昨年来、金融庁が「協議会版資本性借入金」(DDS)を金融円滑化出口戦略の目玉に据えて、通達等で金融機関に積極活用を促してきました。
金融庁の力の入りようと比較して、現場の金融機関担当者のDDSに対する冷めた態度に、事業再生に関わるものとして、ギャップを感じていました。経営改善計画策定の現場では、金融機関との連携が重要になります。共同作業を行う中で、こちらからDDSに水を向けても担当者はまず乗ってきません。
先日東京でセミナーに出席した際、中部エリアで活躍しているコンサルの方が同じようなことを言っていました。やはり全国的に同じような傾向なのだと感じました。
なぜ、金融庁の方針と実際の再生現場ではギャップがあるのでしょうか。金融庁の言い分はこうです。「協議会版DDSを活用することで、DDSの部分は金融検査上自己資本と見做すことができる。そのため債務者の債務者区分があがり、資金調達が容易になるとともに、金融機関側から見れば、債務者の債務者区分が上昇することで、貸倒引当金の計上が少なくて済む。また新たにDDSを実行することで発生する引当金(劣後するのでかなりの追加引き当てが必要になる)については、協議会を通すことで、無税償却が可能となる。」 確かに机上の空論ではその通りです。
しかし、察するに銀行サイドは、DDSをすることで劣後化する債権の引当金と、債務者区分が上がることで戻ってくる引当金を比較して、DDS活用を躊躇しているのだと思います。(ほとんどのケースで前者の方が大きいと推察され、DDSを活用することで銀行が損失を被る。)
貸倒引当金のこのルールを改善しないと、DDSの活用は思い通り進みませんね。個人的にはそんな風に思います。
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