・バックナンバー
【事業デューデリ編】
① 経営再建計画が必要な状態とは?こちら
② 経営再建計画は「デューデリ」が8割 こちら
③ 事業デューデリ:うち内部環境分析 こちら
④ 事業デューデリ :外部環境分析はこれだけやれ こちら
⑤ 事業デューデリ:SWOT分析。不都合な真実と有効化の方法 こちら
⑥ 事業デューデリ:経営課題抽出は再建を左右する こちら
⑦ 事業デューデリ:損益イメージを共有せよ! こちら
【アクションプランと数値計画編】
⑧ アクションプランと数値計画:作成の流れと良い計画 こちら
⑨ アクションプランと数値計画:減価償却と設備投資計画 こちら
⑩ アクションプランと数値計画:リース支払計画と人件費計画 こちら
⑪ アクションプランと数値計画:計画0年目 損益計画着地見込みの作り方 こちら
⑫ アクションプランと数値計画:販管費計画作成のポイント こちら
⑬ アクションプランと数値計画:製造原価計画作成のポイント こちら
⑭ アクションプランと数値計画:PL計画作成のポイント こちら
アクションプランと数値計画の第8回目。
今日は、「アクションプランと数値計画:金融支援計画作成のポイント」の話をします。
金融支援計画とは、金融機関借入金の返済プランを記載した計画のことです。
会社の状況に応じて、3年計画、5年計画、10年計画とありますが、ここでは10年計画で話を進めていきます。
金融支援計画は、経営再建計画において重視すべき利害関係者である融資先金融機関が、最も関心を示す項目です。
私は、会社側の再建計画策定支援者として債権者会議に同席することが多いのですが、質疑応答で質問が多いのが「金融支援計画」に関するものです。
私が関わる再建計画は、今後金融機関借入金をどのような返済プランで削減していくのか、経営再建にあたってDIP融資(経営再建中に実行される優先弁済融資)をどれぐらいどのタイミングで投入していくのか、という金融支援の案件です。
金融支援計画を策定するうえでの確認事項は、①返済財源はどれだけ確保できるのか②金利や信用保証協会保証料など融資条件はどうなっているのか③経営再建のためのDIP融資は必要なのかどうか、の3点です。
①返済財源は、基本的に以下の算式で求めます。
【金融支援計画における返済財源の算式】
(税引後経常利益+減価償却費-リース資産減価償却-優先弁済)×80%
※リース資産減価償却はキャッシュアウトを伴うので、減じます。※
②金利と保証料は、事業DDにおいて調査しておきます。金利は「金融機関借入金返済表」から、信用保証協会保証料は「保証協会へのヒアリング」で確認します。金利+信用保証協会保証料をトータル金利として、考えます(ココで計算したトータル金利をPL計画の支払利息割引料の欄に記載します)。
③DIP融資は、必要になる資金を以前説明した「アクションプランと数値計画:減価償却と設備投資計画 こちら」で検討しています。設備投資において金融機関調達があれば、記載します。もちろんメイン行へは事前にDIP融資の可否は確認しておきます。
このような形で①、②、③の数値を固めていきます。
経営再建計画策定の実務では、BS計画より先に金融支援計画を作成します。返済プランが決まらないと、BS計画の長期借入金、短期借入金の計画数値が分からないからです。
以下の様なフォーマットに固めた数値を落とし込んでいきます。
では、実際に経営再建計画で使うフォーマットで説明してみましょう(パソコンサイトの方は表うえでクリックすると拡大します)。
1. 簡易CF(キャッシュフロー)の80%
・表の⑤に80%を乗じる。税引後経常利益と減価償却費やリース資産減価償却は「PL計画」と「減価償却と設備投資計画」ですでに計算できていますから、その数値を転記します。※簡易CFの100%だと資金繰りに窮する可能性があります。余裕を持たせる意味で、慣例的に簡易CFの80%が採用されています。※
2. 金融機関別融資ごとの返済額
・前年度の簡易CFに80%(表の⑥)に、基準日の融資シェア(表の黄色塗りしている融資シェア)を乗じます。
3. 金融機関別融資ごとの残高
・前期の融資残高から、返済額を減じたものが、今年度の融資残高になります。この合計金額はBS計画の長期借入金、短期借入金に振り分けられ転記されます。
4. 金利と保証料
・2期分の融資残高を平均して、表の右下の③合計を乗じたものが、トータル支払金利となります。この数値はPL計画の支払利息割引料に転記されます。
融資残高シェアに応じて、返済財源の中から返済額を割り振る方式を「残高プロラタ方式」と言います。
実際の返済額は、返済財源を残高プロラタ方式で配分するので、公平感があります。金融機関から受け入れやすいため、返済プランの中でベーシックな方法となっています。
この方法の良いところは、返済財源の範囲で返済額を決めるため、「金融機関借入金返済を原因としては資金繰りが破綻しない」ということです。
簡易CFの上下で翌年の返済額が決まります。
簡易CFの80%が上振れすれば計画より多く返済し、簡易CFの80%が下振れすれば計画した金額を返済できないことになります。
毎年1回決算報告会を開催して、金融支援計画と出来上がった決算報告書数値を見比べながら、翌年度の金融機関ごとの返済額を決定していきます。
金融支援計画の精度で、金融機関の経営再建計画同意不同意が変わってきます。
ポイントは、
✔ 返済財源(簡易CFの80%)を根拠を持った数値として正確に導くこと
✔ 各金融機関の融資残高やトータル金利(金利、保証料)を正確に把握しておくこと
✔ アクションプランに沿った再建のために必要な設備投資や人材投資を把握しておくこと(必要ならDIP融資を申請する)
です。
以上、「アクションプラン&数値計画:金融支援計画作成のポイント」について、お話しました。
今後の貴社の財務改善にお役立ていただけますと幸いです。
次回は、アクションプラン&数値計画「税額計算表」についてお話ししていきます。
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