私が好きな本に、致知出版社の「小さな人生論」があります。そのシリーズ第三作に「縁を生かす」という感動的な話があります。
有名なお話ですので、ご存じの方がいるかもしれませんが、以下に概要をお話します。
一言でいえば、「担任の先生と生徒の物語」です。担任の先生は女性、生徒は小学校5年生の男子生徒です。
(ここからあらすじ)
先生は身なりがだらしなく、どうしても好きになれない生徒がいました。先生は、中間記録でその生徒の悪いことばかり、記入するようになっていました。
ある時、生徒の1年生からの記録が目に留まりました。1年生「朗らかで、友達が好きで、人にも親切。勉強もよくでき、将来が楽しみ。」「間違いだ。他の子の記録に違いない。」先生は思いました。
2年生になると、「母親が病気で世話をしなければならず、時々遅刻する。」3年生では、「母親の病気が悪くなり、疲れていて教室で居眠りする。」3年生の後半には、「母親が死亡。希望を失い、悲しんでいる。」とあり、4年生になると「父は生きる意欲を失い、アルコール依存症となり、子供に暴力をふるう。」
だめと決めつけていた子供が突然、深い悲しみを生き抜いている生身の人間として自分の前に立ち表れてきました。先生にとって目を見開かれた瞬間でした。
放課後先生は、少年に声をかけました。「先生は夕方まで教室で仕事をするから、あなたも勉強していかない?分からないことは教えてあげるから。」少年は初めて笑顔を見せました。
それから毎日、少年は自分の机で予習、復習を熱心に続けました。どんどん成長し、自信をつけていきました。
6年生では先生は少年の担任ではなくなりました。卒業の時、先生に少年から1枚のカードが届きました。「先生は今まで出会った中で一番素晴らしい先生でした。」
それから6年。またカードが届きました。「明日は高校の卒業式です。僕は5年生で先生に担当してもらって、とても幸せでした。おかげで奨学金をもらって医学部に進学することができました。」
10年を経て、またカードが届きました。先生への感謝と父親に叩かれた体験があるから患者の痛みが分かる医者になれると記され、こう締めくくられていました。「僕はよく5年生の時の先生を思い出します。あのままだめになってしまう僕を救ってくださった先生を神様のように感じます。大人になり、医者になった僕にとっての最高の先生は、5年生の時に担任してくださった先生です。」
(ここまであらすじ)
そして筆者はこうまとめています。
たった1年間の担任の先生との縁。その縁に少年は無限の光を見出し、それをより所として、それからの人生を生きた。ここにこの少年の素晴らしさがある。人は誰でも無数の縁の中に生きている。無数の縁に育まれ、人はその人生を開花させていく。大事なのは、与えられた縁をどう生かすかである。
私が大好きな話です。このような過酷な状況の中においても一筋の光を見出し、精一杯努力していく。素晴らしいことです。与えられた縁を生かして、育んでいく人間になりたいものです。
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