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金融支援計画(返済計画)作成のポイント:アクションアクションプランと数値計画|経営危機を乗り越える!経営再建計画の作り方|⑮

経営再建計画書における「アクションプランと数値計画」の中でも、「金融支援計画」は、債権者である金融機関との将来の関係性を決定づける、極めて重要なパートです。これは、単なる借入金の返済予定表ではなく、経営再建を通じてどのようにして金融債務を整理し、健全な財務状態に回復していくかの道筋を示す、いわば金融機関との未来を約束する設計図となります。

金融機関が経営再建計画書の中で最も注視するのが、この金融支援計画であることは間違いありません。なぜなら、ここに「貸したお金が将来どのように返ってくるのか」という、彼らにとっての核心的な答えが示されるからです。

この記事では、経営再建計画書における金融支援計画の重要性、具体的な策定手順、そして金融機関の信頼を得るためのポイントについて、経営者、従業員、金融関係者など幅広い読者に向けて解説します。

金融支援計画

金融支援計画とは?:金融機関との未来を約束する設計図

金融支援計画とは、主に金融機関からの借入金に対する将来の返済プランを具体的に示したものです。計画期間は会社の状況によりますが、抜本的な再生には時間を要するため、5年~10年程度の長期計画となることが一般的です。

この計画には、以下のような内容が含まれます。

・既存借入金の返済計画: 各金融機関、各融資ごとの将来の返済額と残高の推移。多くの場合、返済条件の変更(リスケジュール:元金返済の猶予や減額)を伴います。

・DIPファイナンス(再生支援融資)の要請: 経営再建を進める上で、事業継続や成長投資に必要な追加融資(運転資金、設備投資資金など)の要否と、その計画。

債権者会議など、金融機関との協議の場では、この金融支援計画の詳細、特に返済の実現可能性について質疑が集中します。

計画策定の3つの鍵:返済財源・融資条件・必要資金

金融支援計画を策定する上で、まず以下の3つの要素を正確に把握・算定する必要があります。

1.  返済財源の算出:いくら返済に充てられるか?

借入金返済の原資となるのは、企業が事業活動から生み出すキャッシュフローです。経営再建計画においては、一般的に以下の計算式で年間の返済可能額(返済財源)を算出します。

【年間の返済財源 = (税引後当期純利益 + 減価償却費 - リース資産の減価償却費相当額※ - 優先弁済額※) × 80%】

・税引後当期純利益+減価償却費: いわゆる簡易キャッシュフローであり、事業が生み出す現金の目安です。(PL計画、減価償却計画より)

・リース資産の減価償却費相当額※: BS計上されるファイナンス・リースの場合、減価償却費は非資金費用ですが、別途リース料(元本返済相当含む)の支払いがあるため、返済財源からは控除します。(リース支払計画より)

・優先弁済額※: 他の金融債権より優先して返済される債務(例:一部の公的融資など)があれば控除します。

・× 80%: 算出されたキャッシュフロー全額を返済に充てると、不測の事態に対応できず資金繰りが逼迫する可能性があるため、通常、**20%程度の余裕(バッファー)**を見て、80%を返済財源とします。

この返済財源を、PL計画等に基づき、いかに根拠を持って精度高く予測できるかが、計画全体の信頼性を左右します。

2. 融資条件の正確な把握:金利・保証料はいくらか?

各借入金の金利や信用保証協会の保証料率を正確に把握する必要があります。これは事業デューデリの段階で、借入金返済予定表や契約書、必要に応じて保証協会へのヒアリング等を通じて確認します。

**金利と保証料を合算した「トータル金利(実質的な借入コスト)」**を算出し、これを基に計画期間中の支払利息を計算し、PL計画に反映させます。

3.  DIP融資の必要性検討:再建に必要な追加資金は?

経営再建を進める中で、老朽化設備の更新、生産性向上のための投資、あるいは一時的な運転資金の不足など、追加の資金調達が必要となる場合があります(DIPファイナンス)。アクションプランと整合させながら、必要な資金額、時期、使途を明確にし、事前にメインバンク等と相談しておくことが重要です。

金融支援計画フォーマットと「残高プロラタ方式」

上記の確認事項を踏まえ、具体的な返済計画をフォーマットに落とし込んでいきます(クリックで拡大します)。

金融支援計画フォーマット

フォーマットの構造解説

金融支援計画のフォーマットは、通常、以下のような構成要素を持ちます。

・行(縦軸): 金融機関名、融資商品名(プロパー、保証協会付など)

