【この記事で分かること】
・ 社長がメインバンク変更を考えるシチュエーション
・ メインバンク変更の盲点となること
・ メインバンク変更がやむを得ないケース
・ 社長の個人取引をメインバンクから変更する時の注意点
【はじめに】
この記事にたどり着いた方は、今まさに「メインバンクを変更しようかどうか」と、迷っているのかもしれません。今後の資金調達や資金繰りに影響を与えるメインバンク変更。重要な経営判断です。
変更しようと思った理由は何でしょう?「失礼な態度を取られた」「支店長や担当とウマがあわない」「他の銀行が良い取引条件を提案してきた」「メインバンクの将来性に不安を感じる」様々です。
変更を決断しようとしているなら、変更することのメリットに視点が集まっているのでしょう。ただ、別の考え方もあります。「メインバンクを変更して悪い影響はないのか?」この記事を経営判断の参考にしていただくと幸いです。
中小企業診断士 和田 健一
この記事のポイントは以下の通り。
☑ 社長が交代した際など、メインバンクを変えてみよう、という気が起きるときがある
☑ メインバンクの変更は、提案銀行の助言で、メインバンクの秘密裏に行われる
☑ メインバンクの変更により、失うものは多い
☑ できれば避けたいメインバンクの変更も、やむを得ないケースがある
☑ 社長の個人取引をメインバンクから変更する時は、法人取引への影響を考えたうえでの判断が必要である。
【目次】
事業活動を行っていく上で、銀行とは何らかの接点がある。
取引銀行の中で、一番親密な銀行をメインバンクと言う。
メインバンクに対しての意識は、社長と銀行で違うことがある。
例えば、以下参考記事の様な事を銀行は嫌う。
【参考記事】銀行が嫌う経営者~銀行員がそっぽを向くタブーな言動~
特に、先代から後継者へ事業の引継(社長の交代)が行われた場合には、「自分のやり方で取引銀行も変えてみよう」との考えから、思い切ってメインバンクを変更することもある。
メインバンクを変える時に多いのは、メインバンクの融資をメインバンク以外の銀行で融資でやり替える方法である。メインバンクの5,000万円の融資を、メイン以外の銀行から5,000万円の融資を受けることで、そっくり返済するなどだ。
仮にメインバンクをA銀行、メイン以外の銀行をB銀行とする。
この場合、経営者にB銀行から提案がある。「A銀行より良い条件を提供しますので、当行(B銀行)で借入れして、A銀行の融資を借り換えしませんか」。良い条件とは、大体が低い金利、担保を一部解除するとか、保証人を減らして融資するとか、だ。
提案書を見てみると、金利の差額が数百万円ある。これはメリットが大きそうだ。社長の気持ちは、ぐらつくともに、A銀行に対して不信感が芽生える。「今までぼったくられていたのか」。と。
そしてB銀行の担当者は言う。「これから銀行内で稟議しますので、融資が決定し、資金が振り込まれるまでA銀行には言わないでください」。A銀行に不信感をもった経営者は、言われるとおりメインバンクであるA銀行に相談しない。そして、B銀行の融資金をA銀行に振り込む。「全額返済します」。
A銀行は慌てる。
A銀行担当者;「社長、長い取引なのに何でですか?」。
社長;「B銀行の方が条件が良いから。お宅は長い取引していたのに、良い条件を持ってきてくれなかったから」。感情が高ぶっている社長は強い口調で説明する。
A銀行は上司を巻き込み、必死で止めようとするが、後の祭り。こうしてメインバンクが交代する。
このやりとりにリスクはないのだろうか。
【参考記事】銀行員が上司と会社に来た理由(融資断りか、前向きか)
現在商取引は、ネットの浸透も有り、消費者が価格を比較して良い条件の商品やサービスを選ぶ。そこに義理や人情を絡めることは、難しくなっている。事業を引き継いだばかりの若い経営者は、同じように銀行取引を考えてしまうことがある。
B銀行がA銀行より良い条件を提示するのは、あたり前。そうでないと経営者は取引銀行を変えないから。この提案は赤字覚悟でしてきている。
いつもでもこの状態が続くわけはない。銀行は収益会社で、事業会社との取引で採算を取っていかねばならない。だから最初は良くても、少しづつ元の状態に近づいていく。
違うのは、取引の歴史。A銀行とは先代からの長い取引の歴史があった。良いときも悪いときもメインバンクとして付き合いをしてきた。B銀行とはそうした関係が無い。業況に変化があれば、厳しい対応になるかもしれない。そして銀行員は転勤する。良い提案をもってきてくれたB銀行の担当者はもういない。新しい担当者にとって、この会社は、「取引の歴史が浅い会社」という認識になるかもしれない。
その時にA銀行に駆け込んでも、おそらく相談には乗ってくれない。A銀行の中には、この会社に対しての不信感があるからだ。そしてこの経緯は、A銀行の中でマイナスのこと(他銀行からの融資で当銀行取引を解消した取引先である、など)として文書で引き継がれているはずだ。
【参考記事】融資肩代わりが会社に与える影響 ~銀行員が勧める理由、怒る理由~
もちろん、やむを得ずメインバンクを変えないといけないケースもある。①支店がエリアから撤退したり、②強引な融資回収にあったり、③事業成長により自社の企業規模や融資限度額がメインバンクと合わなくなってきたり、④メインバンクが他の銀行に吸収合併され今までの方針と変更してしまった、などは仕方がない。
しかしながら、感情のわだかまりが残るような、こちらからの仕掛けは、避けた方が賢明だろう。
銀行は取引の長い取引先を大切にする。メインバンクを変更するときは、細心の注意が必要だ。
個人取引について、メインバンク変更のデメリットを考えてみる。
しかし銀行は、法人取引に加え役員個人取引も含めて総合的に、会社との取引を判断している。
社長名義の住宅ローンや個人預金取引があるため、法人融資金利を低めに設定している可能性がある。
そのため、個人取引を条件が良いからという理由で、ネット銀行に変更した場合は、融資金利など、法人取引条件に影響が出る可能性がある。
これが、メインバンクの個人取引を変更することのデメリットだ。
個人取引単独ではなく、法人取引も考えたうえで、総合的に判断することをお勧めする。
メインバンクを変更すれば良いのか、そのままが良いのか、変更するならどんな手順が必要なのか、分からないことがあれば、お手伝いできますので、下記メール連絡フォームから一度ご連絡ください。
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