「会社が赤字に転落してしまった…社長である自分の役員報酬は下げるべきなのだろうか?」
「現金がないので役員報酬を『未払い』にして帳簿上だけ計上しているが、これってまずいこと?」
「銀行から『赤字なのに役員報酬が高すぎる』と暗に指摘された。どう対応すればいい?」
会社が赤字になっただけで、役員報酬を一律に減額しなければならないわけではありません。
ただし、赤字が続き、今の報酬が資金繰りや返済を圧迫している場合は、減額を含めた見直しが必要です。赤字の原因、会社に残す資金、社長の生活を確認し、変更前に税務上の要件と会社の決議手続きを整理します。
愛媛県を中心に全国の企業の財務戦略を支援する和田経営相談事務所では、役員報酬を聖域にせず、会社の支払能力と経営者の役割に照らして説明できる水準にすることを重視しています。この記事では、赤字時の減額判断と実行手順を解説します。
まず、本業の赤字が続いているのか、一時的な損失で最終赤字になったのかを分けます。減価償却費などの影響もあるため、決算上の赤字と現預金の減少額は一致しません。

継続的な赤字に加え、報酬の未払いが積み上がっているなら、現在の水準を続けられるかを早急に見直します。一方、一時的な赤字で資金と回復の見通しがある場合は、据え置く理由を数字で整理します。
「赤字ならゼロ」「最低限の生活費まで下げれば正解」という共通の基準はありません。会社が継続して負担できる額と、経営者が職務を続けられる生活の条件を、両方確認します。
| 会社側で確認すること | 経営者側で確認すること |
|---|---|
| 減額後の損益、毎月の支払・返済、必要な運転資金、改善策の費用。 | 税金・社会保険料を差し引いた手取り、家計支出、個人の返済、他の収入。 |
生活費は判断材料ですが、税務上認められる報酬額や、銀行が納得する金額を自動的に決めるものではありません。職務内容や会社の収益力も踏まえて検討します。
減額案は今後6~12か月の資金繰り表へ反映し、会社に残る現金がどの月にいくら増えるかを確認します。もともと支払えていなかった報酬を減らす場合は、費用の減少と直ちに増える現金を同じ効果として数えないようにします。
減額だけで資金不足が解消しない場合は、価格・原価・回収条件なども改善する必要があります。役員報酬を下げたことで、赤字の原因への対応を止めないことが大切です。
決まった報酬をまだ支払っていない状態と、社長が会社へ資金を貸した状態は異なります。「未払いだから役員借入金」「役員借入金があるから不健全」と一括りにしないでください。
未払報酬については、誰に、何月分を、いくら支払う義務が残っているかを確認します。社長からの入金や立替えについては、通帳・領収書・契約などから発生経緯を確認し、実態に合う勘定科目と明細で管理します。
また、今後の月額を減らすことと、既に発生した未払報酬を放棄することは別の取扱いです。過去の未払分を帳簿から消したり、借入金へ振り替えたりする前に、合意内容と税務処理を顧問税理士へ確認してください。
「現金を受け取っていないから税金も保険料もかからない」とは限りません。一方で、すべてを支払済みとして扱うという説明も正確ではありません。
| 確認する項目 | 基本的な考え方 |
|---|---|
| 給与所得の収入時期 | 通常の給与で支給日が決まっている場合は、その支給日が基準です。未払いでも収入へ含まれることがあります。 |
| 会社の源泉徴収 | 毎月の給与は、原則として実際に支払う際に行います。一部支払いの場合は、その支払額に対応する税額を徴収します。 |
| 健康保険・厚生年金 | 保険料には標準報酬月額が関係します。未払いだけで自動的にゼロにならず、報酬を減額しても直ちに同じ割合で下がるわけではありません。 |
年末調整の対象者では、対象期間の支払いが確定した未払給与も計算へ含めます。役員賞与には源泉徴収の特例もあるため、毎月の報酬と分け、未払額・源泉徴収票・申告を顧問税理士と照合してください。社会保険の改定要件と届出は、社会保険労務士や年金事務所へ確認します。
