お問合せ

長期借入金返済余力の見方|決算書で元金償還能力を判定する方法【2026年版】

「毎月の試算表も期末の決算書も、最終利益は黒字になっている。それなのに、なぜ通帳の残高が増えず、資金繰りの心配がなくならないのか」

一定の売上基盤を築き、次の設備投資や事業拡大を考えている中小企業ほど、この問題に直面することがあります。

原因の一つが、損益計算書には表示されない長期借入金の元金返済です。利益が出ていても、本業から生み出す返済財源を上回る元金返済が続けば、会社の預金は徐々に減っていきます。

確認すべきなのは、決算書が黒字かどうかだけではありません。「自社が年間に生み出せる返済財源」と「実際の年間元金返済額」のバランスです。

この記事では、決算書と借入金返済予定表を使って、長期借入金返済余力と元金償還能力を簡易判定する方法を解説します。


黒字なのにお金が足らないと悩む経営者

黒字でも資金が残らない理由

経営者が決算書を見るとき、最初に注目しやすいのが損益計算書の最終利益です。税引後当期純利益が黒字なら、それだけ会社にお金が増えたように感じるかもしれません。

しかし、利益と手元資金の増減は一致しません。特に大きな影響を与えるのが、長期借入金の元金返済です。

元金返済は損益計算書に出てこない

借入金の元金返済は、借りていた負債を減らす取引であり、経費にはなりません。そのため、毎月多額の資金が流出していても、元金返済額は損益計算書に表示されません。

  • 借入金の利息は経費となり、損益計算書に表示される
  • 借入金の元金返済は経費にならず、損益計算書には表示されない

つまり、決算書上は利益が出ていても、その利益を上回る元金返済があれば、手元資金は減少します。

「黒字だから返済できている」と考えるのは危険です。
黒字額ではなく、返済に使える資金と元金返済額を分けて確認する必要があります。

元金償還能力の基礎となる「返済財源」

長期借入金の元金は、基本的に本業から生み出した資金によって返済します。その返済に充てられる資金を、ここでは「返済財源」と呼びます。

返済財源を把握するための基本的な考え方は、次のとおりです。

基本的な返済財源
= 税引後当期純利益 + 減価償却費

減価償却費は費用として利益を減らしますが、その期に同額の現金が流出するものではありません。そのため、返済に使える資金を考える際には、税引後当期純利益へ加えます。

減価償却について詳しく確認したい方は、以下の記事も参考にしてください。

【参考記事】【元銀行員が警告】税理士の「減価償却を見送りましょう」は黒字倒産の罠!リース資産の例外と真の返済財源(2026年版)

過去2期の平均で継続的な力を見る

単年度の利益には、一時的な売上増加や費用発生などによる振れがあります。そこで、直近1期だけではなく、過去2期の補正後数値を平均し、継続的に生み出せる返済財源を確認します。

例えば、補正後の「税引後利益+減価償却費」が1期前は800万円、2期前は700万円だった場合、平均返済財源は次のようになります。

1期前の補正後返済財源:800万円

2期前の補正後返済財源:700万円

2期平均:(800万円+700万円)÷2=750万円

この会社が平常的に生み出せる年間返済財源は、簡易判定上750万円と考えます。

「真の返済財源」を求めるための補正

「税引後当期純利益+減価償却費」をそのまま使うだけでは、継続的な元金償還能力を実態より大きく、または小さく見積もる可能性があります。

そこで、過去2期の決算書について、次の補正を行います。

一過性の特別損益を除外する

不動産売却益などの特別利益は、その期に一度だけ発生した利益であり、毎年の返済財源として期待することはできません。反対に、株式売却損などの特別損失も、継続的に発生するものでなければ本業の収益力と分けて考えます。

  • 不動産売却益など、一過性の特別利益の影響を除く
  • 株式売却損など、一過性の特別損失の影響を除く

税金への影響を含む具体的な補正方法は、決算内容によって異なるため、必要に応じて顧問税理士などへ確認してください。

リース資産の減価償却費を除外する

減価償却費の中にファイナンス・リース資産分が含まれている場合、その金額をそのまま返済財源へ足し戻すと、元金償還能力を過大に見る可能性があります。

リース料として現金が流出しているため、リース資産に対応する減価償却費は除外します。対象額は固定資産台帳や法人税申告書の別表16などで確認します。

真の返済財源を把握するポイントは、毎年繰り返し生み出せる資金だけを残すことです。

年間元金返済額は返済予定表から確認する

返済財源を算出したら、次は実際の年間元金返済額を確認します。

年間元金返済額は、決算書に記載された長期借入金残高だけでは分かりません。各金融機関から交付されている「長期借入金返済予定表」を用意してください。

全金融機関・全借入を合算する

  • 金融機関ごとに、すべての長期借入金返済予定表をそろえる
  • 毎月の返済額から利息を除き、元金部分だけを確認する
  • 全借入の元金を12か月分合計し、年間元金返済額を求める

