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粉飾決算書の提出は、銀行の融資態度にどう影響するか

【はじめに】

銀行に対する粉飾決算書の提出は、発覚した際、経営者が想像している以上に、銀行の融資態度に影響を与えます。以下記事に記載しているパターンのように、銀行が悪質だと判断する粉飾は、致命的になります。それでもなぜ、経営者は粉飾決算をしてしまうのか?「赤字になると銀行融資が出ない」、と考えているからです。本当は赤字がでると正しく開示して、今後の改善策を銀行に説明し、素早く具体的な改善行動を実施する必要があります。しかし隠すことによって問題は先送りされ、症状はひどくなるのです。粉飾決算の誘惑に負けそうな経営者に読んでいただき、ぜひ踏みとどまっていただきたいと思い、記事にしました。

 

この記事のポイントは以下3点です。

☑銀行員が嫌がることの一つに、融資先に『うそをつかれること』がある。代表的なものが、「決算書に関するうそ」。

☑銀行提出の決算粉飾には、特にやってはいけない粉飾がある。売上水増しや原価の過少計上、簿外債務、架空在庫、二重帳簿などである。

☑粉飾決算が発覚すると、銀行との信頼関係が崩れ、銀行員は融資に対して態度を硬化させる。その際、その決算書作成に関わった顧問税理士は、銀行から信頼を失っているため、改善に力になれないことが多い。

詳しく見ていきましょう。

 

その場しのぎで、銀行融資を受けるために粉飾決算をすると、後々経営に大きな影響が出てきます。

どんな影響があるのか?経営者としてどのような心構えが必要なのか?

少し考えてみますね。

 

銀行に対する嘘は、取引に影響を与える

銀行員が嫌がることの一つに、融資先企業に「うそ」をつかれることがあります。

「嘘も方便」という言葉の通り、人間生活を営む上で、関係の円滑化のためや相手を思いやったりする嘘は、許されることもあります。

ただし、これが「対銀行」となると、その嘘がその後の銀行取引に影響を及ぼすことになることもあるので、注意が必要です。

では、銀行員はどういう種類の「うそ」を特に嫌がるのでしょうか。

決算書のうそ

銀行の融資判断は多くの部分で、「決算書」をベースに行われます。

そのため、決算書に対する「うそ」を銀行員は嫌がります。決算書のうそのことを「粉飾決算」と言います。

新聞紙上などで、粉飾決算の話題は良く出てきますよね。倒産した上場会社などは、粉飾決算に手を染めていることが多いです。

ただし、中小企業の場合、決算書は実態から離れていることがあります。財務会計の専門部署がないことも多いので、計数関係は、顧問税理士任せになっていることもあります。そのため、程度によっては、「仕方がないのかなぁ」と思うこともあります。

でもあまりに、粉飾が露骨すぎると、今後の銀行融資の上では、「致命的」になることがあります。

 

まずいタイプの決算書の粉飾

例えば、

・何年にもわたり、毎年赤字決算なのに、売上の架空計上や原価の過少計上により、毎年黒字にみせていたとか、

・存在しない在庫を多額に計上していたとか、

・売却している資産(株式や投資信託など)を残っていることにしていたとか、

・現預金残高を偽っていたとか、

・債務を隠して決算書に載せていない(簿外債務といいます)とか、

・決算書を銀行用、税務署用と複数作成し、使い分けているとか、

 

他にもたくさんやり方がありますが、こういうのは、とてもまずいです。

 

銀行が粉飾を発見すると

銀行員は、決算書を分析することについては長けていますし、粉飾決算書を見破る情報システムも導入しています。ですから、今すでに見破っているけど目をつぶっているか、そうでなくても今後ばれる可能性は高いと思います。

悪質な決算書の粉飾が発覚した場合、銀行は一気に態度を硬化させます。追加融資を拒否するだけでなく、既貸出金の一括返済を迫ってくる可能性もあるのです。実際私も、そのようなケースを何度も目にしてきました。

 

軽い気持ちが、だんだん厳しい状況に

経営者の気持ちも分からないことはありません。

赤字の決算書を出すと追加融資を断られるのではないか、だから黒字にしておこう・・・。

最初は悪気なく必要に迫られて始めたことも、その行動が積もり積もって、嘘に嘘を重ねて、引き返しがつかない状況に追い込まれていきます。

だから、早めに対処することです。まだ余力があるうちに、嘘が軽いうちに手を打つことです。

私のところに相談に来られる経営者もいますが、程度によっては、まだお手伝いできるケースと、できないケースがあります。もう少し早ければ、と思うことも多いのです。

 

粉飾決算が発覚した場合、顧問税理士は力になれない

こうした時、経営者にとって、一番身近な顧問税理士は(本人は力になろうとしても)、残念ながら力になれないことがあります。

なぜなら、その粉飾された決算書は、顧問税理士の作成した決算書(たとえ経営者の意向を汲んだものだとしても)であり、取引銀行から税理士自身が信用を失っているからです。そのため、顧問税理士を前面に立てて交渉すると、逆効果になることがあります。もしかしたら税理士さんも、経営者の意向と自分自身の倫理観の間で悩んでいるかもしれませんが。

その際には、今まで関係していない第三者の専門家に相談したほうが良いかもしれません。しがらみがないので(その専門家の力量にもよりますが)、新たな視点を提供してくれる可能性があります。

 

対策は早めに、余力があるうちに

このように粉飾決算は、程度によっては、その後の銀行融資態度に大きく影響します。

何でもそうですが、「まずい」と感じた時には、手遅れになっている場合があります。その傷み具合の程度によっては、ご相談いただいても残念ながらお手伝いできないこともあります。

だから、「対策は早めに、余力があるうちに」が大切だと、個人的には感じるのです。

 

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