「社長である自分の役員報酬、一体いくらに設定するのが『正解』なのだろうか?」
「利益が出たから報酬を上げたいが、来期以降の資金繰りが不安だ…」
「会社に残すお金と、自分や家族の生活費。どちらも守れる報酬の決め方を知りたい」
社長の役員報酬に、すべての会社へ当てはまる正解の金額はありません。
翌期の利益と毎月の支払能力、社長の職務と生活に必要な手取りを確認し、複数の候補額を比べて決めます。そのうえで、税金・社会保険料と、決議・支給の手続きを確認します。
愛媛県を中心に全国の企業の財務戦略を支援する和田経営相談事務所では、会社の成長に必要な資金を残し、経営者が職務を続けられる報酬を設計することを重視しています。本記事では、主に毎月定額で支給する役員報酬について、平常時・翌期の決め方を説明します。

最初に、「会社がいくら負担できるか」と「社長にどのような職務と責任があるか」を整理します。会社のお金と個人のお金を分けたうえで、双方の計画を照合することが出発点です。
| 判断材料 | 確認する内容 |
|---|---|
| 会社の利益 | 翌期に見込む売上・費用と、報酬を支給した後に残したい利益。 |
| 会社の資金繰り | 給与、仕入代金、税金、借入返済、投資を負担した後の現預金。 |
| 経営者の職務 | 担当業務、責任、勤務の実態。複数役員がいる場合は、それぞれの役割。 |
| 経営者の生活 | 税金・社会保険料を差し引いた手取りと、家計や個人の返済に必要な額。 |
同業他社の報酬水準も参考になりますが、規模、収益力、役員の人数や職務が違えば、単純には比べられません。相場をそのまま採用する前に、自社の条件へ置き換えて確認します。
据え置き自体が問題なのではありません。翌期も継続して支払え、職務や生活とのバランスが取れているなら、同額という判断もあります。前年の金額を自動的に引き継がず、毎年根拠を確認することが大切です。
反対に、一時的な利益だけを理由に毎月の報酬を増やすと、翌期以降も続く負担を見落とします。増額の原資が、継続的な収益から生まれるかを確かめてください。
まず、直近2期の実績を並べ、売上、営業利益、役員報酬の推移を確認します。一時的な売却益や臨時収入は分け、本業の収益力がどう変わったかを把握します。
次に、翌期の受注、価格改定、採用・賃上げ、家賃などの予定を反映します。最初は現在の役員報酬を続ける前提の利益計画を作り、それを候補額の比較に使います。
年間の役員報酬額 = 候補月額 × 12か月
※毎月同額を通年で支給する場合。改定前後で金額が異なる年度は、各月の支給額を合計します。
増額案では、現在の報酬との差額を年間で集計し、会社負担の社会保険料などに変化があれば、その差も加えます。保険料には等級や改定時期が関係するため、一律の割合だけで確定しないようにします。
現在の報酬を既に費用へ含めた計画なら、差し引くのは増える費用の分です。候補額の全額をもう一度差し引くと、報酬を二重に計上してしまいます。
報酬増額後も、会社に必要な利益を残せるかを確認してください。他の役員の報酬や社員の賃上げも同じ計画へ反映し、社長の報酬だけを切り離して決めないことが大切です。
利益と手元の現金は一致しません。売掛金の回収、在庫の増減、税金、設備投資、借入返済によって、実際に使える資金は変わります。
候補額を採用した場合の毎月の入出金を見込み、年間の終わりだけでなく、資金が最も少なくなる月も確認します。会社に必要な手元資金は、給与や仕入などの支払額、入金の安定性、季節変動を踏まえて決めます。
営業利益に減価償却費を足した金額だけで、報酬の安全な上限や自由に使える現金を確定することはできません。借入元本の返済は損益計算書の費用ではなく、設備投資の支出も減価償却費とは別に確認する必要があります。
増額案を採用すると必要資金を保てない場合は、増額幅や投資・支払計画を再検討します。まだ承認されていない融資を、確定した入金として織り込まないことも重要です。
会社の都合だけで報酬を決め、社長の生活が成り立たなくなっては、経営へ集中しにくくなります。家計の支出、住宅ローン等の返済、他の収入を整理し、必要な手取りを確認します。
ただし、生活費がそのまま報酬の適正額になるわけではありません。職務に対する報酬としての妥当性と、会社が負担できる範囲を合わせて考えます。
