取得による支出:マイナス
・固定資産の売却による収入:プラス
・貸付金の実行による支出:マイナス
・貸付金の回収による収入:プラス
・投資有価証券の取得による支出:マイナス
・投資有価証券の売却による収入:プラス
・役員保険の解約返戻金収入:プラス

③ 財務CFの主な項目

・借入金の増加(新規借入):プラス
・借入金の返済:マイナス
・社債発行による収入:プラス
・補助金収入:プラス
・自己株式の取得による支出:マイナス
・配当金の支払額:マイナス

これらの考え方に基づき、ひな形に数値を当てはめていきます。Excelなどの表計算ソフトでテンプレートを作成しておくと効率的です。

フリーキャッシュフロー(FCF)は銀行融資の返済財源

CF計算書を読み解く上で非常に重要な指標が、**フリーキャッシュフロー(FCF)**です。

※フリーキャッシュフロー(FCF) = 営業CF + 投資CF

FCFは、会社が本業で稼いだ現金(営業CF)から、事業維持や成長に必要な投資に使った現金(投資CF)を差し引いた残り、つまり会社が自由に使える現金がどれだけあるかを示します。このFCFこそが、銀行融資の返済や株主への配当などの原資となります。

端的に言えば、FCFがプラスであれば、企業は外部からの資金調達に頼らずに事業活動から得た資金で投資を行い、さらに余剰資金を生み出している状態です。逆に、FCFがマイナスの場合、営業活動と投資活動で資金が不足していることを意味し、その不足分を財務CF(主に借入金)で補わなければ資金繰りが成り立ちません(手元資金の取り崩しで対応する場合を除く)。

**FCFのマイナスが恒常化している状態は、銀行融資の返済財源がないことを意味し、金融機関からの信頼を得ることは難しくなります。**追加融資も困難になり、いずれ財務が行き詰まるリスクが高まります。

3つのCFと現預金増減の関係性

営業CF、投資CF、財務CFの3つの関係性を整理すると以下のようになります。

1. 営業CF + 投資CF = フリーキャッシュフロー(FCF)
2. FCF + 財務CF = 合計キャッシュフロー
3. 合計キャッシュフロー = 現預金の増減額

つまり、1年間の合計キャッシュフローがプラス500万円であれば、期末の現預金残高は期首に比べて500万円増加します。逆にマイナス500万円であれば、500万円減少します。この関係は必ず一致するため、CF計算書の検証にも役立ちます。

キャッシュフロー(CF)を5年分合計して分析する

CF計算書を作成する際は、単年だけでなく、最低でも過去3~5年分を作成し、その推移や合計値を見ることを強くお勧めします。お金の動きは、単年だけでは見えにくい傾向や構造的な問題点も、複数年で比較・分析することで明らかになります。

・5年間で営業CFはどれだけ生み出せたか?(本業の稼ぐ力は向上しているか?)
・5年間でどれだけの設備投資(投資CF)を行ったか?(将来への投資は適切か?過大ではないか?)
・5年間で借入金は増えたのか、減ったのか(財務CF)?
・財務CFが増加(借入増)している場合、その原因は営業CFの不足なのか、積極的な設備投資によるものなのか?

このように複数年のデータを見ることで、自社の資金構造のパターンや課題、将来のリスクなどをより深く理解できます。必要であれば10年といったより長期で分析することも有効です。

キャッシュフロー(CF)を改善するためには

CF計算書でお金の流れを把握し、問題点が見えてきたら、具体的な改善策を実行に移します。最も重要なのは、営業CFを安定的にプラスにし、その範囲内で投資CFのマイナスをコントロールすることで、FCFをプラスに保つことです。FCFがプラスであれば、銀行融資の返済財源が確保され、財務の安定性が高まります。

営業CFを改善する主な方法

・黒字化の徹底と利益率の向上: 売上増加、コスト削減、不採算事業の見直しなど。
・売上債権の回収サイト短縮: 請求漏れの防止、早期入金の交渉、ファクタリングの活用検討など。
・棚卸資産(在庫)の適正化: 過剰在庫の削減、発注サイクルの見直し、滞留在庫の処分など。
・仕入債務(買掛金・支払手形)の支払サイト交渉: 可能な範囲での支払い猶予交渉。
・固定費の見直し: 家賃、人件費、その他経費の聖域なき見直し。

投資CFをコントロールする方法

・投資対効果の厳格な評価: 不要不急な設備投資の抑制、投資回収期間の明確化。
・遊休資産の売却: 使用していない土地、建物、機械などの現金化。

財務CFを健全化する方法

・借入金依存度の低減: 内部留保の充実、増資による自己資本強化。
・有利な条件での借り換え: 金利負担の軽減、返済期間の長期化による月々の負担軽減(ただし、総返済額が増える可能性も考慮)。

具体的な改善策については、以下の関連記事も参考にしてください。

[関連記事]「【営業利益マイナス】は放置厳禁!その理由と具体的な改善策を徹底解説(2025年版)
[関連記事]「【在庫 多い?】決算書の棚卸資産は大丈夫?原因と対策・銀行の見方(2025年版)

最新情勢とCF管理の重要性

近年、経済の不確実性が高まり、金融機関も企業の返済能力をよりシビアに見る傾向が強まっています。このような状況下では、手元資金を厚くし、キャッシュフローを安定させることが企業存続の生命線となります。

また、DX(デジタルトランスフォーメーション)の流れの中で、CF管理を効率化するクラウド会計ソフトや予実管理ツールも進化しています。これらを活用し、リアルタイムに近い形で資金状況を把握することも、迅速な経営判断につながります。

重要なのは、CF計算書を単なる過去の記録としてではなく、未来の経営戦略を立てるための羅針盤として活用することです。

まとめ:キャッシュフロー経営で財務安定と成長を目指す

「黒字倒産」という言葉があるように、利益が出ていても資金がショートすれば会社は立ち行かなくなります。社長自身が損益だけでなく、キャッシュフロー(お金の流れ)をしっかりと理解し、管理する「キャッシュフロー経営」を意識することが、企業の財務安定と持続的成長のためには不可欠です。

本日お話ししたCF計算書の作り方と読み解き方を第一歩として、ぜひ自社の財務状況の把握と改善にお役立てください。

キャッシュフロー改善・資金繰りに関するご相談はこちら

「自社のキャッシュフロー計算書を分析してほしい」
「資金繰りが厳しい状況を具体的にどう改善すればよいかアドバイスが欲しい」
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このようなお悩みやご要望がございましたら、どうぞお気軽に当事務所までお問い合わせください。

中小企業診断士・経営コンサルタントが、貴社の状況を詳細にヒアリングし、キャッシュフロー分析から具体的な改善策の立案、実行支援まで、親身になってサポートいたします。

初回のご相談は無料ですので、まずはお気軽にご連絡ください。

この記事が、貴社のより良い未来のための一助となれば幸いです。

 

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