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銀行の事業性評価融資の取組は広がるか

先日、金融庁が発表した「平成27事務年度金融行政方針」を見ていて気になったことがある。

間接金融に関する課題として、

『担保・保証に依存する姿勢を改め、取引先企業の事業の内容や成長可能性を適切に評価し、産業・企業の競争力・生産力の向上や、円滑な新陳代謝の促進を金融面から支援することが期待される。』

と触れられていることだ。

上記取組については、銀行業界では「事業性評価融資」と呼ばれ、すでにチェックリストを用いて企業の事業内容を評価し、融資を推進していく取り組みを始めている銀行もある。

事業を評価するとは、具体的にどういうことだろうか。例えば、「ビジネスモデルの強さ」「経営者の能力」「販売力」「取引先からの評価」「仕入れ先との親密性」「特許を有している技術や商品」「優秀な後継者や従業員」「競合が参入しづらい業界特性(参入障壁の高さ)」・・・。企業を決算数字以外の多方面から分析することで、現時点で決算書に記載されていない企業の将来性を評価するということだ。

そしてその評価を基に、担保や保証に依存しない融資を行う。

私も銀行関係者と仕事で一緒になることがある。確かに「事業性評価融資」に関して、以下のように意識が感じられる機会が増えてきた。

①我々外部専門家が行う、企業に対しての経営課題解決に関する指導面談に同席する
②経営改善計画策定を外部専門家に取り次ぎ、作成過程や策定後のモニタリング業務に一緒に関わる
③ものづくり補助金の認定支援機関として、銀行が補助金の申請書づくりに協力する

これらの狙いは、①融資先企業の事業内容をより詳細に把握し、新たな資金ニーズを発掘する事であったり、②融資先企業の事業内容を良化させることで、貸出債権を確実に回収することであったりする。

銀行は従来、保証や担保に依存した融資を行ってきた。なぜなら、融資先企業の財務内容は決算書等で詳細に把握していても、事業内容やビジネスの強みは、あまり把握していなかったからだ。分からないから、貸し倒れになったとき、回収不能にならないように担保や保証人、保証機関の保証で、企業の信用力を補完してきた。

この従来からの融資慣習を、金融庁は変えていきたいのだ。背景には、銀行業界にも少子高齢化による市場の縮小の影響が今後出てきて、今までの担保・保証に依存した融資では、企業・銀行共に先細りになるという、懸念がある。

この金融庁の方針の転換に、現場の銀行は乗ってくるだろうか。銀行業界は、堅実性を重視し、変化を嫌う体質がある。それは、預金者の大切な預金を原資として企業融資をしているため、貸し倒れを出すわけにはいかない、という事情から来ている。

先日企業経営者と意見交換した際、「銀行は、まだまだ融資先企業の事業内容を把握する気が薄いよ。」とおっしゃっていた。確かに急には変わらないし、変化には時間を要するだろう。

ただ、金融庁が舵を切ったことや、私が接した現場銀行員の言動などにより、銀行は少しづつ「事業性評価融資」の取組を進めていくように、感じるのだ。

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ご覧いただきありがとうございました。

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