例えば、全借入を合計した毎月の元金返済額が160万円であれば、年間元金返済額は1,920万円です。

月額元金返済額160万円 × 12か月
= 年間元金返済額1,920万円

長期借入金返済余力をシビアに判定する

真の返済財源と年間元金返済額が分かれば、自社の長期借入金返済余力を計算できます。

長期借入金返済余力
= 2期平均の補正後返済財源 − 年間元金返済額

先ほどの事例では、返済財源が750万円、年間元金返済額が1,920万円です。

平均返済財源:750万円

年間元金返済額:1,920万円

返済余力:750万円−1,920万円=▲1,170万円

本業から生み出す返済財源に対し、年間1,170万円の元金返済が不足している状態です。この不足分は、既存預金の取り崩し、資産売却、新たな借入、経営者からの資金投入など、別の資金で埋めなければなりません。


長期借入金返済能力判定シート
返済財源と年間元金返済額を比較し、長期借入金返済余力を確認します。

簡易判定の3つの状態


  • 返済余力がプラス既存借入の元金を返済した後にも余力が残る状態です。ただし、追加融資の可否は資金使途、今後の業績、財務内容などを含めて判断されます。

  • 返済財源と元金返済額がほぼ同額現在の返済はできていても、業績悪化や追加返済を吸収する余裕が乏しい状態です。
  • ×
    返済余力がマイナス既存借入の返済負担が本業の返済財源を上回っています。現状のまま追加借入を申し込んでも、金融機関は返済可能性を慎重に確認します。

返済余力がプラスでも、追加融資が自動的に受けられるわけではありません。
新たな借入後の年間元金返済額まで含めて、返済財源の範囲に収まるかを確認する必要があります。

返済余力が不足している場合の改善方向

返済余力がマイナスだからといって、追加融資によって不足分を埋め続ければよいわけではありません。新たな借入にも返済が始まるため、構造的な不足がさらに大きくなる可能性があります。

まずは不足額を明確にし、収益力と返済条件の両面から改善策を検討します。

  • 利益改善によって、継続的な返済財源を増やす
  • 不要な資産の売却により、借入残高や資金負担を減らす
  • 長期借り換えを検討し、毎月の元金返済額を圧縮する
  • 必要に応じて、返済条件の変更を金融機関へ相談する

金融機関へ相談する際は、「資金繰りが苦しい」という説明だけでなく、補正後返済財源、年間元金返済額、不足額、改善計画を数字で示すことが重要です。

当事務所の「AI経営参謀」も、ぜひ気軽にお試しください。
財務、資金繰り、銀行融資、経営改善などの疑問を、画面右下の「AI経営参謀に聞く(無料)」から質問できます。

まとめ|返済能力は利益ではなく返済後の余力で見る

長期借入金の返済能力は、決算書の最終利益だけでは判断できません。

過去2期の税引後当期純利益と減価償却費を確認し、一過性の特別損益やリース資産分を補正したうえで、年間元金返済額と比較する必要があります。

長期借入金の真の元金償還能力とは、利益が出ているかどうかではなく、本業から生み出す返済財源で年間元金を返した後に、どれだけ余力が残るかです。

経営者が確認しておきたい5つの質問

  • 過去2期の補正後返済財源を計算しているか
  • 特別損益やリース資産分を除外しているか
  • 全金融機関の年間元金返済額を合算しているか
  • 返済財源と年間元金返済額の差額を把握しているか
  • 追加借入後の返済額まで含めて余力を確認しているか

この計算は、自社の元金償還能力を把握するための簡易判定です。実際の資金繰りや融資判断では、売掛金、在庫、設備投資、今後の収益計画なども関係します。

まずは自社の不足額や余力を数字で把握し、その結果を資金調達や財務改善の出発点にしてください。

自社の財務基盤を盤石にし、本気の事業成長を目指す方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。

代表 和田との 30分無料相談を予約

「長期借入金返済余力の見方|決算書で元金償還能力を判定する方法【2026年版】 」
ご覧いただきありがとうございました。

資金繰りを改善する

関連記事

お問合せ
セミナーの依頼
 
注目の記事カテゴリ

経営者の方へ

銀行員の方へ

中小企業診断士の方へ

ページトップ