・列(横軸):
・基準日(計画開始時点)の借入残高
・借入残高シェア(各融資が総残高に占める割合)
・計画1年目~計画X年目:
・各年度の期首残高
・各年度の返済額(計算)
・各年度の期末残高(計算)
・トータル金利(%)
・各年度の支払利息額(計算)

計算手順のポイント:

1. 年間の返済原資総額(簡易CF×80%)を確定: PL計画、減価償却計画などから算出した数値を計画期間の各年度について確定させます。

2. 各金融機関・融資への返済額を配分(残高プロラタ方式): 確定した年間の返済原資総額を、各金融機関・各融資の**「基準日時点の借入残高シェア」に応じて比例配分します。これが「残高プロラタ方式」**と呼ばれる、経営再建において最も一般的に用いられる公平な返済額決定方法です。
・各融資の年間返済額 = 年間返済原資総額 × 各融資の残高シェア(%)

3. 各年度の返済後の残高を計算:
・期末残高 = 期首残高 - 年間返済額
・この期末残高は、**BS計画(貸借対照表計画)**の短期借入金・長期借入金の数値と連携します。

4. 支払利息を計算:
年間支払利息額 ≒ (期首残高+期末残高)÷ 2 × トータル金利(%)
・この支払利息額は、PL計画の営業外費用に転記されます。

「残高プロラタ方式」のメリットと運用

残高プロラタ方式は、以下の点で金融機関に受け入れられやすいメリットがあります。

・公平性: 融資残高に応じて返済負担を分かち合うため、特定の金融機関だけが有利・不利になることがありません(債権者平等の原則)。

・資金繰り安定性: 返済額が「返済財源の範囲内」で決まるため、借入金返済が直接の原因で資金繰りが破綻することはありません。

ただし、返済財源(=業績)に応じて毎年の返済額が変動するため、計画策定後は毎年1回、決算確定後に実績を検証し、その結果に基づいて翌年度の具体的な返済額を金融機関と協議・決定していく運用が一般的です。

質の高い金融支援計画=信頼される経営再建計画書

金融支援計画の精度、特に返済財源予測の信頼性が、金融機関が経営再建計画に同意するか否かを最終的に決定づけると言っても過言ではありません。

金融機関の同意を得るためのポイント:

1. 根拠ある返済財源予測: PL計画(売上、利益)の実現可能性がすべてです。事業デューデリに基づく具体的なアクションプランと、それによる収益改善効果が、説得力を持って示されている必要があります。

2.  正確な現状把握: 各金融機関からの借入残高、金利・保証料、担保状況、そして実態バランスシート上の正確な債務状況を、誤りなく把握していることが大前提です。

3. 現実的なアクションプラン: 計画されている設備投資やリストラ策が、資金調達(DIP融資の必要性含む)の観点からも現実的であることが求められます。

計画策定の支援と情報収集(経営再建計画書 書き方)

金融支援計画の策定や金融機関との交渉は、高度な専門知識と経験が求められます。

中小企業活性化協議会や経営改善計画策定支援事業(405事業)の活用

中小企業活性化協議会は、経営再建計画の策定から金融機関との合意形成(バンクミーティングの開催など)まで、中立的な立場からサポートしてくれます。また、**経営改善計画策定支援事業(405事業)**を活用すれば、**専門家(税理士、会計士、中小企業診断士など)**による客観的な財務分析や計画策定支援、金融機関交渉のアドバイスなどを、費用負担を抑えながら受けることが可能です。

[関連情報:中小企業活性化協議会による金融機関調整サポート]
[関連情報:経営改善計画策定支援事業(405事業)を活用した専門家相談]

サンプル・テンプレート利用の限界

「経営再建計画書 書き方」のサンプルやテンプレートは構成の参考にはなりますが、金融支援計画は企業の状況や金融機関との関係性によって内容が大きく異なる、極めて個別性の高いパートです。また、最終的な条件は金融機関との交渉によって決定される要素も含まれます。テンプレートの安易な利用は避け、専門家と相談しながら自社に合った計画を作成することが賢明です。

まとめ:誠実で現実的な計画が、金融機関との信頼関係を築く

金融支援計画は、経営再建計画書における対金融機関戦略の核心部分です。

・実現可能なPL計画に基づき、根拠ある返済財源を算出する。

・正確な借入状況を把握し、公平な返済方法(例:残高プロラタ)を提案する。

・必要な追加支援(DIP融資)があれば、その必要性と効果を明確に示す。

・誠実かつ現実的な計画を示すことで、金融機関との信頼関係を再構築する。

この計画を真摯に作成し、金融機関と粘り強く対話していくことが、経営再建への道を切り開く上で不可欠なプロセスとなります。

次回は、「税額計算表」について解説していきます。

 

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