参考:国税庁「給与所得の収入金額の収入すべき時期」「給与が一部未払の場合の源泉徴収」「年末調整の対象となる給与」、日本年金機構「随時改定(月額変更届)」
会社として報酬を変更する手続きと、その給与を法人税の計算で損金に算入できるかは、分けて確認します。ここでは、毎月支払う報酬に関係する「定期同額給与」を扱います。
定期同額給与は、月単位など一定の間隔で同額を支給する給与です。通常の年次改定は原則として会計期間開始から3か月以内に行い、改定前と改定後の各期間でそれぞれ同額となることなどを確認します。
職務の重大な変更などの「臨時改定事由」や、経営状況の著しい悪化などの「業績悪化改定事由」による改定もあります。後者は減額が対象です。
参考:国税庁「役員に対する給与」
一時的な資金繰りの都合や、単なる業績目標の未達は、業績悪化改定事由に含まれません。減額が避けられない客観的な事情を説明する必要があります。
国税庁のQ&Aでは、銀行との返済条件変更の協議で減額せざるを得ない場合などが例示されています。ただし、担当者から高いと言われただけで、税務上の要件が自動的に整うわけではありません。協議記録や改善計画を顧問税理士へ提示して判断します。
要件に合わない改定では、給与の一部が損金不算入となる場合があります。赤字会社でも影響を確認し、減額後の増額や役員賞与の変更も、その都度要件を確かめてください。
参考:国税庁「役員給与に関するQ&A」
議事録には金額だけでなく、決定日、適用する支給時期、減額理由を記録します。後から日付をさかのぼらせて手続きを整えるのではなく、実際の決定と支給の経緯を残してください。
通常時の報酬設計は、社長の役員報酬の決め方|利益・資金繰りから翌期の金額を考えるで解説しています。
当事務所の実務上の見解として、銀行への説明では「社長も報酬を下げました」で終わらせず、赤字の原因をどう改善し、支払いと返済をどう続けるかまで示すことが大切です。
現在の報酬と減額案、未払分の支払予定、他の改善策、実施時期を一つの計画へまとめます。据え置く場合も、職務内容や資金の見通しから理由を説明します。減額した事実だけで融資や返済条件変更が認められるものではありません。
返済条件の変更が必要な場合は、資金が尽きる前にメインバンクへ相談してください。
「赤字になった自社の報酬を、どこから見直せばよいか」という方は、画面右下のAI経営参謀をご利用ください。最初に用意するのは、直近2期分の決算書です。役員報酬が分かる決算書の明細も、一緒に添付してください。
コピーして使える質問例
会社が赤字となり、役員報酬の見直しを考えています。添付した直近2期分の決算書から、売上・利益・役員報酬・現預金の推移と、確認できる未払金や役員借入金を整理してください。まず資料から分かることを示し、本人の報酬額、未払いの内容、減額案などは必要な順に一つずつ質問してください。不明な数字や処理は推測せず、税務・社会保険の手続きや銀行への説明で確認する論点を教えてください。
追加の数字や資料は、詳しい検討に必要になった段階で確認します。AIの回答は一次整理です。決算書だけで将来の資金繰り、税務要件への該当性、銀行の審査結果は確定できません。減額を実行する前に、担当専門家と条件を確認してください。
添付するのは、利用権限のある自社資料です。他社・顧客・融資先の資料や行内資料は投入せず、不要な個人情報を除いてください。利用前にプライバシーポリシーをご確認ください。
赤字時の役員報酬は、赤字の原因と支払能力を確認し、減額の必要性・金額・時期を決めます。未払分を整理し、税務と会社の手続きを確認したうえで、改善計画へ反映することが基本です。
減額の税務判断は、まず顧問税理士へご相談ください。役員報酬を含めた収益・資金繰りの見通しや、銀行へ説明する計画を整理したい経営者の方は、当事務所の初回無料相談をご利用いただけます。