今回はシリーズ4回目、最終回です。決算書の貸借対照表や損益計算書の内訳である、付属明細書について、お話したいと思います。
【目次】
決算書を渡すとき、付属明細書をコピーせずに渡そうとすると、銀行員から「付属明細書(勘定科目内訳明細表)もいただけますか。」と言われます。理由は、この明細がないと、銀行は決算書の分析に困るからです。以下のようなポイントを確認しています。書くことが多くなるので一部だけ抜粋してご紹介します。
【貸借対照表】
①現預金の内訳
自行と他の銀行との残高バランスをみます。メイン行でありながら、期末の預金残高が他の銀行より少なければ、いい顔をしません。「なぜですか。」と聞かれたりします。また他行との定期性預金のバランスも見ています。
この感覚が、経営者と銀行員とでかみ合わないことがあります。銀行員の感覚では、借入金が多いところがメインバンクであり、預金も当然多くあるべき、という意識ですが、経営者は必ずしもそういう意識でないことがあります。どちらがどうというわけではなく、立場が違うと、そういうものだということです。
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②売掛金
内訳を確認しています。3期分を見比べて、毎年同じ金額で上がっている取引先はないか確認します。(同じ金額で、同じ取引先は、回収できていない不良債権の可能性がある)
③受取手形
手形振出し先はどこか、確認しています。同時に、手形のサイト(入金までの期間)を確認しています。受取手形の中で、不渡りになっているものはないか、確認しています。
④その他流動資産
特に仮払金、長短貸付金、未収入金、投資有価証券等は念入りにチャックします。この中に不良資産が隠れているケースが多いからです。
⑤支払手形
手形をどこに対して振出しているか、振出しのサイトは長期化していないか確認しています。手形サイトが長ければ、仕入代金の支払ではなく、手形振出先から融資を受けているのではないか、疑います。
⑥借入金
借入金には長期と短期があります。これは、現預金と同様、自行と他銀行とのバランスを見ています。他銀行の金利はどうなっているか、他銀行の残高の急な増減はないか、確認しています。他銀行が増加していれば、場合によっては要因はなにか、企業からヒアリングしに行きます。経営者からみれば、「なんでそんなこと説明せないかんのや。」ということにもなりかねないため、銀行員は慎重にヒアリングします。
他銀行の残高が、減少していれば減少していたで、他銀行は資金引き上げ(いわゆる以前言われた貸し剥がし?)の姿勢ではないか、ということで不安になります。とにかく借入金は、他銀行の動向を注視しています。
【損益計算書・販売管理費】
①売上
事業別売上や商品別売上を確認しています。コア事業はなにか、どう推移しているか確認しています。
②役員報酬
親族間でどれだけ、親族以外の役員にどれだけ払っているか確認しています。
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③特別利益・特別損失の内訳
今期だけの一過性のものか、恒常的に発生していくものか、確認しています。それにより真の収益力を把握しようとしています。
以上、一部抜粋ですが、銀行員は付属明細についてこんなところを確認しています。
4回に渡りシリーズで、「銀行員は決算書のどこを見ているか」をご紹介してきました。これはほんの一部です。もっともっと詳しく見ています。銀行員は決算分析に関してプロです。データ分析も進んでいます。
私が営業をしていた時、1ページ目に〇〇銀行用と書いた決算書をいただいたことがあります。その企業は、銀行別に何種類かの決算書を作成していて、混乱して違う銀行に渡してしまった、という笑えない話もあります。信頼を失くしてしまいます。
やはり正直が一番のような気がします。
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