候補額ごとの法人税への影響、個人の税負担、会社・本人が負担する社会保険料を、顧問税理士や給与計算担当者等と確認します。税負担の比較は有用ですが、支払う時期と、会社・個人それぞれに残る現金まで見て判断してください。
当事務所では、税務の専門家と連携しながら、経営者自身が利益・資金繰り・生活の前提を理解して決めることを勧めています。
候補額は、同じ売上・費用・入出金の前提で比べます。都合のよい売上予測を増額案だけへ使うと、比較ができなくなります。
| 候補 | 主に確認すること |
|---|---|
| 据え置く | 翌期の利益、資金、職務・生活の条件が、現在の月額と釣り合っているか。 |
| 増額する | 増加する年間負担を継続的な収益で賄い、投資や手元資金も確保できるか。 |
| 減額する | 必要な改善効果を得られるか。社長の生活と、変更時期・手続きに無理がないか。 |
各案の「年間報酬」「報酬支給後の利益」「資金が少なくなる月の残高」「個人の手取り」を並べ、採用する金額と理由を記録します。複数役員がいる場合は、対象者ごとの額と会社全体の負担を分けて管理します。
翌期の見直しに使う条件も決めておきましょう。利益、手元資金、職務の変化などを確認する時期を定め、実績と計画の差を追います。これは毎月の業績に合わせて報酬を自動変更する仕組みではありません。
銀行への説明でも、相場や節税額だけでなく、採用した前提と支払・返済の見通しを示します。報酬額の設定だけで、融資や条件変更の可否が決まるものではありません。
経営上の候補額を決めた後は、会社の意思決定手続きと、法人税で損金に算入するための要件をそれぞれ確認します。
毎月の報酬で中心となるのは「定期同額給与」です。通常の年次改定は原則として会計期間開始から3か月以内に行い、改定前後の各期間でそれぞれ同額となることなどを確認します。定期同額給与に該当しても、不相当に高額な部分は損金に算入されません。
役員賞与には、事前確定届出給与など別の要件が関係します。決算で利益が出た後に、自由に報酬や賞与を追加して経費にできるわけではありません。
参考:国税庁「役員に対する給与」
定款、既存の報酬決議、委任関係に応じて、株主総会・取締役会等の必要な手続きを確認します。対象者、月額、決定日、適用する支給時期を議事録等へ残し、給与計算へ反映してください。
期中の改定には、職務の重大な変更や業績悪化などの条件が関係します。単に資金が足りないという理由だけで、税務上の要件を満たすとは限りません。既に未払報酬がある場合も、今後の減額とは分けて整理します。
報酬以外にも、会社が負担する交際費や車両費などを含めて確認します。経費管理の進め方は、社長が経費・交際費を使いすぎると?銀行の見方と見直しで解説しています。
「自社の数字では、どこから確認すればよいのか」という方は、画面右下のAI経営参謀をご利用ください。最初に用意するのは、直近2期分の決算書です。販管費明細など、役員報酬が分かる決算書の明細も一緒に添付してください。
コピーして使える質問例
翌期の社長の役員報酬を検討しています。添付した直近2期分の決算書から、役員報酬・売上・営業利益・現預金の推移を整理し、据え置きや増額を考える際の確認点を教えてください。まず今ある資料で分かることを示し、本人の報酬額や翌期の見通しなど、不足する情報は必要な順に一つずつ質問してください。資料にない数字は推測で補わないでください。
追加の数字や資料は、詳しい検討に必要になった段階で確認していきます。決算書だけで将来の資金繰りや報酬の上限額を確定することはできないため、AIの一次整理を、候補額の検討や専門家との相談に活用してください。
添付するのは、利用権限のある自社資料です。他社・顧客・融資先の資料や行内資料は投入せず、不要な個人情報を除いてください。利用前にプライバシーポリシーをご確認ください。
役員報酬は、過去の実績から翌期の計画を組み、候補額ごとの利益・資金繰り・手取りを比べて決めます。決めた理由を残し、税務と会社の手続きを確認することで、毎年の見直しも進めやすくなります。
翌期の事業計画と報酬の候補額を比較し、会社に残す資金や銀行への説明を整理したい経営者の方は、当事務所の初回無料相談をご利用ください。税務上の個別判断は顧問税理士と確認しながら、財務計画を整えます。